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【第5回】投資情報の普及はアナリストから?

 

 第1回~第4回迄の投稿によって、証券アナリストとはどのような"人種"なのか、ご理解して頂けたでしょうか?今回は、証券アナリストの醍醐味でもある「マーケットメイキング」について考えます。アナリストの活動項目としては「スピード」「タイミング」とも関連しますが、個人投資家もこの傾向を習熟することによって、投資成果を大きく向上させることが可能になると考えています。

さて、唐突ですが、情報普及に関する「2乗の法則」をご存知でしょうか?これは、ブーム(流行)の伝わり方は、情報の普及と同じように2乗の速度で広がっていく、ということです。具体的には、ある情報が100%普及する時、

(1)0~1%(アントレプレナー:1%)

(2)1%~4%(イノベーター:3%)

(3)5%~13%(オピニオン:9%)

(4)14%~94%(マス層:81%)

(5)~100%(レイター:6%)

という順序で普及することを意味します。ピッタリ正確ではありませんが、概ね2乗の速度で普及しており、特に(4)の時期に爆発的な普及を示すことが特徴です。

私が長年に渡って分析している自動車産業でも、エアバッグ、ABS(横滑り防止装置)、カーナビゲーション、ETC等の数多くの実例があります。現在、ETCを除くと、これらは装着していて当然であり、前述の中では(5)がほぼ終了した状態です。ただ、最初から普及した訳ではなく、とある時期に指数的な拡大を示しました。前述の中では(4)の時期が該当します。最近では、ハイブリッド車市場が急速に拡大しており、(4)の中盤に差し掛かっていると考えられます。ただ、トヨタ自動車が2世代目の「プリウス」を投入した10年前は、まだ(2)の時期だったと思います。

最近の身の周りの実例では、スマートフォンの普及がピッタリ該当します。スマホがあっという間に普及したと感じている人は少なくないはずです。この"あっという間"が前述した(4)の時期になりますが、今現在は既に(4)の末期に近い段階にあると言えましょう。もし、皆さんの周りで「そろそろ私もスマホに買い換えようかな」という人がいたら、どう思いますか?面と向かっては言えませんが、恐らく「今頃になってか...」という気持ちが少なからずあるのではないでしょうか。

しかし、今から僅か4~5年前、スマホを使っている人を見て「流行の最先端を行っているな」と思った人は少ないはずです。その当時は未だ携帯電話(注:今現在は「ガラケー」と呼ばれています)が圧倒的多数で、スマホの普及状況は前述した中の(1)、もしくは、(2)くらいに該当していました。恐らく、スマホなんて気にも留めなかった方が多かったと思います。「あぁ、あの頃からスマホを使っていたなんて凄いな」と感嘆するのは、ずっと後になってからです。そう、今現在が(4)の末期に近いからなのです。

前置きが長くなりましたが、投資情報に関しても全く同じことが言えます。大多数の人が気付かない新しい投資情報は、最初は殆ど認識されませんが、その内容が正しい場合、ある時期になると急速に認識され始めます。ここで重要なのが投資行動を起こすタイミングです。前述の(1)か(2)で投資行動を実行するのが理想ですが、現実的には非常に難しいものがあります。多くの情報を有する機関投資家でも不可能に近いと言えましょう。それ故に、経験が浅い個人投資家がこれを追い求めるのは非常に危険です。それでも、遅くとも(4)の初期段階、或いは、上手くいけば(3)の段階で投資行動を起こすことは十分可能になるのです。

それでは、最初は大多数の人が気付かない新しい投資情報を入手するにはどうしたらいいのでしょうか?実際には、事業会社から公表されることは稀です。なぜならば、事業会社からニュースリリースのような形で公表された場合、それは瞬時にして市場に認識されるからです。実は、その多くが、証券アナリストからのレポート等の形でもたらされていると考えられています。そして、多くの証券アナリストは、こうした投資情報を作成するために、情報収集と評価分析の精度向上に励んでいるのです。自分の作成した投資情報(レポート等)が(1)~(3)の普及期に該当したならば、証券アナリストにとって、これに勝る喜びはありません。

執筆:株式会社ナビゲータープラットフォーム 持丸 強志

持丸 強志(もちまる つよし)氏

経歴
約20年間、国内系と外資系証券会社に所属したセルサイドアナリストとして、自動車セクター(自動車部品を含む)を担当。
現在は、個人投資家向け投資アイデアサイト「Longine(ロンジン、http://www.longine.jp/)」を運営するナビゲータプラットフォームに所属するアナリストとして自動車、自動車部品、機械セクターの企業を中心に調査レポートを執筆中。

掲載日:2013年12月19日
   
    

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