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『お金との付き合い方』

現代では、お金とは好むと好まざるにかかわらず、付き合わざるを得ません。

江戸時代、京・大阪や江戸など都市部では、お金がベースとなった社会でもありました。もちろん、現在とは異なるところもある一方で、今と変わらない面もあります。時代を超えた、今でも参考になるお金との付き合い方があります。

人には、お金をコントロールできるタイプと、逆にお金に翻弄されるタイプがあります。長い人生ですから、一時的に翻弄されるタイプがコントロールできるタイプになるときもありますが、翻弄タイプはコントロールタイプにはなかなかなれないものです。そして、良質なコントロールタイプは少数派です。

この良質なコントロールタイプも、3つ分類できます。

・無頓着派
・堅実派
・活用派

それぞれの特徴は、江戸時代の人物に登場してもらいましょう。

無頓着派からは葛飾北斎。

今は廃刊されたアメリカ雑誌ライフで、この1000年で影響を及ぼした人物のベスト89位に選ばれた唯一の日本人が葛飾北斎だそうです。ご本人は、死後100以上も経っての国際的な評価など予想もできないことでしょうが、その画業は大連峰です。70年間にわたる画業一筋ですから、作品量もすごいのですがクオリティも高い。北斎は当時から生活面や対人面での奇行が多いともいわれています。お金に対しても関心がうすく、画料をもらっても包みをあけず、出入りの商人への支払いも北斎が支払い額を確認せずにお金をもっていったといわれます。多分そうだったのでしょう、無頓着派の横綱ということになります。また、88歳で亡くなるまでの引っ越し回数が93といいます。簡素な生活で、持ち物もほとんどなにもないから引っ越しも容易にできたのでしょう。北斎が絵を描いている様子が描かれたものが残されていますが、大画家の「アトリエ」ではなく、貧しい家庭内職人の図としかみえないものです。
 
次に、堅実派ですが、神沢杜口をあげましょう。

永井荷風が断腸亭日乗にて名を記しています。86歳の長寿で、翁草という200巻にわたる書を残し、与謝野蕪村と句集もまとめている京都奉行の元与力です。40歳すぎ病弱を理由に家督を嫁婿に譲り隠居生活に入っています。妻には先立たれ、隠居後は娘婿世帯から離れ、一人暮らしを亡くなるまで続けます。40数年の一人暮らしで18回の引っ越しをしています。隠居後の生活費をどう工面したのかは、おそらく娘婿世帯の俸禄の一部を年金として使っていたようです。大きな額になることはないでしょうから、生活そのものは質素なものであったこと、また引っ越しの回数からして、所帯道具も最小限のものではなかったかと思います。まさにシンプルライフです。

活用派は、大田垣蓮月です。

大田垣蓮月は、磯田道史氏の「無私の日本人」で取り上げられている江戸後期の尼僧、歌人であり蓮月焼という全国的なヒット商品を生み出しています。最後の文人といわれた富岡鉄斎を生み出したことや、西郷隆盛に歌をもって直訴したといわれています。上記二人と同じように引っ越し好きで、暮らし向きは極貧。しかし、蓮月焼というヒット商品を生み出すことにより極貧から抜け出ることができるのですが、生活はやはり簡素なものであった。ちなみに、蓮月焼は、グーグルの画像検索で知ることができます。蓮月はお金の使い方を知っていた。貯めたお金を自分のためでなく、鴨川に丸太町橋を架けることで住民のためになることがする才覚がありました。もちろん、住民からは喜ばれ、85歳で亡くなった葬式には村の者総出で弔いをしたとのことです。

この三者に共通しているのは転居の多さ、引っ越し好きです。引っ越しがいつでもできるほど、なにも持たなかったのだと思います。身の回りの最低限の所帯道具だけだったのではないでしょうか。もちろん、家や屋敷等はあろうはずがなく、借家です。借家だからこそ、いつでも住みたいところに住めたとも言えます。そして、お金に関しては、お金のある範囲で生活できる人物であった。お金に翻弄されることのない人生、充実した人生を過ごすための必要条件ではないでしょうか。


井戸 美枝(いど みえ)プロフィール
過去コラム一覧


CFP®、社会保険労務士。
社会保障審議会 企業年金部会委員

生活に身近な経済問題をはじめ、年金・社会保障問題を専門とし、経済エッセイストとして活動。人生の神髄はシンプルライフにあると信じる。

著書
世界一やさしい年金の本』(東洋経済新報社)『お金が貯まる人と、なぜか貯まらない人の習慣』(明日香出版社)など多数。

近著『人気セミナー講師・いどみえ先生の 社会保険がやさしくわかる本』(日本実業出版社)

井戸 美枝ホームページ

掲載日:2013年10月10日

 
    

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