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投資教育=教育投資

9月12日のこのコラムでファイナンシャル・ヒーラーの岡本さんが「マネー教育は家庭から」と題したコメントを寄せられています。私も、これには大賛成です。

学校でも投資教育をすることは大切です。「社会人になってから投資を勉強しようとしてもなかなか入り込めない」「きっかけがないから投資に距離を置いてきていつの間にか時間だけが過ぎていく」「それでは遅すぎる」といったことが言われて久しい気がします。そのためには義務教育で投資やお金との向き合い方を教える必要がある。「投資という教育」が必要なのです。ただ、投資教育を学校に押し付けてしまわないで、家庭でもお金について話をすることができる雰囲気を醸し出すことは、もっと大切なのではないでしょうか。投資というと大変だと思いますが、お金との向き合い方なら何か家庭でも教えることができるはずです。

もう5年近く前になりますが、女性だけのグループインタビューを行ったことがあります。6人ずつ6グループ、それぞれ2時間ずつモデレーターを入れてお金に関することで話をしていただきました。我々はマジックミラーの裏からその会話すべてを聞いていくわけですが、いろいろ面白い話を聞くことができました。その中で、投資をしている女性数名が異口同音に「投資を始めたきっかけは父親が投資をしていたから」と話されていたことが記憶に残っています。一時ベストセラーになった「金持ち父さん、貧乏父さん」ではないですが、やはり父親がお金についても話すことが投資への第一歩になるんだな、と印象に残ったことを覚えています。

ところで最近、大学で講義をさせていただくチャンスがありますが、大学生に父親の年収を聞いても知らない人が意外に多いことに驚きます。子供に年収を知らせることはそれほど大変なことではないはずですが、幾ばくかの躊躇というか、抵抗感みたいなものが親の側にあるようです。家庭でお金の話をしにくいという抵抗感です。

大学生に父親の年収を聞いているのは、自分の学費が年収の何割に相当するかを考えてもらうことから、お金の話を始めようと思っているからです。最近の大学の授業料は国立で54万円弱、初年度の入学金が28万円強で、合計82万円弱、私立文系で初年度115万円、私立理系で150万円程度とのことです。50代後半男性の平均年収 (平成24年民間給与実態統計調査) は618万円ですから、国立大学で初年度の費用は親の年収の13%、私立理系で24%です。親は年収の2割に相当する"コスト"をつぎ込んで子供に「教育という投資」をしているのです。こんなところから大学生や高校生が「自分への投資」ということに気が付いてくれればいいのですが。

卒業後も自分で所得の2割を自分への投資に回す。若い人たちがそんな心持ちでいてくれればうれしいですね。もちろん、"自分への投資"という場合には、将来の人的資産である自分を磨くこと(教育)と、将来の自分自身の生活を支えること(投資)の2つがあると思います。

そう、若い人たちにとって「教育という投資」も「投資という教育」も将来の自分を視野に入れたお金との向き合い方なんだと思います。そして、我々大人も自分の家庭でちょっとだけ躊躇を取り払って、"金持ち父さん"でなくても、"お金に明るい父さん"くらいであればなれるように思います。

野尻 哲史(のじり さとし)プロフィール
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フィデリティ投信 フィデリティ退職・投資教育研究所所長

一橋大学卒業後、内外の証券会社調査部を経て、2006年からフィデリティ投信株式会社 フィデリティ退職・投資教育研究所所長。大規模なアンケート調査をもとに投資家への提言をするなど、投資教育に従事。

退職金は何もしないと消えていく」(2008年) 、「老後難民 50代夫婦の生き残り策」(2010年)、「40代のサイフ」(宝島社、2012年)、「50歳から始めるお金の話」(2013年2月、小学館文庫)など著書も多数。

現在、日本アナリスト協会検定会員、日本FP学会、日本証券経済学会、行動経済学会などの会員。

 

掲載日:2013年11月14日

 
    

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