株式・投資信託・ETF・退職・年金 投資に役立つ「ケイゾンマネー」

増減税スケジュールとマインドコントロール

既定路線として進行している増税。

国の債務残高が平成25年6月末で1,000兆円を突破し、現在は、復興増税・消費税増税を柱とした社会保障・税一体改革法、所得税相続税増税と、増税スケジュールのまっただ中を走ります。背中に火のついたカチカチ山のタヌキが、向こう岸に着く前に泥船が沈むが早いか、背中のタキギが燃えるのが早いかの時間競争のようです。

ところで、増税とはいっても、税制改正には、「しょうがないなあ」と、歓迎しないけれど認めざるをえないという国民のコンセンサス(合意)が得られなければなりません。これまでの税制改正を眺めますと、増税のプロセスとスケジュールについて、財務省の「工夫」が見られます。

今回は、その「工夫」を見ることで、改正内容も施行時期も、グチャグチャでわかりにくくなっている増税スケジュールを、ほんのちょっと読みやすくしてみましょう。

★  ★  ★

質問

将来相続税が増税になるそうですが、消費税は来年から増税、私の給与の源泉税は今年から増税になっています。税制改正のスケジュールが非常にわかりにくいのですが、なぜでしょうか。

回答

ご質問の通り、税制改正は、その年度の改正だけでなく、先々までの改正を盛り込むために、その実施時点が大変わかりにくくなっています。これは、制度化の準備のためだけではなく、増減税を国民に受け入れてもらうための配慮もあるようです。

★  ★  ★

 

1.大増税は数年前に決める

平成元年の3%での消費税創設後、平成9年の5%への増税は、平成6年に成立していました。平成6年に固定資産税の土地評価基準が改定、全国平均で従前の3.2倍となりましたが、この引き上げは平成3年の当時の自治省依命通達によります。平成27年以降の相続税や所得税の増税は、平成25年度改正で成立しました。

つまり、消費税や固定資産税、大衆化される相続税という国民生活に影響の大きな増税は、数年前に決めてしまいます。法制化時は、大変な議論が巻き起こり政権交代にさえなりますが、日本人の国民性か、いざ決まってしまうとその後は議論が一気に収縮します。そして増税が実施されて気づいたときは、もう法律になっていたとなります。

 

2.一部に関連する増税は1年前に決める

上場株式等の証券税制の10%軽減税率等の廃止、たばこ税増税などは、ちょっと前に決めます。つまり、一部の人だけに関連する増税は、施行日よりほんのちょっと前に設定するために、増税前の駈け込みを考えるようで、大反対に至らないのです。

 

3.罰則的な制度は直後施行

一部、罰則的な制度は、成立直後に施行します。平成25年4月からの相続税の海外財産課税などその代表でしょう。

 

4.減税は遡及適用

反対に、減税をするときは、すぐ実施するか、3月の国会成立でも、適用はその年1月からに遡ることで、減税をアピールします。

以上、税制改正についての財務省のスケジュールを横から見ると、改正をスムーズに進めるための、いわば国民へのマインドコントロールを図っているようです。みんなが反対すれば大反対するけれど、自分だけはトクしたい、嫌なことはすぐ忘れ、いったん決められたことには従う、という国民性を、財務省のお役人は見抜いているのでしょうか。

いつ、何の税金が、どれだけ変わるのか、税の専門家でも混乱を起こしかねない現在の増税スケジュールを、こんな法則から見てみると、少しわかりやすいかもしれません。


飯塚 美幸(いいづか みゆき)プロフィール

過去コラム一覧


税理士・中小企業診断士
静岡大学人文学部卒業
平成7年 飯塚美幸税理士事務所開業
平成25年 松木飯塚税理士法人設立、現職
事業承継協議会会員、千代田区議会政務調査諮問委員
不動産コンサルティング登録技能士試験委員、日本税務会計学会委員

著書: 
「各年度版よくわかる税制改正と実務の徹底対策」(日本法令)、「財産を殖やすための相続対策プログラム」(日本法令)、「税制改正と資産税の実務Q&A」(清文社)、「最新相続税の物納実務取扱事例Q&A」(日本法令)、「新版『資本の部』の実務」、(新日本法規出版)

掲載日:2013年8月19日

 
    

特集

「証券アナリストの調査手法とこだわり」(全6回)

「証券アナリストの調査手法とこだわり」

証券アナリストの行動パターンをご紹介!個人投資家のリスク回避術を学ぼう。

特集を読む »

おもしろ企業探検隊

おもしろ企業探検隊

平林亮子&内田まさみの「そうだ!社長に会いに行こう」ナブテスコ株式会社

特集を読む »