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成功するには常識を疑え!人間行動の謎解きで注目される文化人類学者

ビジネスの世界では、明けても暮れても組織論やリーダーシップ論が語られ続けている。

しかし実際に成功するために最も大切なことは働く人間の姿勢や思考をいかに的確に分析できるかではないのか。ではどうすれば人間の行動や思考を把握できるのか。その答えは意外な分野の研究者が握っているようだ。文化人類学者である。

文化人類学者といえば、ひと昔前まではサファリルックにヘルメット姿でアマゾンなどの未開の奥地に住む先住民族を観察することが主な仕事だった。ビジネスとはまったく縁遠い存在だったわけである。ピンとこない方は映画『インディ・ジョーンズ』を思い浮かべていただければいい。それが今ではIT企業をはじめ大手広告会社、ホテルチェーン、レンタカー会社までもが彼らを高給で雇っている。その目的はただひとつ。消費者や従業員が何を考えているかを知るためである。これまでの心理学者の紋切り型の分析・手法ではそれがなかなか分からなかった。代わって登場した文化人類学者は、彼らの真骨頂である"現地調査"の手法を使って人間行動の謎を解き明かしつつあるのである。

例えば、文化人類学者ジェヌビエーブ・ベル。彼女は世界的な半導体メーカー・インテルで技術者の行動や思考を分析することによって技術開発で著しい成果をもたらしたという。過去の有名な事例としては、90年代のレンタカー大手「エイビス」がある。同社は、顧客満足度を向上させるため、ユーザーのアンケート調査結果に従ってレンタル車をきれいにしたり、サービスのスピードを上げたりした。ところが顧客満足度も業績もいっこうに上向かなかった。そこで顧客の声と行動を小型カメラで収録し文化人類学者に分析してもらったところ、レンタカーを借りる人が最も気にしていたのは「フライトに間にあうか」、「出張先でビジネスがスムーズに行えるか」、など旅先でのストレスの軽減であることが判明。すぐさまビデオモニターによる離発着便の情報提供やパソコン・FAX完備のビジネスセンターの設置を行ったところ、なんと顧客満足度で業界トップに躍り出たのである。もちろん業績もアップ。ポイントは、顧客自身が心理学的なアンケートでは明確に答えられない不安・欲求を文化人類学者が現場観察を通して見事に探り当てたところにある。

研究者と言えば、かつてウォール街で原子物理学者がもてはやされた時代があった。高度な工学的知識を資産運用や取引、リスクヘッジ、リスクマネジメントに利用しようとしたのである。70年代に登場したフィッシャー・ブラックやマイロン・ショールズによるデリバティブズの価格理論などはその代表格だろう。要するに高度な数学的知識を駆使して金儲けをしようとしわけだ。だが人間は所詮感情の動物である。思ったようにはいかず多くの会社が損を被った。今や金融の世界でも文化人類学的アプローチが重宝されているらしい。ただし、日本にどれだけ有能な文化人類学者がいるかどうかは不明である。

蟹瀬 誠一(かにせ せいいち)プロフィール 
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ジャーナリスト・キャスター、明治大学国際日本学教授
(株)アバージェンス取締役、(株)ケイ・アソシエイツ取締役副社長

掲載日:2013年10月7日

 
    

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