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なぜ、うちの会社は、人が採れないの?【Book】  2月15日16時05分

今、日本が空前の「完全雇用状態」になっているのに、なぜ、人材確保が大変なの?その疑問を解消したく、『もう転職はさせない、一生働きたい職場のつくり方』を読んでみた。
「完全雇用状態」。つまり、求職者にとっては、選ばなければ仕事は必ず見つかるという状況なのに、採用する側の企業にとっては、優秀な人を集めるどころか、必要な頭数を集めるのに苦労する厳しい状況になっているという。
給料を高くすれば、人は集まるじゃないのか!と単純に思った。

しかし、この本では、「新卒の初任給を上げても、人が集まらない!」という。
とにかく中小企業は、人が採れない時代になっている。すると、一般的に企業が打つ手としては、まず「給料を上げる」ということを考えるというのだ。
しかも、破格の初任給で優秀な新人を集めることに成功している企業でも、決して人が定着しているわけではないという。

例えば、今、ITエンジニアは人の奪い合いが最も激しい職種、給料のつり上げ競争は激しくなる一方。その結果、若手でも年収1000万円超えが決して珍しくなくなった。すると、働く側の意識も、自分の能力をより高く評価してくれる環境を求めるように変わっていくとのこと。

若手ITエンジニアは、就職をした段階で複数の転職エージェントに登録することが今や当たり前のようになっている。優秀なITエンジニアのもとには、なんと月間200件にも上がるスカウトメールが届くこともあるみたいだ。
それで、どういうことが起きるかというと、
つまり、「カネ」釣った人材は、「カネ」で移っていくと、説明している。
「カネ」で、太刀打ちできない企業はどうすればいいのか?
この本では、「働きがい」をつくることで、人が採れるようになるという。

今働く人たちが求めているのは「カネ」じゃないことを、本著では下記のエピソードを交えて説明している。

和歌山の平和酒造という酒造メーカーの話。

四代目当主である山本典正専務は、大手メーカーの下請けが中心でジリ貧状態にあり、経営陣と従業員がひとつになることもできていなかった会社の立て直しに取り組む。
専務は、自分たちの会社が何のためにあるのかということから考えた。そして日本が生んだかけがえのない文化である日本酒を、世の中に、世界に届けていくことが自分たちの使命だとビジョンを掲げる。
自社ブランドの日本酒を造り、自社の雇用形態を変え、日本酒業界全体の変革・成長を目指して、若い蔵元たちが集まる組織を立ち上げた。
試行錯誤を繰り返しながら、一連のイノベーションに取り組みつつ、専務は日本酒造りにかける自らの思いや経営哲学を著書やメディアを通して発信し続けた。

その結果、それまで人集めに苦労していたこの地方の中小企業の新卒採用に、全国から2000人の若者が殺到するまでになったのだ。

一方で、専務は若い社員も年収1000万円稼げるくらいに会社を成長させたいという思いも抱いていた。しかし、新卒で入社したある社員の「1000万円も要りません。600万円もあれば十分です。残りの400万円は誰か他の人がもらったほうがいいです」という言葉に、専務は自分がやっている経営の意味を改めて自覚させられたとのこと。

つまり、平和酒造に集まった若者たちは、高い給与を求めていたのではなく、会社のビジョンに共鳴して、ものづくりの喜びや醍醐味を感じたいから、この地方の中小企業を選んだのだ、と。

「働きがい」について、「働きがい」がつくれないダメ会社の共通ポイントを例に挙げてわかりやすく紹介している。例えば、
その1。経営者の思いが、社員に届いていない
経営者のビジョンが社員と共有されていないと、社員の「働きがい」は生まれず、モチベーションも保てないし、上げることができない。自分が何のために働いているかわからなくなってしまうのだ。
数値目標は、ビジョンではない。はき違えている経営者、多数。

その2。経営者の視点が、結果に偏りすぎている
経営者の頭の中が短期的な売り上げでいっぱいになり、社員の尻を叩く。実は、まったくもって逆効果。「結果の質」を求め、「関係の質」を悪化させ、「思考の質」も下げ、「行動の質」も低くするバットサイクルに。
経営者のこの姿勢こそが、毎月の売り上げを下げている。

その3。フラット組織という名のワンマン組織
上下関係がないフラットな組織というと、社員同士がヨコにつながった風通しの良い組織をイメージするが、実態はまったく逆というケースが非常に多い。
中間管理職が存在しないため、何のことはない、すべてが経営者直轄のワンマン組織になってしまいやすい。
このような「フラット型ワンマ組織」は、協調性がなく、生産性が低い組織の悪しき典型となる。
他にも「本音が言えない組織風土」「社員それぞれの役割が不明確」「不発するモチベーション向上の施策」「社員を育成する風土がない」などが挙げられている。

では、どうしたら「働きがい」があふれる会社がつくれるかについても、言及している。
具体的に、以下の5つのステップを踏んで、実行していけば、「働きがい」あふれる会社へと変わっていくと提言している。
1「相互理解」(経営者と社員の頭と心の中をガラス張りにする)
2「動機形成」(経営者の思いと社員の思いを共振させる)
3「協働意識」(会社はみんなで支え合い、より善い目的に向けて共に働く場)
4「切磋琢磨」(重視すべきは即戦力人材ではなく、学び続ける人材・風土)
5「評価納得」(職務と成果貢献に応じて粗利を公平に分け合う)

この5つ。
若い人はすべて「カネ」で釣られて転職を繰り返すのではなく、「社員を育成する風土がない組織・会社」だから辞めていく。モチベーションが上がらないのだ。希望も持てないのだ。つまり、どうしようもないくらい楽しくないのだ。
つまり、「人が辞めない組織・職場」は、「人が入りたい組織・職場」と直結していることが、本著でわかりやすい例えとともに述べられている。

(実業之日本社 書籍編集部 菊地一浩)

『もう転職はさせない! 一生働きたい職場のつくり方』 前川孝雄・田岡英明 著1500円+税 実業之日本社

* 内容は上記書籍から引用掲載




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