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フラッシュ・クラッシュ「症候群」

「フラッシュ・クラッシュ(瞬間的相場暴落)」とは、2010年5月6日に起きたNY株の暴落のことを指す言葉です。(May 6th 2010 Flash Crash)同日、NYダウ(ダウ工業株平均)は特に大きな材料もない中で1,000ドル規模の暴落を演じました。それも「わずか数分」の間の出来事でした。

原因については当初誤発注が引き起こしたのでは、等々いろいろな指摘があったのですが、その後の調査により次のようなメカニズムにより引き起こされたものであったと結論付けられているとのことです。

「あるミューチュアル・ファンド(米国の会社型投資信託)運用会社による約41億ドルの株価指数先物大口売り」⇒「先物価格の急落」⇒「買い方のポジション調整+裁定取引に伴う売り」⇒「現物価格の暴落』」

当時すでに市場で大きなシェアを占めていた「高速取引トレーダー(HFT)」たちが、相場の暴落を見て一時的に取引を控え、流動性が急減したことが相場の動きを荒くした。また、個別銘柄の値幅制限がなかったことも相場波乱に拍車を掛けたとも指摘されているそうです。(ちなみに、日本市場では個別銘柄の値幅制限がすでにありました。)市場の電子化・取引執行高速化、市場参加者のプログラム売買等々、手法が高度化・高速化して行く中で起きた出来事で、市場監督当局は調査・分析を行った後に制度上の対策を多く打ち出したとのことです。「フラッシュ・クラッシュ」から米国株式市場は「多くを学んだ」ということになるのでしょう。

米規制当局は大したものですが、一方で、私は「世界中の投機筋」も「多くのことを学んだ」という感じを持ちます。つまり、

1.相場では「リーダー」となって、「フォロアー」を従える形を作れば確実に利益を得ることができるが、「大量の先物売り」を使うことで「それを成功させることができる」。それも「大規模に」。

2.米国だけでなく(というより、米国は流動性も大きく、制度の進化もあるので難しくなるかもしれないが)、他の国の市場(株式市場だけでなく様々な市場)で、「同じやり口が通用するに違いない」。

で、「フラッシュ・クラッシュ」を成功させることができる市場がどこかにないか?と・・そして、日本の株式市場、為替市場。それらがこの観点から「極めて有望な市場である」という結論を出した、としても私は少しも驚きません。

今年5月初~23日前場までの異様な上昇相場の後、23日後場から大暴落となった日本株相場は、多くを学んだ投機筋たちが「研究の成果を遺憾なく発揮した場であった」という気がします。つまり、あの暴落は「フラッシュ・クラッシュ症候群」とも言うべきものだったよね、と・・。
「フラッシュ・クラッシュ症候群」は簡単に言えば「投機筋が先物主導で起こす暴落」ということになるわけですが、見るところ、日本の株式市場、為替市場は、(さらには、ひょっとするといずれ日本国債市場も)、「フラッシュ・クラッシュ症候群懸念がある」のかもしれませんね。日本の株式市場を見るのに「フラッシュ・クラッシュ症候群」などということを考えなければならないのは「買い方」にとっては厄介なことですが、売りも積極的に活用しよう、という向きからすれば機会の拡大かもしれません。(対ベンチマークで運用成果を向上させる手立てにも使えますよね。)

企業収益も向上しつつありますし、この夏場は株式相場は強調を保つのかもしれませんが、秋には(毎年のように秋に起きるのですが)相場の波乱があるかもしれません。波乱があるとすれば、おそらくそれは「フラッシュ・クラッシュ症候群」によるものになるに違いない、そんな風に思いますね。(持続的下落相場につながるものではない、という意味でもありますが。)私としては、この秋に相場の波乱があれば、またぞろ「秋に買って、(翌年の)春に売る」といった「気の抜けたサイダーのような」コメントを書くだろうと思いますね。

今年の秋は波乱がないかもしれません。私は波乱があることを前提に(と言いますか期待して)株式運用を考えようと思っていますから、もしなければがっかりで想定が外れることになるわけですが、私は外れたとしても少しも落胆しないだろうと思いますね。日本の株式市場、為替市場、さらには(おそらく)世界中の多くの「各種市場」がこの症候群に罹っているに違いないという見方は揺らぐことがないだろうと思うからです。

(ちなみに、「症候群」とは「根本となる一つの原因から生じる一連の症状」だそうです。「フラッシュ・クラッシュ症候群」の「根本となる一つの原因」は、「投機的な資金の増加=投機筋の勢力拡大」でしょうね、おそらく。)

松下 律(マツシタ リツ)プロフィール
過去コラム一覧

松下 律

証券アナリスト、社団法人日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

1976年慶應義塾大学工学部大学院修士課程修了
大学院修了後国内証券会社入社、証券アナリスト。その後国内投信委託会社、外資系信託銀行、外資系投信投資顧問会社で長年にわたりファンドマネジャー。
2000年以降は独立証券アナリストとして活動。インターネットを通じて個人投資家向けの情報発信している。

掲載日:2013年8月12日

 
    

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