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QE3縮小は新しい時代の幕開けなのか

参院選の終わった日本では、消費税率引き上げの可否と、アベノミクス第三の矢である成長戦略の具体化が注目されている。一方、グローバルマーケットでは米国の量的緩和政策第三弾(QE3)縮小のタイミングが最大の関心事と言って良い。

焦点となるのは、米国経済がQE3縮小に適うかどうか、すなわちFRBの超緩和政策による金利の押し下げや株価の押し上げが無くても拡大基調を保てるかどうかということにかかっている。改めてQE1からQE3までの狙いを振り返れば、住宅バブル崩壊に伴って痛んだ金融機関や家計のバランスシートを改善させることだったと考えられる。特にQE3については、遅れていた家計のバランスシート改善に事実上狙いを定めたものだ。ホームエクイティローンなどで、割高な水準にあった住宅を担保に借り入れを増やしていた家計のバランスシートは、バブル崩壊による住宅価格の下落で一気に悪化した。QE3による低金利は家計の債務負担を軽減させるほか、住宅需要を喚起する。また、潤沢な資金供給は株価を押し上げ、資産面から家計のバランスシート改善を加速させる効果を持つ。

QE3縮小の話を持ち出せば、金利上昇、株価下落という形で市場に大きな反応が現れるリスクが高いことは、バーナンキFRB議長も重々承知していたはずだ。にもかかわらずQE3縮小の話が持ち出された背景には、バーナンキ議長なりにQE3を縮小しても米国経済の成長軌道は揺るがない、すなわち住宅バブル崩壊以来続いていた家計のバランスシート調整はほぼ完了し、再び消費主導の景気回復軌道を取り戻すとの自信があったとみるべきだろう。実際、家計が保有する資産に対する負債の割合は2000年代前半の住宅バブル発生直前の水準にまで低下しており、バランスシートが相当程度改善している姿が窺われる。消費者の景況感も、過去においては個人消費の加速によって消費主導の景気回復軌道に乗る水準にまで回復してきた。実際に、家計のバランスシート調整が完了し、消費主導の景気回復への回帰が実現するのであれば、米国を中心に世界経済は大きく変わってくるだろう。それは、米住宅バブルの崩壊以来失われていた、世界経済の推進力を取り戻すことを意味する。

市場に与える影響も、たとえば株式市場では流動性相場から業績相場へ移行する、といった単純なものにとどまらない。景気が自律回復軌道に乗ると言うことは、政策面でのフォローが必要ないと言うことになる。したがって、金融政策については超緩和政策から中立的な政策への「出口」が市場に様々な影響を及ぼす。一方、財政政策面では税収増による財政改善が進みやすくなる。日本や南欧諸国など、財政状況が悪化している国では財政改善のまたとないチャンスである。

当然のことながら、市場の動きは米住宅バブルが崩壊する以前の環境に戻っていくことになる。金利水準の修正に始まり、為替水準も大きく変わっていこう。株価は、新たなファンダメンタルズから求められる妥当な水準を模索することになる。株式市場にとって重要なことは、景気配慮型の政策が無くなることで、何でも買い、あるいは何でも売りという分かりやすい環境ではなくなり、実力に裏打ちされた成長期待が重要な牽引力になるということだ。政府は成長戦略としての産業政策が、企業はより高見を目指すための経営戦略が、そして投資家にはそれらを見極める力が、これから重視されることとなろう。

嶌峰 義清(しまみね よしきよ)プロフィール
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嶌峰 義清

株式会社第一生命経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト

1990年青山学院大学経済学部卒。同年岡三証券入社。岡三経済研究所、日本総合研究所を経て、1998年第一生命経済研究所入社。2011年より現職。日本経済、米国経済など各国経済担当を経て、現在は金融市場全般を担当。


掲載日:2013年8月5日

 
    

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