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リコノミクスの全容明らかに

中国メディアによれば、共産党中央三中全会は11月に開かれる予定といわれている。その中心的な議題は「全面的に改革を深化する」ということのようだ。これまで、習近平国家主席と李克強首相は種々の発言を総合すれば、三中全会で広範囲に及ぶ制度改革を抜本的に実行していくとしている。要するに、改革のアジェンダとその「路線図」(ロードマップ)を議論し示していくということである。

今回、三中全会に提出される制度改革のアジェンダとロードマップの作成を担当するのは国務院傘下の国務院発展研究センターである。そのアジェンダの軸となるのは、政府・市場・企業の三位一体の改革に加え、行政改革を中心とする八つの重点分野の改革と社会保障制度および土地管理制度改革である。

そもそも李克強首相が進めるリコノミクスは性急な景気刺激策を実施せず、その代わりに、規制緩和、金融・財政のレバレッジの解消と構造転換を促進していくことになっている。振り返れば、これまでの10年間、すなわち、胡錦濤政権の10年間、経済成長こそ実現したが、経済制度改革はすべて先送りされた。北京大学張維迎教授(経済学)は、「改革を行わなければ、中国経済の将来はない」と断言している。李克強首相自身も改革こそ経済成長にとっての最大のボーナスと明言し、改革実行の重要性を強調している。

しかし、歴代指導者はいずれも改革の必要性を否定したことがない。実際に市場経済の制度改革が前進したのは、最高指導者だった鄧小平の時代と江沢民元国家主席時代における朱鎔基元首相の努力によるところが大きい。いうまでもないことだが、改革を推進するためには、指導者のカリスマ性が必要不可欠である。そのうえ、改革を支持する草の根のコンセンサスが必要である。

温家宝前首相は改革の必要性を繰り返して強調したが、実際に改革を推進することはできなかった。原因は改革に反対する抵抗勢力を抑えることができなかったことにある。朱鎔基元首相の時代、国有企業の民営化を含めた市場経済改革を推進するにあたり、改革に反対する抵抗勢力は猛烈に抵抗していた。朱元首相自身は記者会見などの場で、「改革を実行するために、100個の棺桶をいつも用意している。一つは自分のためだが、残りの99個は抵抗勢力の腐敗幹部のために用意したものだ」と皮肉った。

今回、国務院発展研究センターが暴露した改革のアジェンダとロードマップはあまりにも広範囲に及ぶものであるため、習近平国家主席と李克強首相の政治手腕が試される。このアジェンダは明らかに改革される側の抵抗勢力に対する挑戦状になる。改革を実行するには両指導者の強いリーダーシップは必要不可欠である。

無論、中国社会と中国経済の現状をみれば、政治指導者にとり改革しない選択肢はないはずである。これまでの30余年間、経済発展の成果は広くかき集め国家を軸に集約され、強い国力となったようにみえた。しかし、国民の大半は経済発展の果実を十分に享受していない。それゆえ、経済発展とは裏腹に、草の根の低所得層の不満が急速に蓄積されている。

今回の改革は、経済発展を維持するだけでは問題の解決にはならない。議論を整理すれば、規制緩和や独占の打破はさらなる経済発展を図るための措置である。同時に、経済発展の成果を国民の間で公平に分配するための制度的枠組みも用意しなければならない。経済発展の成果を享受できない者は改革を支持するはずがない。したがって、リコノミクスはさらなる経済発展を維持することも重要だが、同時に、改革路線が支持されるように、その成果を公平に分配する制度的枠組みを用意することが求められている。

柯 隆(か りゅう)プロフィール
過去コラム一覧

富士通総研経済研究所 主席研究員 

中国南京市生まれ
1988年1月来日
同年 愛知大学法経学部入学
1992年3月愛知大学法経学部卒業
1992年4月名古屋大学大学院経済学研究科入学
1994年3月名古屋大学大学院経済学研究科修士取得
同年 長銀総合研究所国際調査部研究員
1998年10月 富士通総研経済研究所主任研究員
2006年7月より現職

著書
中国が普通の大国になる日」(日本実業出版社、2012年) 
チャイナクライシスへの警鐘」(日本実業出版社、2010年)
中国の不良債権問題」(日本経済新聞出版社、2007年)
「日中『歴史の変わり目』を展望する」(勁草書房、2013年、共著)
"Global Linkages and Economic Rebalancing in East Asia", World Scientific Publishing Company, 2012 (共著)
「中国の統治能力」(慶応義塾大学出版会、2006年、共著 ) など

掲載日:2013年11月7日

 
    

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