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【第4回】証券アナリストに必要とされる「パッション」と「ロジック」

 

 日本株は長い間低迷が続いていて、良いと思って推奨しても株価が上がらない、マクロ要因の影響が大きすぎて、個別株の説明をしても聞き入れられないといった経験を多くの証券アナリストが重ねる中で、パッションが失われ、当たり障りのないレポートばかりが発行される、あるいは、目立つことばかりを考えてロジカルな議論を疎かにし、株価の変動だけを見て投資判断の変更を繰り返すといった光景も見られます。個人投資家もパッションとロジックという切り口で、証券アナリストのレポートを選別する眼を持つべきだと考えます。

皆さんも「買い」推奨でありながら、そのレポートが発行された翌日の株価が下落すると、それだけで「役に立たないな」と思われたこともあるのではないでしょうか。実際、日々の株価は、様々な要因でランダムに動くのであり、証券アナリストといえど、明日の株価を当てるのは極めて困難です。しかし、アナリストが提示したシナリオに対して目先の株価が反対に動いたとしても、そこから一年後を見据えて、どのような投資行動をとるべきかの判断材料をパッションとロジックで説明しているレポートには、大きな投資機会が示唆されていることが少なくなくありませんので、目先の株価に惑わされずにメッセージを読み取ることをお薦めします。

証券アナリストにはパッションとロジックが求められると述べましたが、この二つを極めると思い込みによる投資判断の誤りを避けることができます。例えば日立製作所のように、事業範囲が広い企業を分析するためには、各セグメントを詳細に分析し業績予想を作成する労力、すなわちパッションが求められます。現在では、電機セクターの優等生として評価されている日立ですが、数年前までは、赤字事業が多かったため劣等生扱いをされていました。赤字続きの事業を惰性で予想しても、今の日立の変貌は予想できなかったと思います。

電機セクターは、"旬"な事業領域が数年おきに大きく変わる業界です。2000年前後では、IT分野はニューエコノミーで成長分野、重電分野はオールドエコノミーで成熟分野と評価されていましたので、重電分野が多い日立の評価は低く、富士通、NECが高評価を受けていました。2000年代半ばになると、薄型TVが成長分野として評価され、テレビの大型化で先行した企業が評価されました。日立はIT分野でもIBMからのHDD事業の買収で躓き、薄型TVでもプラズマ技術にこだわりすぎた結果、2000年代後半は苦戦が続いていました。あまりにも長期間にわたり業績が低迷していたため、「日立は変わらないし、変わる気もないはずだ」という気分が株式市場を支配していました。そうしたなかで、日本のエスタブリシュメントである経団連に所属する日立の経営陣が、他の経団連企業が業績を改善させているなかで一人、劣等生のままで耐えられるはずはないといった期待や、"旬"な領域は一定サイクルで変動するために、これからは社会インフラが"旬"になるはずだとサイクルを予想に取り入れることができた証券アナリストは底値圏で「買い推奨」に引き上げることができたと思います。証券アナリストの調査手法の基本は、パッションを失わずに発行体と向き合うことと、株式市場の気分に左右されないロジックを磨くことにあります。

執筆:株式会社ナビゲータープラットフォーム 和泉 美治

和泉 美治(いずみ よしはる)氏

経歴
22年間、外資系証券会社に所属したセルサイドアナリストとして、電機セクターを担当。
現在は、個人投資家向け投資アイデアサイト「Longine(ロンジン、http://www.longine.jp/)」を運営するナビゲータプラットフォームに所属するアナリストとして電機、情報通信、機械セクターの企業を中心に調査レポートを執筆中。

掲載日:2013年12月12日
   
    

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