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2020年東京五輪開催決定で 期待される日本の観光産業

2020年夏季五輪東京開催決定を、心から悦んでいる。

発表から一夜明けた月曜日、建設や不動産、運輸、ホテル・旅行、外食産業など五輪に関連する幅広い銘柄に注目が集まり、株価は上昇、街は明るいムードに包まれた。いわずもがな五輪は、ツーリズムと深い仲にある。国際スポーツの最高峰である五輪の招致を決めたことで、観光立国も現実味を帯びてきた。

日本で初めて観光にまつわる法律・観光基本法ができたのは、1963年のことである。その前年には、首都高の一部区間が開通、ホテルオークラが誕生した。昭和五輪が開催された1964年には、日本初の新幹線・東海道新幹線が開業。ホテルニューオータニがオープンしたのもこの年で、帝国ホテル(1890年)を筆頭に、ホテル御三家がそろい踏みした。さらに、それまで公用でしか認められなかった渡航が自由化されて、誰もが海外へ旅ができる時代を迎える。翌年の1965年には、日本初のパッケージツアー商品・ジャルパックが誕生した。堰を切るように、観光インフラが整ったころだ。 やがて大阪万国博覧会が開幕(1970年)したことで、爆発的な国内旅行ブームが訪れる。同年、ジャンボジェット機が就航して大量輸送時代が幕開けた。1ドル360円の固定相場制から、変動相場制へと移行(1971年)したことで、渡航者増に弾みがついた。日本は戦後の復興から高度経済成長期を迎え、それまで暮らしのなかになかった旅やレジャーが、中流家庭にも入り込んだ時期である。モータリゼーションの波が訪れるや、マイカー族も観光地をめざすようになった。それを観光学では、「昭和の大旅行時代」と呼んでいる。

今、私たちは成熟のただなかにある。東京招致のためのIOCプレゼンテーションで、さかんに叫ばれたレガシィ(遺産、受け継いだもの)という言葉が印象的だった。次の五輪でわれわれが世界に示すのは、"ハード"や"モノ"だけでない。"ソフト"や"コト"、おもてなしの心や、きめ細かなサービス、感動体験といった日本らしさが求められている。 それらをつかさどるのは、ヒトである。

私ごとだが、昭和の東京五輪の年に両親が結婚して、その翌年に生まれた。だから「自分が生あるうちに」と、日本開催を切望していた。きっと、そうした想いの人は多かったに違いない。また、子や孫に夢と希望を与えることができたと、喜んだ人も多かったはずだ。若い世代に明るい未来を指し示すことは、私たち大人の責務でもある。大学教育の現場では今、グローバル人材育成が大きな課題になっている。ホテル業界では、人材教育に重きを置くところが業績を伸ばしている。人財もまた、確かなレガシィといえるだろう。

今世紀、スポーツは体育という概念を超えて、私たちのライフスタイルに根づきをみせた。スポーツは、教育のみの傘下にあればスポーツビジネスは大成しづらい。しかしながら商業主義に陥ると、健全な精神の育成、発達に支障をきたす。そこで近年では、学校体育以外のスポーツと観光を、一つの部署で推進する自治体も増えている。ご当地マラソンが大流行りなのも、スポーツツーリズムという新たな潮流によるものだ。また近年、五輪をMICE(国際会議などの総称造語。マイス)の一つ、スポーツイベントとして捉える向きもある。ミーティングやレセプションが伴ううえ、通訳士などの確保も必要だ。コンベンション専門の会社や輸送手配も可能な旅行会社が、横断的に手を組んで、2020年の五輪を成功に導くであろう。

アベノミクス第3の矢・成長戦略に観光が掲げられた。訪日外国人客最終目標の3,000万人を、五輪が確かなものとするに違いない。しかし、空港容量やCIQ(税関・出入口管理・検疫)係官の増強、通訳案内士(ガイド)の確保、城郭や公園をガラディナーなどのベニュー(会場)にするための規制緩和など、法改正も含めた整備が急がれる。ホテルや外食産業では、食などに戒律が厳しいイスラム圏の人たちへの対応も大きな課題になっている。


 

千葉 千枝子(ちば ちえこ)プロフィール
過去コラム一覧

観光ジャーナリスト 横浜商科大学講師

中央大学卒業後、富士銀行に入行。シティバンクを経て、JTBに入社。96年有限会社千葉千枝子事務所を設立。運輸・観光全般に関する執筆、講演活動を行いラジオ、テレビにも多数出演。神奈川県観光審議会・沖縄県感動体験戦略検討委員会・釜石食ブランド開発検討協議会などの委員。日本観光研究学会、日本観光ホスピタリティ教育学会、日本旅行業女性の会、日本旅行作家協会会員。ファイナンシャルプランナー、総合旅行業務取扱管理者を有する。著書に「JTB 旅をみがく現場力」(東洋経済新報社)、「観光ビジネスの新潮流」(学芸出版社)など多数。

ブログ(毎日更新)「旅のエクセレンス」
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掲載日:2013年9月21日

 
    

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