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【第2回】個人投資家は投資情報の「格差」を認識し、飛び越えよう

 

 今回は、機関投資家と個人投資家の間に存在する投資情報の「格差」についてお伝えし、それを踏まえて、個人投資家が勝機を見出し易い投資スタイルを考えていきましょう。

機関投資家は、上場企業に直接取材をすることができます。また、セルサイドアナリスト(証券会社に所属する証券アナリスト、詳細は前回記事をご参照ください)の最新のレポートを発行と同時に入手することができます。機関投資家が望めば、より深いディスカッションも可能です。つまり、機関投資家はコンセンサスを出し抜くアイデアをいち早く入手し、投資に活かすことが出来る立場にあるのです。

一方、個人投資家が上場企業に取材をする機会はまずありません。また、立派な調査部門を持つ大手証券会社でも、個人投資家のレポート閲覧には何らかの制限(数日後から閲覧開始、一部だけ閲覧可能など)をかけているケースが多いように思いますので、個人投資家が大手証券会社のアナリストレポートをリアルタイムに入手することも難しいのが現実でしょう。機関投資家と個人投資家の間には、大きな情報の「格差」が存在するのです。

経験的には、こうした情報格差は短期の投資をする場合に最も顕著に表れるように思います。長期的な株価は企業業績に基づき算定される企業価値に収斂すると言われますが、短期の株価は、コンセンサスの変化に連動する傾向が強いためです(ニュースが出たとき、それがコンセンサスを引き上げるものであれば株価は上昇、引き下げるものであれば株価は下落)。

短期の投資をする機関投資家は、情報収集面での優位性をフルに活かし、如何にしてコンセンサスの変化に先んじて投資をするかを日々考えています。そのため、個人投資家が投資情報/アイデアを入手する頃には、機関投資家は先回りしてポジションを作り終え、場合によっては利益確定の反対売買に入っていることも珍しくありません。

では、個人投資家が勝機を見出し易い投資スタイルは何でしょうか?私は、優良株の長期投資と、小型株への投資が適していると考えています。勿論、待つことが何よりも嫌いな方が長期投資をすることはお薦めしません。ご自身の性格にあった投資スタイルが一番です。しかし、資本市場のプロとして仕事をしてきた経験を踏まえると、私であれば上記の二つを選択します。

まず長期投資から考えていきましょう。私は、長期投資家に求められる要素は大きく二つあると考えています。一つは、企業の競争力の源泉に関する理解です。競争力の源泉を理解した上で、市場がパニックに陥った時、あるいは投資対象企業に事故が発生した時、競争力の源泉を壊してしまうものか否かを吟味し、そうでなければ多くの投資家が逃げ出す中で投資をするのです。

もう一つは、投資方針を貫ける環境が大事です。機関投資家の中にも長期投資を行う方々が存在します。彼らは短期の投資家とは全く異なり、目先のコンセンサスの変化やイベントはあまり気にしません。長期の業績予想を行い、それに基づいて求められる企業価値と、現在の株価を比べ、安ければ投資するのです。しかし実のところ、機関投資家が長期投資を行うのは簡単なことではありません。機関投資家として働くバイサイドアナリストやファンドマネージャーは、目先の運用パフォーマンスに関する強いプレッシャーにさらされるためです。また、運用会社としての長期投資に対する確固たる方針と実績が無ければ、長期投資が許容されないのです。

個人投資家に関して言えば、皆さんの投資方針に口を出す上司はいません。そのため、投資に関するフレキシビリティは個人投資家ならではの武器と言えます。また、長期投資の対象となり得る優良株は上場企業約3,600社の内、50社程度しか無いと私は考えており、対象企業がころころ変わることもありません。そのため、極めて学習効率が高いと言えます。地道な学習の積み重ねにより、着実に目利き力アップが期待できましょう。

続いて、小型株投資について考えていきましょう。約3,600社の上場企業の内、大手証券会社の調査対象は300社前後に過ぎません。そのため、大手証券の調査対象外となりがちな小型株には市場のコンセンサスというものがあまりなく、株価に織り込まれていない材料を見つけやすい、いわば「宝の山」です。小型株は流動性が低い点に注意を払う必要がありますが、個人投資家の皆さんは機関投資家ほど大規模に投資をされる訳ではありませんので、投資のフレキシビリティに優位性があると言えます。

長期投資にしても小型株投資にしても、銘柄を選ぶ作業は避けて通れません。次週からは、Longine(ロンジン)に所属するベテランアナリストが、各々の調査手法や考え方について、お伝えしていきますので、Longineのサイト)でご紹介している具体的な推奨銘柄とあわせて、参考にしていただければ幸いです。

執筆:株式会社ナビゲータープラットフォーム代表取締役 原田 慎司

原田 慎司(はらだ しんじ)氏
個人投資家向け投資アイデアサイト「Longine(ロンジン、http://www.longine.jp/)」の運営会社である、株式会社ナビゲータープラットフォーム代表取締役

経歴
一橋大学経済学部卒。
大和総研、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、ドイツ証券及びシティグループ証券で証券アナリスト、M&Aバンカーとして勤務。
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォームを設立し、Longine(ロンジン)の運営を開始。

掲載日:2013年11月28日
   
    

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