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中国の無症状感染者に対する扱い(2)【中国問題グローバル研究所】  4月01日15時29分

【中国問題グローバル研究所】は、中国の国際関係や経済などの現状、今後の動向について研究するグローバルシンクタンク。中国研究の第一人者である筑波大学名誉教授の遠藤 誉所長を中心として、トランプ政権の ”Committee on the Present Danger: China” の創設メンバーであるアーサー・ウォルドロン教授、北京郵電大学の孫 啓明教授、アナリストのフレイザー・ハウイー氏などが研究員として在籍している。関係各国から研究員を募り、中国問題を調査分析してひとつのプラットフォームを形成。考察をオンライン上のホームページ「中国問題グローバル研究所」(※1)にて配信している。

◇以下、遠藤 誉所長の考察「中国の無症状感染者に対する扱い(1)【中国問題グローバル研究所】』の続きとなる。

———

◆無症状感染者の割合
国によって無症状感染者の統計的扱いは異なるようだが、ネイチャーの論文(※2)によると、無症状(asymptomatic)感染者は全感染者数の30-60%を占めるようだ。したがって中国のこれまでの累積患者数が8万強であるなら、無症状感染者数が4万人強いたというのは、論理的範囲内であるように思われる。

ただ、中国以外のどの国も、中国ほどに「一に検査、二に検査!」と、「ともかく検査が何よりも優先される」という対策を実施しているわけではないので、無症状感染者の数は、他の国でも同じ程度に(場合によっては、もっと)多いのではないだろうか。

日本でも、もし「検査を優先する」という対策を実施していたとすれば、日本の無症状感染者の数はかなり多いかもしれない。街で元気に動き回っている若者の中には、全く無症状でもPCR検査をすれば実は陽性だったという者が相当数いるかもしれないのである。それは私たちのすぐ隣にいるかもしれず、無症状感染者をチェックできるか否かは、今後の感染拡大を予測する重要なファクターの一つになり、対策の取りようも違って来るはずだ。ただ日本では「医療機関や医療関係者の数に限りがあるので、PCR検査を積極的には行わない」と専門家会議で決めているので、日本人はおとなしく専門家の決定に従っているだけのことである。

◆中国はどのようにして無症状感染者を把握したのか
では、中国はいったいどのようにして無症状感染者を把握できたのかを考察してみよう。

それは「濃厚接触者」をほぼ確実に掌握していることに起因する。

中国では3月10日ごろまで、日夜24時間を通して、1時間おきくらいに上記の「1~3」の分類に従って報道していた。各直轄市・省・自治区別に報告が上がってくるので、実際上は2,3分に一回くらいの割合で報道され、そのデータを追いかけていると、一日中何もできないというほど頻繁にデータが更新されインパクトと恐怖を与えた。

もちろん退院者数や死者の数も時々刻々報道していたので、その緊迫度は巨大地震や津波が起きた時のような強烈な印象を与えた。

こうした中で、特徴的なのは濃厚接触者の数が、これも時々刻々更新されて報道されたことである。

この「濃厚接触者を(かなり)正確に掌握している」というのが中国の特徴だ。

たとえば、確定患者およびその患者と接触したAさんが、その後どこでどういう行動をしたかに関する追跡は、中国にとっては「お手の物」なのである。

なんと言っても3億台近い監視カメラが全国くまなく張り巡らされ、14億の全ての人民に身分証番号があり、顔認識カメラにより、顔をレンズが捕えさえすれば身分証番号が出て来る。

番号を入力(あるいはパソコン画面に現れた番号をクリック)しさえすれば、何年何月何日どこで生まれたかに始まり、両親の名前や職業、財産(持ち家の有り無し、貯金残高、借金、車の有無と種類・プレートナンバー…)、犯罪歴…等や、本人の学歴、職歴、趣味、電話番号、交流関係、購買動向など、全ての個人情報が一瞬でパソコン画面上に提示される。

患者を特定すれば、その身分証番号との濃厚接触者を見つけることができ、今度はその複数の濃厚接触者を監視カメラが徹底して追跡してくれる。こうして割り出した濃厚接触者を、まるで犯人捜査のように追跡して「捕まえ」、検査を強行するのである。その中に「無症状だけど、陽性」という人たちが出て来るわけだ。逃げようがない。

まるでブラックユーモアのような逸話もある。

湖北省以外に住む男がいた。ある晩、公安から男に電話が掛かってきて「あなたの奥さんは武漢人ですね。最近武漢に戻ったことはありませんか?」と聞いてきた。男は「はい、妻は武漢人ですが、ここ数ヶ月は武漢に戻ったことはありません」と答えた。すると公安は「そうですか。ただあなたの奥さんは昨日ホテルを取りましたよね。武漢人がホテルを取ることに関して私たちは非常に神経質に監視しているので、念のため何の目的でホテルを取ったのか確認しただけです。武漢に戻ってないのなら大丈夫です」と公安は言い残し電話を切った。少しも大丈夫でないのは男の方で、これにより妻の不倫がばれたという話だが、要は、これくらい緻密に監視網が張られているという逸話である。

◆無症状感染者をどのように扱うのか
問題は、こうして検出した無症状感染者をどのように扱うのかである。

まず一人残らず「施設」に入れて14日間「隔離」し観察する。14日間経っても症状が出ず、かつPCR検査で陰性になれば、そこから24時間後に再度検査し、それでも陰性であるならば、晴れて「無罪放免」となり隔離を解除する。

14日後に相変わらず陽性で症状が出ない者は隔離を続ける。陽性で症状が出れば、当然「患者」となるので、治療病棟に入院させる。

隔離先も入院先も基本的には鍾南山の提案で突貫工事により建てられた方艙医院(コンテナ病院)だ。今では閉鎖されてしまったが、武漢だけでも6万ベッド数あったので、既存の病院と合わせれば医療崩壊を起こさず受け入れることができた。

武漢以外の地域では、たとえば貴州省貴陽市で3月17日に海外から戻ってきた者1名が無症状陽性であることが判明した(※3)。この場合は、軍山医院という所に入院させている。

因みに国家衛生健康委員会のHPによれば、最大ピーク時(2月7日)には濃厚接触者数は18万9千660人だが、3月1日の濃厚接触者数は4万6千219人で、3月24日の濃厚接触者数は 1万3千356人となっている。したがって、これから発症して「確定患者」になり得る候補者が相当数いることになる。

その意味で、ここのところ、湖北省や武漢で新規患者数が「ゼロ」であるということが報じられていても、まだ「患者候補者がいるのではないか」ということになるのは事実だと考えていいだろう。特に最近は海外から戻ってくる「逆輸入」患者が湖北省以外で増えている。

3月25日現在における中国の累計患者数は8万1千218人で、累計退院者数は7万3千650人。したがって現在の入院患者数は7,568人である。

中国における、この無症状感染者の推移と対応は、これからの日本における感染の拡大を抑えるために、いくらかでも参考になる部分があるかもしれない。

習近平が人類にコロナ・パンデミックをもたらした真犯人であることに違いはないが、今はともかく日本で感染爆発が起きないように祈るのみだ。

写真:新華社/アフロ

※1:https://grici.or.jp/
※2:https://www.nature.com/articles/d41586-020-00822-x
※3:http://www.xinhuanet.com/politics/2020-03/17/c_1125724765.htm



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