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全人代開幕日決定から何が見えるか?(1)【中国問題グローバル研究所】  5月08日15時22分

【中国問題グローバル研究所】は、中国の国際関係や経済などの現状、今後の動向について研究するグローバルシンクタンク。中国研究の第一人者である筑波大学名誉教授の遠藤 誉所長を中心として、トランプ政権の ”Committee on the Present Danger: China” の創設メンバーであるアーサー・ウォルドロン教授、北京郵電大学の孫 啓明教授、アナリストのフレイザー・ハウイー氏などが研究員として在籍している。関係各国から研究員を募り、中国問題を調査分析してひとつのプラットフォームを形成。考察をオンライン上のホームページ「中国問題グローバル研究所」(※1)にて配信している。

◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している遠藤 誉所長の考察を2回にわたってお届けする。

———

全人代開幕が今月22日となったが、これは決して「一党支配体制だからコロナに勝てた」を象徴していない。全人代の主人公は李克強。コロナ戦から外された習近平は何を恐れ、アフターコロナで何を狙っていくのか?

◆全人代開幕日が決定されたことに対する位置づけ
4月29日、全人代(全国人民代表大会)常務委員会が栗戦書・全人代常務委員会委員長の主催で開催され、新型コロナの影響で延期されていた2020年の全人代(第13期全人代第3回会議)を5月22日に開幕すると決定した。コロナ感染拡大が収束し、3000人から成る全人代代表(国会議員に相当)が全国から集まり、一つの部屋に密集しても大丈夫という状態にまで来たという証拠であるということは言える。

全人代は改革開放後の1985年に毎年3月に開幕することが定例化し、1998年からは3月5日開幕と決まっていた。なぜ「3月」なのかというと、中国では会計(財政)年度が3月から2月というサイクルで動いているからだ。

したがって5月22日から開幕された場合、財政年度という区切りに基づく政府活動報告に関していびつな形になるため、通年の経済成長率の目標設定はしにくいだろう。また1月23日から武漢封鎖をはじめ多くの企業活動を停止していたので、経済成長はマイナスになっている(−6.8%)。「復工復産」という言葉で表している中国の経済活動復帰は、既に90%以上回復してはいるものの、1年間の経済成長予測を立てるのには一定の困難を伴うだろうことは容易に想像がつく。

4月29日の中国共産党の機関誌「人民日報」の姉妹版「環球時報」(※2)は、中国政府の通信社である新華社の通知として以下のように述べている。

——習近平同志を核心とする党中央の堅固な指導の下、全国的にあらゆる階層の広範な人民群衆の艱難辛苦に耐えた努力により、新型コロナ肺炎に対する戦いは継続的に好転し、経済社会生活は徐々に正常な歩みに戻りつつある。総合的に考えて、第13期全人代第3回会議を開幕する条件は整った。(引用ここまで)

日本のメディアでは全人代開幕を決定したことを、「中国指導部が、ウイルス流行の封じ込め成功に自信を強めていることを明示する動きだ」という時事通信社(※3)の「評価」に足並みを揃えて「来月の全人代は、流行をほぼ封じ込めたとする指導部の自信を強調するものになる」と位置付けている。

そうなのだろうか——。

文脈から見て「指導部」は「習近平指導部」あるいは「習近平」自身を指しているように読み取れる。だとすれば、これは中国の真実を何も見ていない「日本的視点」としか言いようがない。

何度も言うが、通信社は「客観的事実」を速報で知らせてくれるのは非常にありがたいが、「記者の個人的価値感」や「個人的視点」を挟むべきではないのではないだろうか。まちがった(あるいは正確でない)価値観や評価を加筆した瞬間に、日本人を誤導し、結果、日本に不利をもたらす。

◆コロナ期間、圧倒的力を発揮したのは国務院「聯防聯控機構」
全人代を主宰するのは国務院総理だ。

李克強が唯一、主人公として輝く日である。

習近平国家主席(中共中央総書記)にとっては、そもそもあまり嬉しい日ではない。李克強は「国字顔(国のような文字をした顔の形)」をしたガリ勉さんで、スピーチをするときに汗びっしょりになる体質(性質?)を持っている。国家のトップになる器ではないし、カリスマ性も持っていない。だから、習近平にとっては「相手にもならない存在」なので、ライバル心を抱いているわけではないだろう。その必要はないことは習近平自身が誰よりも知っているはずだ。

しかしコロナの発生時点から始まって、コロナとの闘争期間、陣頭指揮を執り続けたのは国務院管轄下の国家衛生健康委員会が主催する巨大な政府機構「聯防聯控機構」だ。

「聯防聯控機構」のフルネームは「国務院による新型コロナウイルス感染肺炎防疫のための聯防聯控機構」と非常に長い。この「聯」は「聯合」の意味で、「聯防聯控」は「聯合防疫聯合制御」という意味である。1月20日に設立された、国務院(中国人民政府)管轄下の32の(全ての)中央行政省庁がメンバーとなっている巨大組織である。これ以上に大きな組織はない。これ等がまさに「一丸となって」コロナ戦を戦ってきた。

陣頭指揮を執る国家衛生健康委員会のすぐ上にいるのは孫春蘭国務院副総理で、その上にいるトップは言うまでもなく李克強国務院総理だ。

1月20日と言えば習近平がコロナに関して「重要指示」を出した日だが、2月10日の論考<新型肺炎以来、なぜ李克強が習近平より目立つのか?>(※4)で詳述した通り、この日習近平はまだ雲南にいた。17日から19日まではミャンマーに行き、その足で雲南を視察し、例年の「春節巡り」を楽しんでいたのである。

したがって「重要指示」は「習近平の名において」出してはいるものの、「出させた」のは李克強であり、国家衛生保健委員会のハイレベル専門家チームのリーダーである鍾南山だ。だから雲南の春節巡りなどを「めでたく、のんびり」(※5)としていた習近平は「重要指示」を「出させられた」のである。

それでもすぐには北京に戻ってこようとはせず、1月21日まで雲南巡りをした後に、上海にいる江沢民に「春節のご挨拶」に行っている。

それくらい習近平はコロナ危機に対する自覚がなかった証拠だ。

(本論はYahooニュース個人からの転載である)

「全人代開幕日決定から何が見えるか?(2)【中国問題グローバル研究所】」へ続く

写真:UPI/アフロ

※1:https://grici.or.jp/
※2:https://baijiahao.baidu.com/s?id=1665270639932603496&wfr=spider&for=pc
※3:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200429-00000038-jij_afp-int
※4:https://grici.or.jp/885
※5:http://www.xinhuanet.com/politics/leaders/2020-01/21/c_1125489987.htm



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