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羽生結弦選手のような選手の気分が味わえる?究極のフィギュアスケート小説【Book】  3月26日17時05分

私は冬季シーズンになると毎年フィギュアスケートを観ている。先週は、世界選手権で羽生結弦選手が銀メダルを獲得した。怪我からの復帰にもかかわらず、それを感じさせない迫真の演技だった。優勝はショートもフリーも完璧に演じきったネイサン・チェン選手に奪われたが、悔しさは羽生選手にとってバネとなり、今後の大きな力になるだろうと思う。

女子においても、熾烈な戦いが繰り広げられていた。日本女子はメダル獲得ならなかったが、それぞれに素晴らしい演技で観客を沸かせた。220点を超えても表彰台に上がれないなんて、なんとハイレベルな時代になったことか!3位のエリザベート・トゥルシンバエワ選手は、世界選手権史上初となる4回転サルコウに成功。女子にもついに4回転時代が到来してしまったわけである。

男子も女子も、悔しさをバネに今後もどんどん進化を遂げていくだろう。これからも選手たちの活躍を見守っていきたい。


フィギュアスケートの面白いところのひとつは、スポーツなのに技術力だけでなく表現力も必要とされ、音楽、振り付け、衣装、表情など、物語性を伴う点だ。それらは選手が自分で選択することができるため、選手独自の世界観が生まれる。コミカルな音楽とユーモラスな演技で会場を笑わせる選手がいれば、しっとりとしたクラシックと哀愁を漂わせるスケーティングで会場を魅了させる選手もいる。みんな違ってみんないい。

だが、物語があるのは演技だけではない。その舞台裏には、選手自身の人生ドラマがある。選手自身も自分の物語を背負って、あの輝かしい試合の舞台に立っているのだ。

フィギュアスケートの選手になったような気持ちで、練習や試合を経験できる究極のフィギュアスケート小説がここにある。これまでも何度かフィギュアスケートを題材に小説を書いてきた碧野圭氏による『スケートボーイズ』である。

これほどまでにフィギュアスケートに詳しく、且つリアルで、スケートに特化した小説は、中々ないのではないかと私は感じた。本書は、一年ぶりに怪我から復帰した和馬と、大学スポーツ新聞の記者・将人の視点が交互に綴られる。和馬は大学のフィギュアスケート部の仲間と切磋琢磨し、最後の舞台と定めた大学四年の全日本選手権に向けて励む。

本書は、例えば羽生選手のように世界の頂点に立つような選手ではなく、大学生のスケート部から全日本選手権に出場するような選手を描いているため、読者はより親しみを持って読めるだろう。頂点には立てなくても頑張っている人がいる、それでもスケートを心から愛している、スケートって楽しい!ということが伝わってくるような作品だ。

和馬が幼少期を一緒に過ごしていた仲間が遠い存在となってしまったことに複雑な思いを抱いたり、就活や恋愛に悩んだりする姿は、大学生のスケーターにとって“あるある”な話なのだろうなと思う。

本書を読むと、いつもは観ている側であるフィギュアスケートも、選手になることで様々な苦労や葛藤を感じることとなり、自分の知らない世界を味わうことができた。また、私は大学新聞部に所属していたので、将人の境遇や思いも共感できて、二重に楽しめた。

フィギュアスケート好きなあなたは“あるある”な話に思わず頷いてしまうだろうし、選手の立場で貴重な疑似体験ができると思う。また、スケートにそこまで興味はない方にとっても読みやすく、青春小説として楽しめる。世界選手権の興奮が冷めないうちに、また、春の国別対抗戦や次のシーズンに向けて、一読する価値のある一冊だ。

(フィスコ 情報配信部 編集 細川 姫花)

『スケートボーイズ』(実業之日本社文庫)  碧野圭 著 本体価格574円+税 実業之日本社




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