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【第5回】東京オリンピックから読み解くアベノミクスの成長戦略

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 ここまで4回にわたって東京オリンピックで恩恵を受けると思われる機械、自動車、電機セクターを見てきました。2020年東京五輪企画特集の第1回「国土強靭化計画の中で考えるべき東京オリンピック」でも触れたように、東京オリンピックは長期的なインフラ更新を行うための一つのきっかけとしてみるべきだと考えています。

安倍政権の成長戦略がどのようなものかは、今後さらに具体的になっていくと思います。成長戦略として比較的に短期間で結果を出せるかどうか、また日本経済に対して波及効果を持たせることができるかという点を考慮すると、選択肢は多くないと思います。スピード感、確度の双方を満たすのは内需刺激策ではないでしょうか。

本質的には、成長戦略は世界で事業拡大ができそうなネタを仕込むのと、それを実行できる企業を支援できるような枠組みを整えるべきだとは思います。しかし、結果が出るまでに時間がかかるものに政治家が優先的に取り組むというのは考えにくいように思います。

そうした観点でテーマとして可能性がありそうなものを3つ挙げたいと思います。

1. インフラ更新投資。
2. カジノ構想。
3. スマートシティ普及。

図表1:大手電機メーカー及び完成車メーカーの時価総額推移(兆円)

一つ目のインフラの更新投資については、東京オリンピックが決まることで「インフラ更新は必要だ」というようなコンセンサスも出来上がってくることでしょう。恩恵を受ける業種はゼネコン、建設機械、建設や工事に伴う資材メーカーとみています。

二つ目のカジノ構想。これはまだ議論や審議が必要な内容ですが、東京オリンピックに合わせて日本でカジノができれば非常にタイミングの良いスタートを切ることができます。カジノが誘致できる自治体は、地元の産業が恩恵を受け、結果として税収増が期待されます。外国人観光客を惹きつけることができれば、小売業やホテル業などの観光産業も恩恵を受けるでしょう。また、カジノが大規模であれば遊戯機器メーカーも恩恵を受けると思います。日本でカジノを合法化することの議論もあるでしょうが、実現できれば景気への波及効果も期待できます。

最後はスマートシティの普及です。「スマートシティは省エネが目的だ」と思われがちですが、少し違う角度から考える必要があります。東京オリンピックは、安倍政権が「原発問題は制御下にある」という前提で獲得しましたが、稼働停止をしている原発の影響により、海外からエネルギーを調達してこなくてはならない状況には変わりがありません。スマートシティの本質は経済活動とその規模を維持しながら、最も効率的にエネルギーを運用するという点にあります。エネルギーがなければ経済活動は維持できませんし、経済活動が活発化すればより多くのエネルギーが必要となります。将来、原発がすべて稼働しないという前提に立てば、日本にとってスマートシティは「エネルギー安全保障上必要不可欠なソリューション」だといえます。

スマートシティを運用する上で重要なポイントは、エネルギーを安定的に供給することと、そのエネルギーを効率的に使うことです。

エネルギーを安定的に供給する点に関しては、原子力を除けばLNGをはじめとする化石燃料を長期で調達し、発電することになります。化石燃料は海外から輸入に依存していることを考えると、再生可能エネルギーもエネルギーポートフォリオとしてエネルギー源の一つとして考える必要があります。再生可能エネルギーは安定していないという点と、そもそも再生可能エネルギーは化石燃料と比較して割高だというデメリットもありますが、エネルギー調達リスクを回避するためには欠かせないとみています。

発電コストは割高になりますが、再生可能エネルギーの中では、設置のしやすさや利権の整理のしやすさから太陽光発電は引き続き主力になるとみています。固定価格買い取り制度の買い取り価格が前提になりますが、太陽光パネルメーカーはスマートシティが普及すれば長期的に恩恵を受ける可能性があります。

一方、エネルギーをいかに効率的に運用するかという点については、エネルギー制御とエネルギーを使うアプリケーションの効率化が重要になります。制御で重要になるのはセンサーとセンサーから上がってくるデータ処理です。センサーは半導体メーカーなどが恩恵を受けますし、データ処理はデータセンターが恩恵を受けます。また、エネルギーを使うアプリケーションである空調や自動車を、経済活動を停滞させずに効率的に運用することが求められます。いずれのケースも電機メーカーや情報通信産業が恩恵を受ける可能性が高いとみています。

今回取り上げた3つのアイデアは政策として決定されていませんが、安倍政権による内需刺激策の一環として進められる可能性があると考えています。今後も安倍政権の意思決定を見ながら掘り下げていこうと考えています。

執筆:株式会社ナビゲータープラットフォーム取締役 アナリスト兼Longine編集委員長

泉田 良輔(いずみだ りょうすけ)プロフィール

個人投資家向け投資アイデアサイト「Longine(ロンジン、http://www.longine.jp/)」編集委員長

慶應義塾大学商学部卒。日本生命保険、フィデリティ投信で日本株式の証券アナリストや外国株式のポートフォリオマネージャーとして従事。2013年に株式会社ナビゲータープラットフォームを設立し、Longine(ロンジン)を運営。著書に「日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか」(日本経済新聞出版社)

掲載日:2013年10月31日

 
   
    

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