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最新のストレス研究からみる「いきいき職場」とは?

あの人は「いきいき」している、あの企業の職場は「いきいき」している、と表現がされることがある。

この「いきいき」という言葉の中に、どんなニュアンスを想像するだろうか?活気がある、メンバー同士が助け合い切磋琢磨している、チームワークがある、仕事に熱心に没頭している、業績が良い、等々。
この「いきいき」という言葉は、ただ単に「悪いストレスが少ない」「ネガティブではない」「病気ではない」「大きな問題はない」といった意味ではなく、よりポジティブで積極的な状態を指している。当然、どの働く人々も職場も「いきいき」していたいと思うはずだ。

一方、日本の労働者のストレスに関する調査研究やメンタルヘルス不調に対する取り組み手法については、10年以上にわたって調査研究が厚生労働省で行われてきたが(※)、そこでは主にストレスにより不調に陥ってしまう要因(ネガティブ要因)に焦点が当てられていた。それが最新のストレス研究では、初めて新しい枠組みとして、よりポジティブな職場作り、つまり「いきいきとした職場作り」をゴールとすることがやはり重要であると提唱されるようになった。

簡単に要約すると、最新の職場のストレス研究で提唱される「いきいきとした職場」とは、


(1) 働く人の健康の保持と増進の取り組みがある
(2) 働く人のワークエンゲージメント(仕事に対して積極的、意欲的な取り組みが実現されている状態)が高い
(3) 職場の一体感(信頼・相互理解・助け合い)がある


この3つの目標を高めることで企業と働く人の相互に利益がもたらせる、という考えである。職場における不調者対策だけだったり、上記のうちのどれかひとつだけでも成果を上げるには限界がある。つまり「いきいきとした職場」はこれら3つが総合的に相関しているのだ。

それぞれのポイントは当たり前のことのように感じるかもしれないが、経営や職場ですべてをバランスよく実践している企業は少なく、決して容易なことではない。最も効果的に「職場のいきいき度」を高めていくためには、上記3つのポイント「働く人の心身の健康」、「働く人のワークエンゲージメント」、「職場の一体感」について経営層・管理職層・従業員それぞれがモニターし、推進していくことが必要なのである。

また、補足としていくつかのチェックポイントを挙げておきたい。


◇メンタルヘルス不調者がいないから大丈夫、と考えていないか?
「表立った不調者はいないが、いきいきとしていない」という企業は当然存在する。多くの企業は、健康診断で「病気ではない」、「要検査ではない」ことを把握することが現実的なラインで、健康の保持や増進には積極的ではなかった。また、企業側や管理者側への労災などの法的なリスク対策としてストレス対策の多くは実践されてきた。「職場のコミュニケーション」や「相互の助け合い」などが働く人のメンタルヘルスに影響をしているという視点を、健康管理を担当する部署の視点からだけではなく、経営・人事の視点からの対策として包括的に実践する会社は決して多くはなかった。場合によっては、部署を越えた連携を取りながらの健康推進も必要なのである。

◇画一的な残業抑制だけを推進していないか?
より効率的な生産性の高い職場を目指すことは、少子高齢化・人口減少社会の日本にとっても、企業の競争力の上でも、働く人々のワークライフにとっても、今後益々重要なテーマのひとつになるはずだ。しかし、画一的な残業抑制はワークエンゲージメントの視点からは弊害も多い。つまり、仕事に没頭したい人が十分没頭できる環境を提供することのほうが重要であり、残業抑制そのものはゴールではない。したがって多様な働き方を許容する制度設計を同時に進めながら、効率的な仕事を推進するバランスがより重要になってきている。

◇「ハラスメントは無いから大丈夫」と思っていないか?
昨今はハラスメントについての話題が多く聞かれるが、「ハラスメントが無い」、というのはコンプライアンス上の最低ラインである。本来はハラスメント対極の概念である「相互の尊重」、「信頼」、「助け合い」、こういった指標で職場をモニターすることが望ましい。ハラスメントがないから大丈夫、というのはポジティブな職場づくりには不十分であると言える。

皆さんの職場ではどれだけ「いきいき職場」に近づく取り組みが実践されているか、是非チェックされてみてはいかがだろうか?

※平成11年度労働省委託研究「職業性ストレス観に調査票および仕事のストレス判定図の開発」、平成21-23年度厚生労働省労働安全衛生綜合研究事業「労働者のメンタルヘルス不調の第一次予防の浸透手法に関する調査研究」等

荻原 国啓(おぎわら くにひろ)プロフィール
過去コラム一覧


ピースマインド・イープ株式会社代表取締役社長

慶應義塾大学経済学部卒。在学中より人事コンサルティング会社新規事業開発や、新卒人材紹介事業等、人事マネジメント分野に従事後、(株)ピースマインド代表取締役社長(1998年創業~2011年3月)を経て現職。

日本国内最大規模のEAP(従業員支援プログラム)提供企業としてEAPやメンタルヘルス支援など、心理学・行動科学の専門性を活かした人と組織に関わる支援とコンサルティングを550以上の組織に展開。精神保健福祉士・産業カウンセラー・心理相談員。日本の起業家を世界に輩出する唯一の世界的起業家表彰制度EOYjapan2008セミファイナリスト。日本の次世代若手ベンチャー起業家を称える表彰制度DREAM GATE AWARD2008受賞。『クリックからはじめる自殺予防支援』代表世話人。

専門分野は人事・組織マネジメント、人材開発、EAP(従業員支援プログラム)、ストレスマネジメント、メンタルヘルス、震災ケア、レジリエンス、クライシスケア、ソーシャルビジネス等。

掲載日:2013年10月23日

 
    

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