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政策で変わったこの1年

野田首相(当時)の突然の解散宣言から1年が経った。

2012年11月14日、自民党の安倍総裁との党首討論の場で発せられた"解散"という言葉に市場は即座に反応、円安・株高の流れができあがった(実際の衆議院解散は11月16日)。解散となれば政権交代が実現、次期政権を担うであろう自民党の安倍総裁が主張していたリフレ政策が実行に移され、これは円安要因となる、という読みが市場を突き動かした。

円安を受けた株高は、資産効果という形で国内需要を押し上げた。同時に、連日の株価上昇のニュースは、株を持っていない人の財布の紐をも緩めた。2013年前半の日本の経済成長率は年率4%という、潜在成長率(実力の成長率)が僅か1%以下にとどまる現在の日本にとっては"超高成長"を実現したが、これを牽引したのは個人消費であった。戦後の日本経済を振り返れば、景気の牽引車はいつも輸出であった。バブルが崩壊し、デフレに陥って国内需要の力が一段と弱くなってからは、そうした傾向がますます強まり、『世界経済が良くなれば日本経済も持ち直すが、世界経済が減速すれば日本はひとたまりもない』という状態が続いた。そうした中での消費主導の景気回復は、まさに奇跡と言っても過言ではないだろう。

経済政策は国民生活を大きく左右しうる重要な問題だ。バブル以前のような比較的高い成長率を維持できた頃は、経済政策は国の方向性を左右するという点では重要であったが、景気の変化への対応という点では民間部門の経済活動を補佐する程度で十分であった(今の新興国もそれに当たる)。しかし、様々な構造問題を抱え、成熟したこともあって成長力が衰えている先進国においては、場合によっては経済構造を大きく変えると同時に、循環的な景気の変動に対しても強い牽引力を持つような対応が求められる。その点では米国やユーロ圏も同様の立場にあり、特に財政政策については政治対応という点で適切な運営がなされているとは言い難い。アベノミクスは、少なくともこの1年間を見る限りにおいては、欧米に比べても大きな成果を上げていると評価されていいだろう。

しかしながら今後はすぐには結果の出ない、地道な努力が必要となる。日銀がアベノミクスに呼応する格好で"質的・量的緩和"策を講じたことが円安・株高の流れを決定づけたが、すでに為替水準を変えるという点ではその効果の大半は出尽くしたと考えられる。今後の為替変動は、もっぱら米国を中心とした海外の動向によって左右されよう。一方、来年4月からの消費税率引き上げは、成長戦略の一つとも言える財政改善のために行うものだが、景気回復、デフレ脱却にとっては足かせ要因となる。政府は、増税による家計への負担増については、企業の賃上げによる所得増をもって賄う(低所得者向けには政府からの給付増で賄う)旨表明し、消費税率引き上げと同時に発表された景気対策も企業向けのものが中心となった。実際に賃上げをするかしないかは、個々の企業の判断に委ねられるが、企業が賃上げを行っても良いと思えるような成長戦略の補強は必要だろう。

もっとも、成長戦略は一部構造改革を伴う産業政策であり、すぐに成果が得られるものではない。一方で、家計には負担増を強いることになるので、世論の支持が低下する可能性は十分にある。しかし、デフレから脱却し、日本経済の中長期的な成長軌道を描けるような経済政策が今後もブレなければ、それは中長期的な投資スタンスに基づいたマネーを日本の株式市場に誘う効果があり、日本株の堅調な推移となって現れよう。そうなれば、世論の支持も大きく失われることはないだろう。

嶌峰 義清(しまみね よしきよ)プロフィール
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株式会社第一生命経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト

1990年青山学院大学経済学部卒。同年岡三証券入社。岡三経済研究所、日本総合研究所を経て、1998年第一生命経済研究所入社。2011年より現職。日本経済、米国経済など各国経済担当を経て、現在は金融市場全般を担当。


掲載日:2013年11
月26日

 
    

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