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カドカワ Research Memo(9):IPの「創出力×展開力×体験力」を成長エンジンとして収益拡大を目指す  7月16日15時49分

■中期経営戦略について

1. 経営環境の変化に対する取り組みについて
KADOKAWA<9468>を取り巻く市場環境は、コンテンツ業界の急速なデジタル化、アマゾンエフェクト、NetFlix に代表されるインターネットを活用した映像配信プロバイダーの成長や中国市場の拡大、また既存の出版システムの制度疲労など大きく変化してきており、そのなかで同社グループは「持続的な成長」と「企業価値の向上」を図るべく様々な取り組みを推進している。

具体的には、ドワンゴとの経営統合によるデジタルプラットフォームの強化や、IP創出人材及びIT人材の獲得、また、電子書籍・電子雑誌の販売プラットフォームの確立、メディアミックス展開によるIPの収益最大化等に取り組んでおり、そのほか経営のDXへの取り組みとして、新しいワークスタイルとしてABW※を導入しているほか、出版事業におけるBECプロジェクト(製造・物流改革)等、各領域で生産性改革を実行している。

※ABW(Activity Based Working)とは、仕事内容に合わせて働く場所や机などを選ぶ働き方。例えば、集中作業を静かな部屋で行い、打ち合わせをソファ等で行うなどフレキシブルに場所を選んで働くことを指す。



所沢新工場の稼働により、書籍の製造・物流プロセスのデジタルショートラン、適時適量生産・出荷が可能に
2. 基本戦略
同社は成長を実現していくうえでの基本戦略として、強みであるIPの「創出力」「展開力」「体験力」を融合し、メディアミックス戦略によりグローバル展開していくことを掲げている。例えば、有望なIPをアニメ化やゲーム化し、グローバル展開していくほか、海外のプラットフォーマーとの連携(コンテンツの共同制作等)を強化していく。また、IPの世界観をリアルのイベントやグッズ展開、Webでのファンコミュニティなどで体験してもらうことで顧客との接点拡大を図り、DXへの取り組みを推進することで、これらの展開スピードを加速していく方針となっている。

成長サイクルの流れを簡単に示すと、同社は毎年、出版で5,000点、映像作品で80点のIPを創出しており、これらIPが自社アーカイブ(紙書籍で11万点、電子書籍6万点、映像作品2千点)とともに、自社プラットフォームや他社プラットフォーム等を通じて販売されていく。これらビジネスモデルを進化(サブスクリプション、ダイナミックプライシング等)させ、またグローバル化(国際合作やアライアンス等)して展開していくことで、デジタルコンテンツ市場を拡大していく。また、自社プラットフォームの進化だけでなく、プライシング効果や作品露出効果、非在庫拡販効果などによって、自社アーカイブの収益力アップと自社プラットフォームの成長を目指していくことになる。

(1) DX改革
同社はDXを推進していくため、DX戦略推進本部を立ち上げ、領域ごとに目標を設定して取り組みを進めていく方針となっている。具体的施策と目標は以下のとおりとなる。

a) ID・データ活用領域
マーケティング部門の組織横断連携を進めることで、「カスタマー・エクスペリエンス強化」を図り、デジタルマーケティングにより宣伝販促コスト効率化を目指す。

b) 製造・物流改革領域
書籍の製造・物流プロセスのデジタルショートラン/適時適量生産・出荷を可能とする新工場を2020年秋ごろに稼働(倉庫の稼働は同年12月29日)させることで、「返品率」を中期的に20%台まで引き下げていくことを目標とする(2020年3月期は30%台)。

c) EC・ネットサービス領域
ストア運営のノウハウ共有と課金モデルを強化することで、「売上高の最大化」と「EC会員350万人の更なる拡大」「越境ECの強化」に取り組んでいく。

d) 雑誌・Webメディア領域
KPIの設定・分析やビジネスモデル改革を推進していくことで、「雑誌返品率の改善」と「MAUの向上」を図っていく。「ザ テレビジョン」では平均返品率20%台前半を達成し、Web版ではPV数を2年で8倍に拡大することに成功しており、このノウハウを横展開していく。

e) ABW・オフィス改革領域
サテライトオフィスやリモートワーク制度の導入に加え、ICTルール導入支援や全社のDX実行支援に取り組むことで、「労働生産性向上」と「AI、RPA等による業務効率化」を実現していく。労働生産性については、2020年11月以降に所沢新オフィスがオープンすることで、現在、飯田橋や銀座エリアに点在している5千坪分の賃貸スペースを順次返却し、2023年3月期には2019年3月期比で家賃等の固定費12億円の削減を見込んでいる。また、AIやRPA等の導入を進めることで、システム費や外注費等も2019年3月期比で20%の効率化を図る。

(2) グローバル展開
書籍やアニメ、ゲーム等のIPを北米や中国などを中心に世界各国へ展開し、海外売上比率をさらに引き上げていく。事業戦略としては、新規IPの創出に加えて、国内外の有望なコンテンツIPを集約し世界展開を進めること、業界全体のDXを推進しプラットフォームのグローバル展開を進めていくことなどを挙げている。特に、アニメやゲームなどは海外でも評価が高く、ライセンス販売だけでなく大手プラットフォーマーとの共同制作などを今後積極的に進めていく方針だ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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