株式・投資信託・ETF・退職・年金 投資に役立つ「ケイゾンマネー」

制約から生まれる創造性

皆様、こんにちは。鎌倉投信の鎌田恭幸です。

先日、ある勉強会で東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドの元理事の方のお話を伺う機会がありました。テーマは「全ては 楽しい のために(結果としてUniversal Design 障碍のある方も楽しめるテーマパーク)」でした。

※Universal Design ユニバーサルデザイン:文化・言語・国籍の違い、老若男女といった差異、障害・能力の如何を問わずに利用することができる施設・製品・情報の設計(Wikipedia より抜粋)

東京ディズニーランドやディズニーシーというと、年間入場者数3,000万人、リピーター率95%といわれる世界有数のテーマパークの一つです。東日本大震災の時、1万5,000人のゲスト(お客様)を一晩守り励まし続けたキャストと呼ばれるアルバイトたちの頑張りを見て感動を覚えた方も少なくないでしょう。東京ディズニーリゾートが開園したのは1983年。今回の勉強会は、決して順風満帆だったとはいえない開業から今に至る30年間の挑戦の軌跡を知るとても貴重な機会でした。
東京ディズニーリゾートは、世界中にあるディズニーリゾートの中にあって例外的にディズニーの資本が入っていません。しかし、ライセンス契約によって景観やアトラクション、販売する様々な商品に至るまでとても厳しい条件が課せられています。つまり、運営に当たってはとても縛りが強く不自由なのです。しかし、今では、世界のディズニーリゾートの中で最も成功しているといってもいいでしょう。

お話を伺い、その成功のキーワードは、「日本的価値の統合」と、その過程における「配慮していることを気づかせない日本人的感性」だと感じました。

「価値の統合」とは、大きくいうと二つです。
一つ目は、ディズニーと、日本の気候・風土、日本人の感性との統合。
二つ目は、エンターテイメントとユニバーサルデザインとの統合です。

景観一つとってもそうです。一例ですが、東京ディズニーランドに行くと、カストーディアルと呼ばれる掃除のキャストもまた、訪れるゲストを楽しませてくれますが、米国ではそれをあまり見ることはありません。年中晴天続きの米国では、葉っぱが落ちる落葉樹は植えてはいけないからだそうです。落葉は美観を損ねるという理由からです。しかし、日本人の感性は、桜の花びらや葉が散る風景を見て美しいと感じるように、欧米とは全く異なります。当時は、四季を感じることが出来る樹木を植えることさえも、なかなか認めて貰えなかったのだそうです。

ユニバーサルデザインとエンターテイメントの統合への取り組みは、ある全盲の女性の一言「楽しめない」という言葉から始まったそうです。バリアフリーや触地図等、施設を見ればその配慮が分かります。しかし、演出は、そうした目に見えるものだけではありません。例えば、車いすを利用するゲストが高い場所からショーを見る時には、転落防止の手すりが丁度視界に入り、良く見ることができません。キャストは、ショーが始まる寸前に、さり気なく手すりを下げるという演出も考えました。
頭と心と行動の境界がなくなり、無意識のレベルで自然にゲストを喜ばせようとしているから出来ることでしょう。「配慮していることを気づかせない配慮」「特別なことを普通に見せる」感性の豊かさに感心しました。

元理事の方の最後の言葉はとても印象深いものでした。
「制約が最高のキャストとパークを創り上げた。東京ディズニーランドのキャストは世界一だ。しかし、同時に今がボトムである。なぜなら、ゲストの嗜好性、心は常に変化し、多様化している。だから、選択肢を増やさなければならない。価値は、製品から素材に、箱モノから営みに、マクロからミクロに変わっている。その価値を生み出すものは、感性の領域といえる」

話は変わりますが、先日、新型宇宙ロケット「イプシロン」の打ち上げが成功しました。既存のロケットに比べると開発費用は40%減の約200億円、打ち上げ費用は、日本の主力ロケット「H2A」の半分以下の38億円と画期的です。その革新を実現したのも、古くからあるものと新しいものの統合、異なる産業分野の発想や技術の統合でした。

日本は、難しい課題や制約条件だらけの国です。
しかし、こうしたお話は、厳しい制約条件、不自由さを受け入れ、それを克服する過程の中に新たなる価値の創造があると教えてくれている気がします。直面する課題、不自由さは日本の未来を拓く。そんな予感を感じます。


鎌田 恭幸(かまた やすゆき)プロフィール
過去コラム一覧


鎌倉投信株式会社 代表取締役 社長

1965年島根県生まれ。日系・外資系信託銀行を通じて25年にわたり資産運用業務に携わる。
2008年11月 鎌倉投信(株) 創業。2011年8月テレビ東京系列「ガイアの夜明け」で紹介される。

著書「日本で一番投資したい会社」(アチーブメント出版)
共著「21世紀をつくる人を幸せにする会社」(ディスカヴァー21)

掲載日:2013年10月4日

 
    

特集

「証券アナリストの調査手法とこだわり」(全6回)

「証券アナリストの調査手法とこだわり」

証券アナリストの行動パターンをご紹介!個人投資家のリスク回避術を学ぼう。

特集を読む »

おもしろ企業探検隊

おもしろ企業探検隊

平林亮子&内田まさみの「そうだ!社長に会いに行こう」ナブテスコ株式会社

特集を読む »