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米議会混乱から見えたもの

10月前半の経済ニュースは、米国議会動向が中心となった。

今年度予算の不成立による一部政府機関の停止は、10~12月期の米実質経済成長率を0.5%程度押し下げる要因になったとされる。一方、政府債務残高上限引き上げ問題については、数カ月の資金をやりとりする短期市場において、一部金利が上昇するなどの影響が出た。上院を民主党、下院を共和党が制した"ねじれ議会"の中で、一歩間違えればデフォルト(債務不履行)に陥るリスクを冒したチキンレースは債務上限期限前日まで続き、米国世論の大顰蹙(ひんしゅく)を買った。

結局、大方の市場関係者が予想したとおり、最悪の事態、すなわち何も決まらずに米国がデフォルトに陥る事態は避けられたが、これで全てが丸く収まったわけではない。今回決定した予算は、あくまで来年1月15日までの暫定予算であり、これを超えて今年度予算が成立しなければ、再び政府機関の閉鎖が始まる。また、政府の債務上限についても来年2月8日までの"暫定措置"であり、与野党の対立次第では再びデフォルトリスクに市場が緊張する可能性もでてくる。

こうした政府・議会の緊張が米国の中央銀行、FRBの金融政策に大きな影響を与えるとの見方が増えている。

FRBは現行の政策QE3(量的緩和政策第三弾)の"出口戦略"を模索し始めており、早ければ9月にも同政策による国内などの買取規模の縮小(テーパリング)を行うとの見方もあった。米国経済は緩やかではあるが着実に改善基調を辿っており、インフレといった副作用をもたらす恐れのあるQE3という劇薬の必要性は和らいでいるということだ。しかし、今回の財政混乱が景気に一定程度のマイナス要因となることは確実だ。このため、市場ではQE3の縮小開始は、来年3月まで先送りされるとの見方が強まっている。

このような不透明な要因があることを踏まえれば、FRBはこれら問題が解決するまでQE3の縮小を見送るだろう、という市場の見方も頷ける。ただし、これにより日本のマーケットには"円安に動きにくい"という環境ができあがってしまった。QE3が予想以上に長引くことで米金利は低水準で安定、これがドル買いを阻害する要因となるからだ。米議会動向が不安定であることが、米金融政策を通じて、世界の市場にも影響を及ぼすことになる。経済原理に基づかない、政治力学に左右されるような局面では、投資家は極端な投資ポジションを取ることを避けようとする。暫く、市場は活気に欠けた様子見の状態が続きそうだ。

嶌峰 義清(しまみね よしきよ)プロフィール
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株式会社第一生命経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト

1990年青山学院大学経済学部卒。同年岡三証券入社。岡三経済研究所、日本総合研究所を経て、1998年第一生命経済研究所入社。2011年より現職。日本経済、米国経済など各国経済担当を経て、現在は金融市場全般を担当。


掲載日:2013年10月31日

 
    

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