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シンバイオ製薬 Research Memo(4):「トレアキシン」は悪性リンパ腫の標準療法として適応拡大が進む(2)  4月03日15時14分

■シンバイオ製薬<4582>の会社概要

(2) リゴセルチブ(注射剤/経口剤)
「リゴセルチブ」はユニークなマルチキナーゼ阻害作用(がん細胞の増殖、浸潤及び転移に関与する複数のキナーゼを阻害することによりがん細胞を死に至らしめる作用)を有する抗がん剤で、高リスクの骨髄異形成症候群を適応症として開発を進めている。

現在の開発状況は、注射剤で再発・難治性の高リスクMDSを適応症とした国際共同第3相臨床試験を導入元であるオンコノバで実施しており(目標症例数360例)、2019年11月時点で目標症例数に対して90%を超える水準まで進んでいる。同社が担当する日本でも目標症例数50例に対して、同年12月末時点で48症例の登録を終えている。オンコノバでは、2020年度上半期にトップライン(主要評価項目)の結果を発表するとしており、同試験結果をもとに欧米と同時期に日本でも承認申請を行う計画となっている。販売承認申請の時期としては2021年、承認取得時期は2022年第4四半期を目標とする。潜在的な市場規模としては「ビターザ(R)」とほぼ同規模の150~160億円が見込まれる。

また、経口剤では単剤での再発・難治性の高リスクMDSを適応症とした第1相臨床試験を2019年6月に完了し、今後は「アザシチジン」との併用による開発に切り替えていく予定となっていたが、オンコノバの事業戦略として高リスクMDSに関しては注射剤でまずは販売承認を目指す方針となっていること、また、新たな適応症として進行性KRAS※陽性NSCLC(非小細胞肺がん)を対象とした医師主導の第1相試験を2020年内に開始することになったことで、一旦、開発の優先順位が下がっているようだ。オンコノバでは、免疫チェックポイント阻害剤と「リゴセルチブ」の併用により、KRAS陽性の非小細胞がん動物モデルでの腫瘍抑制効果を確認しており、今後、臨場開発を進めていくものと見られる。

※KRASとはがん遺伝子の1つであり、通常はKRAS遺伝子が細胞の増殖を制御しているが、KRAS遺伝子に変異が生じると、「細胞を増殖せよ」というシグナルが出され続け、がん細胞の増殖が活性化され続けることになる。大腸がんや肺がんなどでKRAS変異の患者が一定割合いることが知られている。

(3) ブリンシドフォビル(BCV)(注射剤/経口剤)
a) ブリンシドフォビルの概要とライセンス契約について
「BCV」は、サイトメガロウイルス網膜炎治療薬等で知られているシドフォビル(CDV)に脂肪鎖を結合した構造となっており、CDVよりも高活性の抗ウイルス効果が得られるほか、優れた安全性を持つ新たな抗ウイルス薬候補となる。脂肪鎖を結合することでCDV単体よりも細胞内に侵入しやすくなり、細胞内に侵入すると脂肪鎖が切り離され、二リン酸と結合することでDNAウイルスの複製を阻害する役割を果たす。このため、CDVや他の抗ウイルス薬と比較してウイルスの増殖抑制効果が格段に高くなるというデータがin vivo試験などで得られている。また、安全性という点においては、CDVが腎尿細管上皮細胞に蓄積することで、腎機能障害を発生するなど腎毒性が強いといった副作用リスクがあったが、「BCV」は脂肪鎖と結合することで逆に腎尿細管上皮細胞内に蓄積されなくなり、腎毒性も回避できるといった優れた特徴を持つ。米国FDAからは、サイトメガロウイルス、アデノウイルス、天然痘を対象としたファーストトラック指定を受けており、欧州EMAからは同様のウイルスを対象にオーファンドラッグ指定を受けている。

