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【第1回】国土強靭化計画の中で考えるべき東京オリンピック

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 日本の株式市場は、2020年の東京オリンピック開催決定を好感して上昇しました。また、オリンピック開催の恩恵を受けると思われる業種や銘柄が買われる展開となりました。この傾向は今後も続くのでしょうか。過去のオリンピック開催決定から開催までの株式市場の動きを振り返り、今後の方向性を探ります。

 過去のオリンピック開催決定後のご当地の株式市場の反応は誰もが気になるところかもしれません。しかし、はじめに考えなくてはならないのが、開催国がインフラ整備された先進国か、オリンピック開催に向けてインフラ整備をしなければならない新興国かどうかです。2020年の東京オリンピックはコンパクトかつ既存のインフラを効率的に活用するということがうたわれています。過去のオリンピックと比較する際にはアテネや北京オリンピックではなく、先進国で行われたケースで比較する必要があります。

 直近の先進国での開催事例は、2012年のロンドンオリンピックです。図表1は2005年7月に開催地がロンドンと決定されてから実際に開催される2012年7月までの英国(FTSE100、英国を代表する株価指数)及び米国(SP500)、日本(TOPIX)の株価指数の推移を示したものです。ロンドンオリンピックでは開催が決定されたという理由だけ英国の株価が上昇したとは言えません。確かに2007年後半までは株価指数は堅調に推移していますが、米国のパフォーマンスとそれほど変わりません。また、2007年の途中まで日本の方がパフォーマンスは圧倒的に良いのが分かります。

二つ目の先進国開催事例として、1996年の米アトランタオリンピックを見てみましょう。図表2から、米国と英国はほぼ同じような株価パフォーマンスであったことが分かります。このことからも、アトランタオリンピックに関しても米国の株価指数がオリンピックだけで株価上昇したとはいうことはできません。

 それでは、1984年に同じく米国で開催されたロスアンゼルスオリンピックはどうだったのでしょうか。1978年4月に開催地として決定してから1984年7月に開催されるまでは株価指数は上昇トレンドですが、TOPIXも同じような傾向であったことがわかります(図表3)。加えて、米国よりも日本のパフォーマンスがよいことから、ここでも株式市場をオリンピックの効果だけでは語ることができないと言えます。ここまで見てくると、オリンピック開催国の株価指数はオリンピックというイベントよりも、景気全体に左右される傾向が強いと言えそうです。

 さて、2020年の東京オリンピック開催決定以降、報道で取り上げられる競技施設への設備投資の規模はどの程度の景気インパクトがあるのかを考えてみましょう。2020年の東京オリンピックでの競技施設への設備投資額の合計は4,300億円程度です(図表4)。この設備投資の規模は原子力発電所や先端半導体工場の設備投資の規模と変わりがありません(図表5)。過去に国内で原子力発電所や半導体工場が建設というイベントのみで、日本の株式市場全体が盛り上がったことは記憶にありません。各種オリンピックによる経済効果の試算もありますが、設備投資だけでなく、オリンピックが開催され国内外の集客があることの効果を含んだ数字といえます。やはり、日本の株式市場が今後も継続的に上昇トレンドにあるか否かは、オリンピックという一過性のイベントだけでは無く、安倍政権による国内の需要刺激策の内容と影響を踏まえて判断する必要があると思います。

 私は安倍政権の施策の中でも「国土強靭化」計画に注目しています。この国土強靭化計画も防災・減災という考え方が前面にありますが、その背景にあるのは老朽化したインフラをいかに効率よく更新していくかという問題です。

 2020年東京オリンピック・パラリンピック招致委員会が提出したオリンピック開催にあたって今後準備される輸送インフラの計画の中で、2014年以降竣工する高速道路や幹線道路の投資金額は4,200億円程度あります。このうち一部はすでに投資されているため、この全額が将来投資に回るわけではありません。しかし、2020年の東京オリンピック開催決定により、「防災・減災等に資する国土強靱化基本法案」が国民的コンセンサスを得て実行に移されることになれば、「国土強靭化」計画は大きなトレンドになる可能性があります。図表6は、国土交通省は今後社会インフラ(資本)を更新するのに必要な「更新費」は2013年度に1兆円程度だったものが、2020年度には1.2兆円、2030年度には3兆円にまで拡大していく試算を示しています。

 2020年の東京オリンピックは、こうした老朽化したインフラ更新、更にはエネルギー問題を解決するためのグランド・デザインを再設計する流れの中で実施されるものであると考えています。また、将来にわたっての都心と地方の人口の増減や財政難も考慮すると、全国均等にインフラ更新がされるとは考え難く、今後数十年にわたって、大きなテーマになりうるのは以下のポイントだと考えています。

  • 将来にわたって人口が集中する首都圏の老朽化したインフラの早急な更新
  • 首都圏災害時に対応したBCP(事業継続計画)を目的とした地方都市のインフラ新設と更新
  • 東日本大震災以降、いまだ解決を見ていないエネルギー調達問題とエネルギー効率の良いインフラ設計

 次回以降、こうした長期のトレンドの中で恩恵を受ける業種(特に機械、自動車、電機セクターなど)や具体的な銘柄について解説をしていきます。

執筆:株式会社ナビゲータープラットフォーム取締役 アナリスト兼Longine編集委員長

泉田 良輔(いずみだ りょうすけ)プロフィール

個人投資家向け投資アイデアサイト「Longine(ロンジン、http://www.longine.jp/)」編集委員長

慶應義塾大学商学部卒。日本生命保険、フィデリティ投信で日本株式の証券アナリストや外国株式のポートフォリオマネージャーとして従事。2013年に株式会社ナビゲータープラットフォームを設立し、Longine(ロンジン)を運営。著書に「日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか」(日本経済新聞出版社)

掲載日:2013年9月26日

 
   
    

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