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現在の米中貿易交渉に関するいくつかの観点(1)【中国問題グローバル研究所】  9月02日17時07分

【中国問題グローバル研究所】は、中国の国際関係や経済などの現状、今後の動向について研究するグローバルシンクタンク。筑波大学名誉教授の遠藤 誉所長を中心として、トランプ政権の ”Committee on the Present Danger: China” の創設メンバーであるアーサー・ウォルドロン教授、北京郵電大学の孫 啓明教授、アナリストのフレイザー・ハウイー氏などが研究員として在籍している。関係各国から研究員を募り、中国問題を調査分析してひとつのプラットフォームを形成。考察をオンライン上のホームページ「中国問題グローバル研究所」(※1)にて配信している。

◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している孫 啓明氏の考察となる。

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なによりもまず、米中貿易戦争の発端は米国側にあり、最初に関税引き上げをし始めたのも米国であることを認識しなければならない。米中貿易及び米中貿易交渉全体を通して見ると、米国は常に強い、能動的な立場にあり、中国は常に弱い立場、もしくは受動的な立場に回っている。中国と米国は、世界の2大経済大国であり、米中関係は両国及び両国の国民の様々な利益に関係しており、また、世界の他の国の利益にも著しく影響を及ぼすであろう。

中国がボーイング1機を購入するために8億枚のシャツを輸出しなければならないとき、米国は中国の対米貿易が正常で、有益で、平等であると感じていた。その時期、米国は景気循環の拡張局面にあったため、ローエンドの消費は中国のような第三世界の国からの供給に任せて、米国は軍事と技術のハイエンド製品に集中すればよかったのだ。だから、米国にとってこのような貿易システムがバランス良く、快適であり、彼の世界の支配者としての地位を脅かしていないため、米国はこの貿易システムのバランスを維持したいと考えていた。


しかし今は状況が変わった、中国が台頭し、世界二位の経済大国になっている。同時に米国は景気循環の後退局面におり、深刻な失業問題が発生している。だから米国は、中国からの一部の輸入品が、米製造業の雇用に打撃を与えたと考えている。その結果、中国の「中国製造2025」に対して、製造業の国内回帰戦略を提出し、そして中国に対して貿易戦争を仕掛けてきた。実際、いかなるときでも、世界貿易システムは有機的な存在である。世界貿易システムのハイエンド・ミドルレンジ・ローエンドの分布は自然であり、不可欠であり、そして循環的な、互いを支え合うものであり、さらに当たり前のように回転と相互変換の関係も含まれている。


これを例えるなら、人体という有機的な生体である。人体の運転にはハイエンドの食品が口から入り、ミドルレンジの消化器官で転換され、さらにローエンドの肥料として排出される。そしてこれらローエンドの肥料が、土地というミドルレンジの変換によって、再びハイエンドの食品として口から入り、転換され排出される。これは一種循環のプロセスである。ハイエンドの技術も、ミドルレンジ・ローエンドの吸収転換も、この有機的な存在は正常な機能を維持する上で不可欠なプロセスである。世界貿易システムも同じように、ハイエンドの技術がミドルレンジ・ローエンドを先導することもあり、ミドルレンジ・ローエンドからハイエンドへの供給、吸収と転換も存在する。


実際、経済哲学の観点からは、ハイエンドとローエンドの間に高下貴賤の別はなく、ただ分業が異なり、相互依存しているだけに過ぎない。その観点から米中貿易戦争の現状について3つの見解を述べ、読者と共有したい。


第一に、第11回のワシントン交渉の前後から見ると、中国政府の態度が著しく変化したということを指摘したい。第10回の上海交渉までの段階では、中国政府は謙虚と寛容な態度を示していた。しかし第11回交渉では、強硬な姿勢と動かない最低ラインを明らかに示した。中国政府の交渉代表である劉鶴の強硬姿勢を以下のように表したことを確認しておきたい。まず、関税撤廃の問題を提示した。関税戦争を先に仕掛けてきたのは米国側である。問題を引き起こした人こそ問題を解決すべきであろう。だから米中関税戦争を避けるためには、まず関税を撤廃する必要がある。新たに追加された関税を全部撤廃すると、貿易戦争も終わり、他の問題も即座に解決されるであろう。そして、両国が互いの製品を購入する問題に関して、アルゼンチン会談で合意した数量を簡単に変更すべきではないとし、さらに、協議の具体的な内容とバランスに関して、その詳細を議論することはできるが、一方的に押し付けるのではなく、互いに向き合うことが必要である。


そのうえで第二に指摘すべきは、第11回交渉において、このような中国が強硬な姿勢を示し、あえて条件を提示し、最低ラインを死守することは、それ相応の自信がある証左だ。米中貿易戦争において、中国は総じて不利ではあるが、実は決して優位性がないわけではないのだ。


それを裏付けるものとしてまず、中国は世界最大規模の市場を有し、ハイテクの応用展開と転化を受け入れることができることがあげられる。米国の市場規模は中国ほど大きくはなく、そのため、一部のハイテクは国内のみで応用展開できない。例えば、中国は世界各国の高度な技術を吸収し、世界最大規模の高速鉄道を建設することができる。米国も高速鉄道の技術を所有しているが、市場規模が不十分であり、高速鉄道が建設されるその日から赤字になる可能性が高いため、高速鉄道を建設することができない。


そして、中国は完全な産業システムと多段階の熟練労働者を所有しており、彼らは様々なハイテク技術を中国国内に種をまき、根付かせ、開花させることができる。アップルの技術と中国フォックスコンの製造能力により、世界最先端の製品を生産することができる。米国は製造業の国内回帰を実現しようとしているが、アップルの携帯電話生産ラインを米国国内へ移すと、アップルの利益が急落する可能性が高いであろう。しばらく前に発生したアップルの株価の乱高下がそれを証明した。国によって産業の発展と生産能力が異なり、所有している天然資源も異なる。だから米国はいつも世界の支配者のように、他の国が援助に依存する、知的財産を侵害する、米国の恩恵を被るなどを、むやみやたらに批判するべきではない。国の政府としてそれを言うのは、弱い国いじめであり、研究者として感情的に色眼鏡で見ながらそれを言うのは、偏向的であり、大国の学者としての品格を下げることになるであろう。

※1:中国問題グローバル研究所
https://grici.or.jp/

この評論は8月28日に執筆

~「現在の米中貿易交渉に関するいくつかの観点(2)【中国問題グローバル研究所】」へ続く〜



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