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日本の仕事の生産性を上げよう

日本はGDP(国内総生産)ベースで世界第3位の経済大国でありながら、仕事の効率(=労働生産性)が国際的にみても非常に悪い国である。

「就業者1人当たり」の労働生産性は主要先進7カ国(日本・英国・米国・フランス・ドイツ・イタリア・カナダ)で最下位(2011年)だ。これは驚くことに1994年から17年連続で最下位を記録し、先進国クラブとも呼ばれるOECD(経済協力開発機構)加盟国の中でも34カ国中19位である。(ちなみに日本が10位台に入ったのは1996年以来15年ぶり。)そして、財政破たんが世界中の話題とリスクになっているギリシャが20位で、なんと日本とほぼ同水準だという。

また、労働生産性を「1人当たり」だけでなく、「就業1時間当たり」で見てみると、日本はOECD加盟国34カ国中同じく19位である。これがどのくらいのレベル感かと言えば、主要7カ国で一番労働生産性の高いアメリカの概ね70%の水準だ。例えて言うならば、「日本が1日8時間かかって出す仕事の成果を、アメリカは1日5.6時間で達成してしまう」わけである。日本最大級のファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイ社が、2012年5月から「1日6時間労働制」をスタートして話題になっているが、国際的に考えてみれば、これはあながち不自然な制度ではないと言える。

その一方で、明るい兆しもある。日本における直近5年間の時間当たり実質労働生産性の上昇率は+1.8%と主要先進7カ国で最も高く、OECD加盟34カ国中でも第7位となった。これは、日本の労働時間が短縮し、時間当たりでみた生産性の上昇に寄与したことを意味している。少子高齢化が世界で最も進む「課題先進国」の日本にとって、生産性を更に上げて、国際競争から見ても仕事の効率が高い国になっていくことが非常に重要だ。

では、そのための処方箋は何か。やれることは数多くあるが、私が提起したいのは、単に「残業を抑制する」という対策だけではなく、「従業員が仕事に専念し、業績を上げるための支援に行政・企業がもっと戦略的に投資をしていくこと」を推進していく考え方への転換だ。こうした支援は、もはや「コスト」ではなく「必須の投資」である。

ここで、労働生産性の高いアメリカの成功事例ともいえる仕組みについて言及したい。アメリカを中心としたグローバル企業は、「EAP(従業員支援プログラム)」を、日本でいうところの福利厚生やメンタルヘルス対策よりも広い概念で捉えており、「従業員のワーク・ライフ・バランスを支援するプログラム」として力を入れているのだ。「従業員が仕事に集中できるように、個人的な問題にもあまり時間を費やさないで済むようなソリューションを提供して企業が従業員をサポートする」という考え方の基に、職場の問題に関する相談だけではなく、育児や介護などの家庭における従業員の課題に対しても相談を受け、情報提供やコーチングを行っている。さらには子供の教育に関する情報提供、金銭の問題など、自分一人で働きながら問題解決するには時間と労力がかかり過ぎるテーマについて解決支援をする仕組みになっている。

こういった仕組みを戦略的に活用している企業で働くのと、仕事と生活の両課題を個人任せにしておきながら、ただ残業だけを抑制する、といったジレンマを課すような企業で働くのとでは、実際の仕事のクオリティや成果に大きな差が出ることは想像に難しくない。さらに付け加えると、アメリカではこうした制度の充実度合いが、質の高い従業員を雇用し続けられるかどうかのツールの一つにもなっている。今後の日本企業の従業員支援に対する意識改革と具体的な取り組みをさらに期待したいと思う。

 

荻原 国啓(おぎわら くにひろ)プロフィール
過去コラム一覧


ピースマインド・イープ株式会社代表取締役社長

慶應義塾大学経済学部卒。在学中より人事コンサルティング会社新規事業開発や、新卒人材紹介事業等、人事マネジメント分野に従事後、(株)ピースマインド代表取締役社長(1998年創業~2011年3月)を経て現職。

日本国内最大規模のEAP(従業員支援プログラム)提供企業としてEAPやメンタルヘルス支援など、心理学・行動科学の専門性を活かした人と組織に関わる支援とコンサルティングを550以上の組織に展開。精神保健福祉士・産業カウンセラー・心理相談員。日本の起業家を世界に輩出する唯一の世界的起業家表彰制度EOYjapan2008セミファイナリスト。日本の次世代若手ベンチャー起業家を称える表彰制度DREAM GATE AWARD2008受賞。『クリックからはじめる自殺予防支援』代表世話人。

専門分野は人事・組織マネジメント、人材開発、EAP(従業員支援プログラム)、ストレスマネジメント、メンタルヘルス、震災ケア、レジリエンス、クライシスケア、ソーシャルビジネス等。

掲載日:2013年9月25日

 
    

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