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コーポレート・ガバナンス

会社(企業)経営は「健全」で「効率的」で「透明」であるべきだ、と言われたとして、「それは違う」と応える経営者はまずいないだろうと思います。(ブラック企業の経営トップは何と言うか知りませんが。)

いわずもがな、ではありますが、「健全性」とは会社の運営において法令違反や妥当な慣習からの大きな逸脱がないこと、顧客や取引先との関係が良好なこと、従業員の扱いがまともであること、セクハラ・パワハラなどがないこと、などのことですし、「効率的」とは、会社経営が株主価値向上を目指して計画的に行われて十分な成果をあげることです。「透明」とは、必要十分で嘘のない情報開示を会社がタイムリーに行うこと、でしょうね。

コーポレート・ガバナンスという言葉は捉えどころがないのですが、コーポレート・ガバナンスの目指すところは、まさに「健全」で「効率的」で「透明」な会社経営である、と言うことは可能のように思われます。
としますと、(ブラック企業の経営者は別として)ふつうの日本の経営者はみな「健全」で「効率的」で「透明」な経営を目指すべきであることに同意しているわけでしょうから、日本ではコーポレート・ガバナンスに関しては何の問題もないはず、となるのではないか?・・・と。
会社には多くの「利害関係者=ステークホルダー」がいて、それぞれが思い描く「健全性」、「効率性」、「透明性」は異なっています。(私は、株主をステークホルダーの範疇に入れることに強い抵抗を感じます。株主はステークホルダーではなくシェアホルダーでしょ?と素直に思うのです。しかし、100歩か1000歩譲って、ここでは株主をステークホルダーの一員ということにしておきます。)

他のステークホルダーがどう感じるか知りませんが、「会社のステークホルダーの一人」である「株主(潜在的な株主である投資家を含むこととします)」からしますと、日本のコーポレート・ガバナンスは(おそらく)「大問題」を抱えているとなるのではないか、という感覚を私は持ちます。
「効率性」が大問題で、おそらく多くの株主は投資先の会社経営を効率性の観点からして「話にならない」と感じているのではないか、と思います。(「健全性」については、一部のひどい会社を除けば、わが国の上場会社はそれなりの立派なものでしょう。「透明性」については、問題はいろいろありそうですが決定的に駄目ということはないのでは、と思いますね。)

「効率性」を何で測るか?はなかなか難しいのですが、証券アナリストやファンドマネジャーのように企業経営の細部にまで立ち入って分析すべき立場(彼らはおそらく資本効率について詳細に分析すると思います)でないとすれば、例えば「ROE(自己資本利益率)」で十分でしょう。(市場で自由に売買できるという立場の個人投資家を想定すれば、投資先企業が一時的な落ち込みは除いて、おおむね10%以上のROEを達成し続けてくれるのであれば長期保有しやすいのだが、という気持ちを持つはずだと私は思います。ROEがその水準であれば、少なくともPBRが1倍を割り込み続ける、などという情けないことにはならない=PBRが小さくなればその株は割安と判断していいことになるから買ってみようと思える、のですし、PERが10倍割れ、などという状態になればやはり割安と確信しやすくなるでしょうから。)

不思議なことは、「効率性」について、さまざまなところで「散々」言われ続けているにもかかわらず、日本企業のROEが持続的に高まる「雰囲気」があまりないことです。経営者にそういう意思があるかどうか?株主・投資家から見てどうもよく分からないように思えるのです。(甚だしきは、高いROEを求める株主の要求が日本経済にデフレをもたらした、などという論者の本が評判になったりする・・・まるで出来の悪い中学生が「勉強しろ、勉強しろと言うからやる気なくなって成績も落ちた」と言っているような・・・もちろん景気が上向けば、「結果として」企業のROEは高まるのでしょうが。)

次の国会で会社法が改正されることになっています。今回の改正の目的に関する識者のコメントなどを読みますと、(法令順守よりも)日本企業の経営の「効率性」向上に資する会社経営のあり方(取締役会のあり方等)への期待が強く表明されていて驚くほどです。(グローバルな競争に勝つ、という意識があれば企業経営の効率性向上は当然のことですね。)あるいは、東証が掲げるコーポレート・ガバナンス原則では、「およそ上場会社の企業活動は、収益を上げ、株主にとっての企業価値を高めることを主要な目的として行われる」とはっきり書いています。それにもかかわらず・・・・

日本の企業経営者の「効率性」に対する考え方が株主(及び潜在的株主である投資家)の求めるものとずれている、株主のメッセージがうまく伝わっていないのでは、と思わせる状況があるように思いますね。
その会社の経営に不満なら持ち株を売ればいい、というのであれば問題視すべきでない、のかもしれません。(市場で株が売られれば、株価の下落という市場からの圧力で自ずから企業は効率向上に努めるはず、といった見方もできなくはありません。)しかし、効率性から見て気に入らないからと日本株を売っていると、今の日本には買う株がなくなってしまうのでは、という気もします。(優秀な企業が一部にはあるのでしょうが。)

どうなればいいのか?難しいのですが、私は個人株主が経営者に対してある種のプレッシャーを掛ける、ということができれば、それがけっこう威力を発揮するのではないか、と実は思っています。(来年以降、NISAを使って株主になる個人が増えるでしょうし。)

で、具体的にどうするか?ですが、それは次回書くことにします。(今回は紙幅が尽きました。)具体策のヒント:それは「監査役とのコミュニケーションに株主がもっと注目する」ことです。)

松下 律(まつした りつ)プロフィール
過去コラム一覧

証券アナリスト、社団法人日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

1976年慶應義塾大学工学部大学院修士課程修了
大学院修了後国内証券会社入社、証券アナリスト。その後国内投信委託会社、外資系信託銀行、外資系投信投資顧問会社で長年にわたりファンドマネジャー。
2000年以降は独立証券アナリストとして活動。インターネットを通じて個人投資家向けの情報発信している。

掲載日:2013年9月9日

 
    

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