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「イクメン」ブームを一過性で終わらせないために

知事や首長も育児休暇を取得する『イクメン』ブームである。

現在23歳になるわが家の長男の誕生時、育児休暇制度はなかったが、夫はわずか2週間ではあったが有給休暇を取り、おむつ替えや哺乳瓶での授乳、沐浴も行った。その結果、「育児はすごく楽しい。仕事を辞めて主夫してもいい」と言い、育児がいかに大変かを痛感したことで「パンをかじって昼休みも仕事をし、早く帰宅して家事・育児を手伝ってあげたい」と感じたという。

男性が育児に積極的に参加することは、育児の楽しさを存分に経験できることのほか、業務効率や生産性を考えることにもつながり、妻の就業継続を応援することにもなる。これは企業経営や社会全体にも好影響を与える。また、夫の家事育児時間が長いほど、第2子出生割合が多くなるので、出生率の向上にも関係してくる。

ある生命保険会社は先ごろ、子どもが生まれた男性職員全員に一週間程度の育児休暇を取得させることを明らかにした。これまで育児休暇制度があっても利用者が少なかったためだという。私自身は会社が後押ししないよりはマシだと感じたが、この話をデンマーク在住の友人やフランスで国際結婚をした友人に聞くと、「男性が育児をやるのは当たり前の事、会社が強制するなんてナンセンス」と笑われた。わが国では育児休暇は男女ともに取得できるものの、民間企業では女性の取得率が87.8%であるのに対し、男性の取得率は2.6%と低く、休暇の期間も5日未満が最多となるなど非常に短い。

これまで政府は2030年に男性の育児休暇を13%に上げることを目標に掲げ、父母がともに育児休暇を取る場合、1歳2か月まで育児休業取得可能期間の延長をするパパ・ママ育休プラスや、母親が専業主婦家庭でも育児休業を取得できるよう制度改正を行ってきたが、男性の育児休暇取得率の向上はあまり進んでいない。ノルウェーは100%、スウェーデンでは80%という育児休暇中の高い所得補償を背景に男性も積極的に育児休業をとる国と比べれば、日本はまだイクメン後進国である。

その理由としては人員に余裕がなく周囲に迷惑がかかるから、職場に理解がないといった項目常に挙がるが、このように制度が出来ても企業風土が変わらなければ実態は変わらない。さらに20年以上にわたった不況の中で、妻が育児のために仕事を休み、一方で賃金の高い男性が働き続けたほうが経済合理性に適ったからである。

育児にはいくつもの山があり、夜中の授乳から解放される生後三か月、離乳食が始まる半年以降、歩き始めて目が離せなくなる1歳前後、さらには幼稚園・保育園で流行性の病気をもらってくる小学校入学まで大変なことの連続で、両性の協力が不可欠である。しかし、育児時間を国際比較してみると、6歳未満の子どもをもつ夫の育児時間は、1日平均約30分程度しかなく、欧米諸国と比較して半分程度となっている。家事の時間を加えても、我が国の子育て期の夫の家事・育児にかける時間は1日平均1時間程度となっており、欧米諸国と比べて3分の1程度となるなど、男性の育児参加が進んでいないことがわかる。

 現在、「女性の育児休業3年」や「女性役員の登用」についての総理発言があるが、ブームになりはじめている「イクメン」を一過性で終わらせないために、もっと男性の意識・働き方改革にも着手してほしい。教育現場から、男性のほうに根強く残る「男性は仕事、女性は家庭」という固定的役割分担の意識を変えていくとともに、オランダのように子育ての一定期間、正社員から緩やかな働き方に変えられる制度、積み残した有給休暇を育児のために充当できること、病院への付き添いに便利な半日休暇、在宅勤務やワークシェアリング、フレックス勤務といった職場に長時間張り付かなくても仕事が出来る制度づくりとその定着、実効性について、各企業に公表を促し、さらなる自助努力を求めていくべきだ。

白石真澄(しらいし ますみ)プロフィール
過去コラム一覧

白石 真澄

関西大学教授

1987年 関西大学大学院修士課程 工学研究科 建築計画学専攻 修了

(株)西武百貨店、(株)ニッセイ基礎研究所 主任研究員を経て、2002年4月より東洋大学経済学部 社会経済システム学科教授

専門テーマは「バリアフリー」、「少子・高齢化と地域システム」

掲載日:2013年7月19日 

 
    

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