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日経平均は3日ぶり反発、米CPIはシナリオ変化につながらず?  6月10日12時27分

 日経平均は3日ぶり反発。121.90円高の28982.70円(出来高概算5億1000万株)で前場の取引を終えている。

 9日の米株式市場でNYダウは3日続落し、152ドル安となった。注目される5月消費者物価指数(CPI)の発表を10日に控え様子見姿勢が強いなか、高値警戒感から景気敏感株を中心に売りが出た。一方、長期金利の低下でハイテク株の一角が買われ、ナスダック総合指数は0.1%の下落にとどまった。本日の日経平均もこうした流れを引き継いで61円安からスタート。ただ、国内での新型コロナウイルスワクチンの普及から先行き期待も根強くあり、寄り付きをこの日の安値にプラスへ切り返すと、前場中ごろには29007.53円(146.73円高)まで上昇する場面があった。

 個別では、東エレク<8035>が堅調で、レーザーテック<6920>が4%超の上昇。塩野義薬<4507>や郵船<9101>、テルモ<4543>の上げも目立つが、塩野義薬は年内にも3000万人分の新型コロナワクチン量産体制を整えると報じられたことが買い材料視されているようだ。また、決算や自社株買い実施を発表したアセンテック<3565>などが急伸し、旧村上ファンド系の株式大量保有が判明したコーナン商<7516>は東証1部上昇率トップとなっている。一方、前日まで2日連続で買い気配のままストップ高比例配分となっていたエーザイ<4523>が朝高後に急反落。一部証券会社の目標株価引き下げもあって売りがかさみ、前引け時点で東証1部下落率トップとなっている。公募価格が決定したルネサス<
6723>も軟調で、ソフトバンクG<9984>や任天堂<7974>は小安い。

 セクターでは、海運業、精密機器、ガラス・土石製品などが上昇率上位。一方、空運業、水産・農林業、銀行業などが下落率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の45%、対して値下がり銘柄は49%となっている。

 本日の日経平均は3日ぶりに反発し、3ケタの上昇で前場を折り返した。ただ、前日までの下落を受けた自律反発の域を出ないだろう。底堅いとはいえ29000円近辺では伸び悩んでおり、日足チャートを見ると28000円台後半に位置する25日移動平均線と29000円台前半に位置する75日移動平均線の間でのもみ合いが続いている。気が付けばかれこれ3週間近くこの状況だ。個別ではエーザイの急反落が目を引くが、米長期金利の低下を追い風に主力グロース(成長)株の一角が堅調。需給ひっ迫の長期化が意識されてか、海運株も強い値動きを続けている。ただ、全体として物色の方向感が見出しづらい印象もある。ここまでの東証1部売買代金は1兆2000億円弱。新興市場ではマザーズ指数が4日続伸し、0.59%の上昇となっている。

 本日は欧州中央銀行(ECB)理事会と米5月CPI発表、それに明日は先物・オプション6月物の特別清算指数(SQ)算出と重要イベントが目白押しだ。特に米CPIは前回4月分の発表時に株式相場の急落を招いただけに、警戒する向きも多いのだろう。ただ、一部トレーダーからは「仮に市場予想を上回る強い数値が飛び出したとしても、相場は一時的に触れる程度で大きなシナリオ変化はないのでは」といった声が聞かれ、筆者もこの見方に同意したい。

 一昨日の当欄で指摘したとおり、日本株については国内勢・現物株投資家らの「強気派」と海外マクロ系投資家らの「弱気派」が真っ向対立している。ただ、コロナ禍からの経済回復はムラが大きい(=指標の振れも大きい)うえ、先行きに自信を持ちきれない投資家も多いとみられ、オプションの取引状況などを見ると強気派・弱気派とも一定のヘッジをかけていることが窺える。米5月雇用統計の発表を受けた週明けの取引でも日経平均が朝方高く始まったが、イベント通過に伴うヘッジ解消の動きが相場を一時的に上下に振ると考えられる。

 今回の米5月CPIを巡っては、確かに足元でも原油など一部商品の価格上昇が続いており、警戒感が根強く残るのかもしれない。しかし、4月分の急伸を見た後では多少強い数字が出てもサプライズ感に乏しくなりがちだ。それに一昨日の当欄でも述べたが、5月雇用統計では市場予想こそ下回ったが、雇用者数の伸びが前月に比べ加速。インフレ加速につながると目されていた労働需給のひっ迫は徐々に解消されつつあるとの見方から、「CPI上昇も一時的な供給制約によるもの」と割り切って捉える向きが多いのではないかと思われる。

 この背景には、「財政支出の一段の拡大は期待しづらい」ことと、それに伴ってかねて述べているとおり「経済改善のモメンタム(勢い)は既にピークを越えつつある」という見方もあるだろう。足元で続く期待インフレ指標の低下や長期金利の低下は、インフレ観測の後退とともに、金融政策当局への「緩和継続」の催促とも捉えられることができる。それだけに、本日のECB理事会、また来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)は注目しておきたい。
(小林大純)


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