キメリックスでは「BCV」を経口剤として開発を進めていたが、第3相臨床試験で副作用などもあり優位な結果が得られず開発を中断していた。その後、抗がん剤分野に経営リソースを集中するため「BCV」のライセンスアウト先を探していたところ、新規導入品を探索していた同社とタイミングが合致し、グローバルでの製造・販売・開発(天然痘を除く)に関するライセンス契約締結に至っている。同社が導入を決めたポイントは、「BCV」の対象疾患が「希少疾患」かつ「空白の治療領域」であり、同社の開発ターゲットと合致していたこと、また、対象が血液疾患領域で「トレアキシン(R)」と同じであるため、追加の営業人員が不要で、営業効率面でのシナジーも大きいと判断したことにある。

なお、経口剤でキメリックスが開発を中断しているが、その原因として同社は、消化器官からの薬剤の吸収率が低かったことにあると見ている。注射剤であれば経口剤の1割の投与量で同じ効果が期待できるため、成功確率も高くなると考えている。なお、今回の契約では注射剤だけでなく経口剤についても契約内容に含まれている。経口剤に関しても今後、新たな製剤改良を行うことで課題を解決できる可能性があると考えたためだ。なお、天然痘だけ契約の対象外となっているのは、バイオテロ対策として天然痘治療薬を米国政府が自国で製造、備蓄しておく必要があることが背景にある。

今回のライセンス契約ではグローバルライセンスであること、また、製造権も含めた契約になっているところが目を引く。対象疾患は造血幹細胞移植後又は臓器移植後のウイルス感染症となるが、特に、臓器移植は欧米だけでなくアジアの市場が大きく、潜在的な成長ポテンシャルも大きい。従来も販売パートナーを通じて「トレアキシン(R)」を韓国、台湾、シンガポール向けに販売していたが、小規模で業績に与える影響も軽微だった。「BCV」の海外での展開に成功すれば、グローバル企業としての成長も視野に入ってくる。

また、製造権も含めたライセンス契約としたのは、2019年12月期に発生した「トレアキシン(R)」での品質不良問題が影響している。製造も含めて自社でコントロールし、事業リスクを極力抑える体制を構築していくことが重要との認識だ。製造委託先の選定を現在進めているが、高活性のウイルス製剤を製造できる技術があれば可能であり、早期に決定するものと思われる。なお、ライセンス契約締結に伴い、開発元のキメリックスに対しては、契約一時金5百万米ドル(約540百万円)を2019年12月期第3四半期に支払い、将来的なマイルストーンとして最大180百万米ドル(約194億円)、製品売上高に応じて2ケタ台のロイヤリティを支払う契約となっている。

b) 今後の開発方針
同社は今後の開発方針として、まずは国内で造血幹細胞移植後のウイルス性出血性膀胱炎を対象とした注射剤の開発を進めていく予定にしており、2020年12月期下期に臨床試験を開始し、2025年の販売開始を目標としている。キメリックスにおいて既に第1相臨床試験を終えていることから、同データを援用して第2相臨床試験から進めたい意向のようだ。また、承認審査期間を短縮できる先駆け審査制度の活用も検討している。

国内における造血幹細胞移植(他家移植)の症例数は年間3,700件程度で、このうちの8.6~24%(臍帯血移植はさらに高い)がウイルス性出血性膀胱炎を発症するとの報告がなされている。現在、有効な承認薬はなく、未承認のCDVを医師が個人輸入しているケースもあるが、副作用があるため安全な治療薬が望まれている。同社では国内で世界に先駆けて臨床開発を行うことで、グローバル事業展開の布石としたい考えだ。海外における開発戦略については2020年12月期第3四半期までに開発方針を決定する。世界で見ると、造血幹細胞移植(他家移植)の件数は年間3.5万件、臓器移植に至っては10万件を超える規模となっており、これら移植手術によって発症する様々なウイルス感染症に対応する治療薬として開発を進めていくことになる。海外については対象疾患の地域特性なども考慮して、パートナーシップ戦略を推進していく方針だ。

なお、2020年2月以降世界的な感染拡大が続いている新型コロナウイルス肺炎はRNAウイルス感染症のため、基本的にDNAウイルスを阻害する「BCV」の守備範囲外となるが、同じRNAウイルス感染症のエボラ出血熱については作用機序が不明ではあるものの効果のあることが確認されている。このため、キメリックスに問い合わせて、再検証する予定となっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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