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なんでそうなるのかな?

8月30日に金融庁が行った「平成26年度税制改正要望」の内容を見て驚いた。

この要望には「金融所得課税の一体化」が盛り込まれているが、現状の損益通算のできる範囲である上場株式・公募株式投資信託に、デリバティブ取引や預貯金を加えてその範囲を拡大することを目的とした内容となっている。この事だけを見ると、「お! いいじゃん! 金融庁わかってるねぇ~!」と思ってしまうのだが、実はそうではなかった。と言うのも、このデリバティブ取引は、(金利・通貨)スワップ、オプション、先物取引、外国為替証拠金(FX)取引などがそれにあたるのだが、金融庁はこれら取引の中で取引所取引と店頭取引にわかれている商品に限っては、(総合)取引所に係る取引に関して早期実現することを求めているのだ。

この内容を見たときには、我が目を疑った。

ご存知の方もいるかもしれないが、外国為替証拠金(FX)取引は、取引所取引(東京金融取引所:くりっく365)と店頭取引の二種類の商品が存在しており、以前は取引所取引による利益に対しては20%の分離課税であった事に対して、店頭取引による利益に関しては総合課税で、同じ外国為替証拠金(FX)取引なのに税制がダブルスタンダードとなっていたが、これが昨年(2012年)1月からすべて分離課税に統一されたばかりである。それなのに、舌の根も乾かぬうちに再び両者の間に税制面での優劣をつけようというのだろうか?

正直な所、何をやっているのかと開いた口がふさがらない。

金融庁の資料には、「金融所得課税の一体化」の狙い(目的)として、『家計の資産形成の支援と成長資金の供給拡大のため』と謳われているが、ダブルスタンダードの状況を作り出すことがはたしてその狙い(目的)に合致すると考えているのだろうか、はなはだ疑問である。資料には、アメリカ・イギリス・フランス・ドイツと言った国の税制と比較した一覧表が掲載されており、その中で注意書きとしてアメリカの店頭デリバティブやフランスの海外デリバティブは通算が不可であると記載されており、本邦の「課税の一体化」において総合取引所に係る取引を先行して改定することは、国際的にもおかしくはないかのように書かれてはいる。

とは言え、あくまでもそれは国際的な比較であって、国内においては市場が違えど同一商品で発生した利益に対する課税方法を一本化したばかりで、その意義・効果をじっくりと見極めるべきであると思うのだが。

先の課税方法一本化によって、外国為替証拠金(FX)取引では店頭取引の取引高の伸びが顕著だった一方で、税収はそれほど伸びていなかったという話も聞く。しかしそれは、あくまでも利益の伸びが伴わなかっただけではないのだろうか?それが理由とは考えたくはないが、消費税増税・財政再建を目指すこの国の現状を考えると、そのように勘ぐりたくなるし、それが『家計の資産形成の支援』に役立つとは思えない。

それに・・・

為替界の重鎮を筆頭に、ディーラー出身の国会議員や各業者がとてつもない苦労をしてようやくこぎつけたこの税制一本化を、こんなにも早くに反故にされるのを見るのは忍びないと、為替界の末席を汚しながらも活動いている筆者でも感じてしまうのだから、その当時に大変な労力を払ってご尽力なされた方々の胸中を察するに余りあると感じた次第である・・・

鈴木 隆一(すずき りゅういち)氏プロフィール


1965年 生まれ 立教大学理学部物理学科卒
1990年? 大和證券株式会社に入社、支店営業を経た後為替ディーラー業務に従事。証券売買に付随する為替取引のカバーや自己資金の為替運用のほか、為替オプション・外債・金利先物・金利スワップ等、あらゆる金融商品を駆使して運用を行う。大和証券分社時には、為替部門の立上げを行ったのちチーフディーラーに就任。
2000年? 同社を退社。退社後は、投資教育会社やFX業者数社の立上に参加、その後独立してプライベートファンド運用・為替情報提供会社である株式会社ワムを設立、代表取締役に就任。

その他、テクニカル分析およびシステムトレードの技術開発および情報配信に特化した有限会社ガンパウダーの代表取締役も勤め、2006年には同社の株式会社化とともに株式会社ワムを完全子会社化し、以降は外国為替の総合情報サービスを行いながら全国で投資家育成教育を行っている。

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掲載日:2013年9月10日

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