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日本の空を標榜するLCC スクーター感覚で

LCC国内線3社が、日本の空を舞い始めてから一年。それが初めての結婚記念日を迎えることなく、エアアジア・ジャパンがパートナーの全日空と、成田離婚してしまった。

なぜ成田離婚かといえば、成田空港特有の制限が大きな別れの要因となったからだ。香港・チェックラップコップ空港の倍はかかるとされた着陸料は、値段を下げる努力をした。LCC専用ターミナルの用地を確保して、国内線就航にあわせて暫定施設を急設もした。しかし騒音問題から発着時間枠に制限がある成田では、機材の多頻度運用ができず、収益確保につなげるのが難しい。本国マレーシアの英文ページに、すぐに移ってしまうエアアジア・ジャパンの予約サイトが、日本人には利用しづらいとの声もあった。気がつけば搭乗率は、5割台を標榜する日々が続いた。

エアアジアのCEOトニー・フェルナンデス氏と、全日空の経営陣との不仲説は、成田就航の直後から漏れ伝わっていた。全日空を筆頭株主に、初の国産LCCとして関空拠点に誕生したピーチはといえば、好対照に順調な滑り出しをみせ、間もなく成田へもやってくる。全日空は、素早い経営判断だったといえよう。とはいえ、ただでは転ばないのが新興航空会社だ。エアアジアが、今度は楽天トラベルを新たなパートナーに日本に再上陸するのでは、という情報まで飛び出したが、果たしてどうなることか。株主や投資家からすれば、目が離せない状況が、まだまだ続くであろう。

世界のLCCには、エアアジアや春秋航空のような新興航空会社だけでなく、ピーチのように大手航空会社が大株主、ないしは親会社の形態をもって、傘の下に創業させたケースが少なくない。韓国のジンエアーは大韓航空から、日本航空系といわれるジェットスター・ジャパンも本家本元は豪州・カンタス航空を親にもつといった具合で、いずこも時代の潮流にあわせて、路線ともども暖簾(のれん)分けしながら、生き残りをはかっているのである。

成田を拠点とするLCCで、好調なのがスクート(シンガポール航空100%子会社)だ。LCC元年と呼ばれた2012年の10月、先行して成田に就航したLCC国内線2社の華々しさとは若干違って、ひっそりと就航した。台北経由で、シンガポールと成田を、1日1往復で結ぶ。スクートは、台湾から日本へと遊びにくる人たちで満席が続くほか、台北(桃園)・シンガポール間も高い搭乗率をキープする。チャイナエアラインが安い運賃を出してはいるが、旺盛な台湾の人たちの旅行需要が追い風になっているのだ。シンガポール以遠のネットワークも拡充を始めている。チャンギ国際空港という、一大ハブ空港がベースという利点を活かす。

スクートのCEOキャンベル・ウィルソン氏は、かつてシンガポール航空日本支社長も務めた親日派だ。また、スクートの日本支社長・坪川成樹氏は、カナディアン航空を振り出しにノースウエスト、ヴァージンアトランティックを経て、エアアジアXの設立と羽田就航にたずさわった業界の異端児である。エアアジアのトニーへ、熱烈なメールを頻繁に送っていたというから、LCCに対する熱意と行動力は推してはかるべしだ。キャンベル氏の来日にあわせて、航空記者たちを招いて会食するというので向かった先が、居酒屋だった。ピッチャー入りのビールを注ぐキャンベル氏。ローコストを追求する姿勢が、ここにも如実に表れていた。

ちなみに、LCCスクートのコールサイン(管制官が上空などにいる民間航空機を呼ぶときに使用する呼称。航空会社の2レターコードとは異なる)は、スクーター。まるで原付バイクにまたがるように、気軽にLCCを利用するさまをイメージさせる。アジア大交流時代の一翼を担うLCCの、これからに期待したい。

 

画像提供:SCOOT


千葉 千枝子(ちば ちえこ)プロフィール
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千葉 千枝子

観光ジャーナリスト 横浜商科大学講師

中央大学卒業後、富士銀行に入行。シティバンクを経て、JTBに入社。96年有限会社千葉千枝子事務所を設立。運輸・観光全般に関する執筆、講演活動を行いラジオ、テレビにも多数出演。神奈川県観光審議会・沖縄県感動体験戦略検討委員会・釜石食ブランド開発検討協議会などの委員。日本観光研究学会、日本観光ホスピタリティ教育学会、日本旅行業女性の会、日本旅行作家協会会員。ファイナンシャルプランナー、総合旅行業務取扱管理者を有する。著書に「JTB 旅をみがく現場力」(東洋経済新報社)、「観光ビジネスの新潮流」(学芸出版社)など多数。

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掲載日:2013年8月10日

 
    

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