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羽田の国際化を国益の観点から考える

2020年オリンピック、東京に勝利の女神がほほ笑んだ。

東京は治安も良く、他の候補都市に比べ、コンパクトな都市構造で、かつ世界屈指の近代的かつ効率的な公共交通機関があるという長所もIOCに評価された。オリンピックの経済効果を東京だけで終わらせるのではなく、世界のアスリートや観光客が集まる好機を活かし、競技の後は地方の美しい景観や自然、温泉を満喫してもらい、地方にも経済効果が波及するような受け入れ態勢をじっくりと検討してほしい。
オリンピックならずとも、旅客利便性を考慮し、都心からのアクセスや、国際、国内の乗り継ぎネットワークを容易にする大規模ハブ空港を世界の国々は実現し、経済的優位性を確立している。

アトランタやシカゴ・オヘア、ロンドン・ヒースローと言った旅客規模で他を圧倒している欧米の空港はもちろんのこと、アジアのシンガポールのチャンギ空港、韓国・仁川空港も同様である。成田から国内就航都市は15都市であるが、仁川は新千歳から那覇まで我が国の24都市と結ばれており、地方からは成田ではなく仁川を経由するほうが便利になっている。空港が各国の経済活動を支える重要な要素になっていると言っても過言ではない。

わが国はこれまで長く成田は国際、羽田は国内という棲み分けがなされてきたが、2010年10月に羽田が再国際化された。成田・羽田という2つの首都圏空港で、羽田空港は都心に近いため成田に比べて空港までのアクセス時間・費用において有利な地域が多い。羽田空港は出入国審査手続きの対応や、手荷物配送の迅速さ・効率さでも高い評価を得ており、「世界最高の国内線空港(World's Best Domestic Airport)」部門と、空港の清潔さや快適さを評価する「世界で最も清潔な空港(World's Best Airport Cleanliness)」部門で1位を獲得し、国内線旅客数も世界第3位である。
こうした羽田空港からの国際線が充実すれば、都心から海外に出やすくなるし、海外からの訪日旅客の増加も期待できる。現在、羽田空港は19路線55往復の国際線が運航され、既存の地方路線との乗り継ぎも容易である。

一方で問題もある。羽田の国際線を見ると、昼の時間帯は韓国、中国、台湾、香港の6路線32往復に限られ、欧米や東南アジアといった長距離路線は深夜・早朝時間帯に運航され、羽田までのアクセスを考えると公共交通機関のない時間帯で旅客の利便性は悪い。24時間空港では、空港までの公共交通のアクセスも同様に24時間化されるべきで、官民で取り組む課題である。

今後、羽田空港では2014年3月から昼間の時間帯に40往復の路線が増え、ロンドンなど長距離路線も日中に飛ぶことができ、さらに便利になる。

羽田空港からの国際線就航は、わが国が勝手に決められるのではなく、国土交通省航空局が相手国と交渉・合意を経て、二国間の航空協定を締結した国とのみ、就航が可能になる。2013年8月時点で英国、フランス、中国、シンガポール、タイ、ベトナムなど合計26往復はすでに決定し、残る13往復分が交渉のテーブルに乗る予定で、今後は羽田から就航地がさらに増える。今後、発着枠は無尽蔵に増やせるわけではなく、現行の滑走路の本数や空域を考えれば、就航地や便数にも限りがある。
羽田の国際枠の拡張は単なる枠配分の問題ではなく、「国益」、つまり、日本全体のグローバル化、経済効果、利用者満足度の観点で捉えるべきである。東京以外の地方にも観光やビジネス交流でどのような恩恵をもたらすのか、また日本の各航空会社や各航空会社が属するアライアンスグループで、健全かつフェアな競争を行うことで魅力あるサービスや価格面で利用者にメリットをもたらすことができるのか、などである。すでに国内線-国際線の接続では航空会社が乗り継ぎ用特別運賃を設定しており、切磋琢磨することでサービス・価格競争が進む。

安倍政権の重点テーマでもある「世界を惹きつける地域資源で稼ぐ地域社会の実現」にも羽田空港の国際化が大きなインパクトをもたらし、起爆剤にもなる。


白石 真澄(しらいし ますみ)プロフィール
過去コラム一覧


関西大学教授

1987年 関西大学大学院修士課程 工学研究科 建築計画学専攻 修了
(株)西武百貨店、(株)ニッセイ基礎研究所 主任研究員を経て、2002年4月より東洋大学経済学部 社会経済システム学科教授

専門テーマは「バリアフリー」、「少子・高齢化と地域システム」

掲載日:2013年9月11日 

 
    

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