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「Flash TradeとBuy & Forget」

米国の金融政策の大きな転機になると市場が見ていた2013年9月のFOMC(連邦公開市場委員会)。

現地時間の9月18日14時に発表された声明文の内容は、毎月総額850億ドル(約8兆5,000億円)の資産買い取りは変更されることなく継続となりサプライズとなった。縮小を織り込んで事前に売られていた金は、NYコメックス(先物取引所)の時間外の電子取引の時間帯に発表を受け60ドル超の急騰となった。ところが発表直後に同じ電子取引(Globex)で運営されているシカゴ市場で出された大量の買い注文が、NY市場の注文より早かったということで、情報の事前漏えいがあったのではとの疑いが持ち上がった。

約3年半前の2010年5月のNY証券取引所で、わずか数分でダウ工業株30種平均株価が1,000ドル近く暴落するということがあった。当初は何が起きたかわからず、大きな誤発注(Fat finger・・・・キーボードの操作ミス)が原因とされたが、後に高速取引により大量の売り注文が瞬時に出され、その結果買い注文が軒並みさらわれるようなかたちで暴落が起きたことが判明した。この時からファンドの高速取引(Flash Trade、フラッシュ・トレード)の存在が広く知られるようになった。高頻度取引(HFT)と呼ばれることが多いが、株式でも金でもファンドは今や事前に組まれたコンピューターシステムに沿って判断を下し、1000分の1秒(ミリ秒)単位で売買を繰り返している。もちろん注文を受ける方の取引所も処理能力を上げるためにシステム投資を進め、これらの注文に対応する受け皿になっている。受けられなければ注文は他の市場に行ってしまいその取引所は廃れることになる。当然ながら東京証券取引所も東京商品取引所も対応済みだが、瞬時に大量の売買注文が出されることから、時に取引所側のシステムが混乱する事例も見られている。

市場の攪乱要因とする見方から、流動性を提供する大切な市場参加者という見方まで賛否が分かれ、そのまま今日に至っている状況だ。

本題に戻ると今回の問題は、FOMCが開かれたワシントンからの距離を踏まえると、シカゴに情報が伝わるのに1,000分の7秒すなわち7ミリ秒かかるのだという。距離的に近いニューヨークは2~3ミリ秒で届くためそれだけ早く情報が入手されるという。しかるに当日の取引では、声明文発表後シカゴの方がニューヨークより5~7ミリ秒早く取引が活発化したとされ、そのためにはシカゴのトレーダーに発表時刻の午後2時より前に情報が伝わっている必要があるとシカゴの「Nanex」という調査会社が指摘した。それを米経済チャンネルCNBCが報じ、FRBが調査に乗り出したというものだ。

FRBは発表時間直前にFOMCの声明文を報道機関に配布するが、厳格に解禁時間を定めており手続きは遵守されているとした。ならばフライングは通信社ということになるが、あるいはシカゴ筋が先進的なシステムを使い始めたということか。果たしてどうなるか調査の結果待ちとなっている。

いずれにしても個人投資家には次元の違う世界の話だが、情報システムの高度化の中でこれほどまでして"儲け"を追求する現状は呆れるばかりか滑稽でもある。個人が立ち向かうには動物的な勘とひらめき、さらに幸運が必要だが、そんなものは常時発揮できない。金のフラッシュ・トレードなるものの実態は、金は要らないが"金価格が欲しい"というもの。一方で、金市場には宗教的ないわれや生活慣習の中で育まれた金現物を求める動きがあり、インドや中国の需要はその代表例となっている。こちらは金価格ではなく、まずは金そのものが欲しい人たちである。米雇用統計などの経済指標の発表に乗じ一儲けなどと考えず、金投資も腰を据えてやったほうがいいだろう。"Buy and Forget"が金投資の王道とされる。


亀井 幸一郎(かめい こういちろう)プロフィール
過去コラム一覧


生活設計塾クルー取締役

マーケット・ストラテジィ・インスティチュート代表取締役
金融・貴金属アナリスト

中央大学法学部卒業。
山一証券に8年間勤務後、日本初のFP会社で投資顧問会社マネー・マネジメント・インスティチュー
ト(MMI)入社。
1992年世界的な金の広報・調査機関ワールド ゴールド カウンシル(WGC/本部ロンドン)入社。
企画調査部長として経済調査、金市場のマーケット分析に従事。1998年独立し分析、評論活動に入る。
2002年マーケット・ストラテジィ・インスティチュート代表取締役。

「史観と俯瞰」をモットーに金融市場から商品市場、国際情勢まで幅広くウォッチしている。日経C
NBCテレビ「デリバティブ・ワールド」、ラジオNIKKEI「マーケット・トレンド」など数々のメディ
アでの市場分析のほか、住友金属鉱山サイトでは金市場を軸にした金融経済分析と市況解説を、投資
情報誌ネット・マネーにて「亀井幸一郎の金市場の風」、日本証券新聞コラムなど定期寄稿中。

ブログ 『亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」』

 
掲載日:2013年10月3日

 
    

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