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2020年の屈折

2020年にオリンピックが東京で開催されることになった。

早朝の開催決定をTVを通じて多くの方が歓喜を持ってご覧になったことだろう。しかし、その歓喜のシーンを何度も報道されるにつれて、「嬉しいことでもあるが、それまでに解決しなければならない課題も多いな」とちょっと覚めた目でみている自分がいることにも気がついた。「屈折した見方」だろうか。その後の報道でも福島原発問題、東京のインフラ整備などそうした課題をあげているが、もうひとつ、「2020年には自分は61歳になるんだ」という妙なリアリティが覚めた頭に残っているようにも思う。オリンピックが待ち遠しいという感じと、「えっ、その時には61歳か」という愕然とした思いと。

2020年の日本の人口構造は65歳以上が3612.4万人、人口の29.1%に達すると見込まれている。年金問題が喧しかった2010年くらいには65歳以上人口は2948.4万人で人口の23.0%だった。団塊世代が65歳になることで、65歳以上人口比率、いわゆる高齢化比率はこの10年で急速に上昇することがわかる。

2020年になるともうひとつ人口構造上、歴然と判明することがある。それはその後に65歳以上の高齢者数が増えないで、3,600-3,800万人で高止まりすることだ。にもかかわらず高齢化率は上昇を続け、2060年には39.9%に達する見通しだ。それは現役世代の人数が急速に減少し、総人口が減り続け、高齢化よりも少子化の影響が顕在化することを意味している。現役世代である20歳以上64歳以下の人口は、2010年には7,564.2万人、2020年には6,783.0万人 そして2060年には4,105.0万人になると見込まれているのだ。50年間で3,400万人の減少。もちろん、19歳以下も2010年の2,293.2万人から2060年には半減の1,104.5万人になる。

2020年は日本の人口のトレンドのなかでも大きな屈折点だといよう。高齢者の増加が止まり、現役世代の減少が大きく顕在化する。これが2020年の屈折だ。そう、言い換えれば、「少子高齢化」ではなく、顕在化する順番でいけば「高齢少子化」だ。

今の現役世代は、団塊世代が作り出した大きな人口のうねりの影響を好むと好まざるとにかかわらず受けざるを得ない。次の東京オリンピック以降、少子化の中で支えられる側の存在へと変わっていく。頼られる側の現役世代が大幅に減少する中で、今の現役世代が頼る側の世代になるという現実を、明確に持つ必要があろう。現在の55歳が65歳になるのは2023年、50歳は2028年。今、何をすべきか。何をしなければならないか。ちょうどいい7年後のオリンピックという節目をメドにして、動き出したいところだ。

退職後の資産準備といえば資産運用と考えがちだが、まずはどんな生活を送りたいか、どこで生活したいかを考えることが先にあるべきだ。そのうえで、どれくらいの資金を用意すべきか、いつまでに用意すべきか、どう用意するのがいいのか、を考えるべきだろう。

東京オリンピックは東京への一極集中を見直すチャンスにならないか。消費者物価地域差指数をみると、東京都区内の消費者物価を100とすると地方の県庁所在地でも90くらいの都市はいっぱいある。そうした地方都市でなら、決して生活水準を引き下げないで生活"費"水準だけを下げる暮らせるはずだ。地方都市移住のいいきっかけになるといいのだが。

 

野尻 哲史(のじり さとし)プロフィール
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フィデリティ投信 フィデリティ退職・投資教育研究所所長

一橋大学卒業後、内外の証券会社調査部を経て、2006年からフィデリティ投信株式会社 フィデリティ退職・投資教育研究所所長。大規模なアンケート調査をもとに投資家への提言をするなど、投資教育に従事。

退職金は何もしないと消えていく」(2008年) 、「老後難民 50代夫婦の生き残り策」(2010年)、「40代のサイフ」(宝島社、2012年)、「50歳から始めるお金の話」(2013年2月、小学館文庫)など著書も多数。

現在、日本アナリスト協会検定会員、日本FP学会、日本証券経済学会、行動経済学会などの会員。

 

掲載日:2013年9月26日

 
    

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