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スイスの対中外交に暗雲【フィスコ・コラム】  5月09日09時00分

70年間にわたり中国との友好関係を築いてきたスイスが初めて対中外交を見直す方向で、両国関係に亀裂が生じています。中国の人権問題に対する欧米の批判が高まるなか、スイスもそれに同調した格好。安全通貨フランが選好される地合いが一段と強まりそうです。


中国はイスラム系住民であるウイグル族の扱いをめぐり、欧米の厳しい批判にさらされています。特に、アメリカは人権問題を突破口に中国との覇権争いで優位に立ちたいとの思惑からか、貿易戦争に彩られたトランプ前政権時代よりも関係は冷ややかになった印象を受けます。ヨーロッパ諸国もアメリカに追随する形で対中関係を修正しようとの機運が高まりつつあり、今後の経済への影響も懸念されます。


スイスも3月19日に初の「対中外交戦略」を取りまとめ、人権と貿易などの対応で一貫性ある両国関係の発展に不可欠なものとしました。平和など4項目の主要テーマごとに達成目標を掲げ、価値基準の違いがあれば調整に努める意向です。スイス政府は中国について、反体制派や少数派を弾圧し、事実上の一党独裁国家と発言しています。それに対し中国は猛反発しており、関係の悪化は避けられません。


スイスは1949年建国の中華人民共和国を西側でいち早く正式に承認し、両国は昨年、国交70年を迎えました。これまで友好関係を深め、中国はスイスにとって重要な交易相手になっています。スイスは2015年に発足したアジアインフラ投資銀行(AIIB)に参加し7億ドルあまりを出資しました。中国主導の「一帯一路」に関しても首脳どうしで意見交換するなど、関係は良好とみられていました。


もっとも、スイス国内では順調な経済・外交関係の半面、中国のチベット民族への弾圧に対する抗議活動が盛んに行われ、もともと人権問題への意識は高まっていました。2004年にベルンを訪問した江沢民国家主席(当時)がそれに激しく反論する映像も残されています。昨年の新型コロナウイルスの感染源としての疑念もあり、欧米による対中批判に乗じる形で不満が噴出したとみられます。


一方、4月16日に公表されたバイデン政権初の為替報告書では、ベトナム、台湾、スイスの3カ国について条件を満たしたにもかかわらず、「操作国」の認定を見送っています。その理由を考えてみると、やはり中国包囲網への意図が感じ取れます。スイスの除外に関しては、対中関係の微妙な変化に着目し、蜜月関係にあるとみられていた両国の分断を目論んだ可能性もあります。


人権問題での批判に神経をとがらせる中国が欧米同様、スイスに対しても強硬姿勢を貫くとすれば、経済の交流も縮小が予想されます。中国との貿易戦争はアメリカだけでなくヨーロッパも参戦し始めたのかもしれません。だとすれば、コロナ後の回復は予想外に遅れが生じることになりそうです。

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。


(吉池 威)




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