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お金のコミュニケーション力

最近、学生の前で話をする機会が増えています。

運用責任者の新井も私も、機会を頂ければ、時間が許す限り学生の前で話をします。その理由は、少しでもこれからの日本を担う若者の力になりたい、夢を持ち挑戦する若者を一人でも二人でも増やしたい、企業や産業、それを担う人の育成もまた金融に関わる者の使命だと考えるからです。先日もある大学で「社会コミュニケーション」をテーマに講義をする機会がありました。

一般に、「コミュニケーション」といえば、感じることや考えを伝達することをイメージします。しかし、本来は、お互いの考えや心が「通じ合う」、「理解し合う」ことなしに、コミュニケーションが成立したとはいえないでしょう。そして、その媒介となるものは、言葉や文字、表情や行為・行動などです。私は、経済活動におけるコミュニケーションの媒体こそが「お金」であり、「お金のコミュニケーション力」を如何に高めるかが金融の役割の一つだと考えています。

コミュニケーション力とは、お互いが通じ合う、理解し合うことの関係性の深さで測られます。そして、経済活動の主たる側面でいえば、お金のコミュニケーション力は、融資や投資、つまりお金を通じて企業と共に新たなる価値を創造し、社会をより善くし、人を幸せにすることに表れるでしょう。しかし残念ながら、鎌倉投信もその一端を担う金融においては、お金を媒介としたコミュニケーション力が強いとはいえません。

このところ出張すると感じるのですが、新幹線や飛行機の乗車率が昨年までに比べると明らかに高くなってきています。ホテルの稼働率や宿泊料も上昇傾向です。こうした動きから経済活動が上向いていることを実感する人も少なくないでしょう。
アベノミクスによる経済効果がじわりと効き始めているのかもしれません。今更いうまでもありませんが、アベノミクスとは、安倍自民党政権が掲げた経済政策の柱、「金融緩和」「財政出動」「成長戦略」の三本の矢をいいます。金融を緩和し、財政を出動すると世の中にお金が溢れます。すると円の価値が相対的に下がるので、為替は円安に向かいます。また、お金の価値が相対的に下がり物の値段が相対的に高まるので、不動産や株が上昇します。こうした現象は、人の身体に例えるならば、冷え切った身体の血行を良くして身体がようやく温まってきた状態といえるでしょう。しかし、これだけでは、健康で元気な身体になったとはいえません。本当に健康でエネルギーに満ち溢れた身体になるためには、三本目の矢である成長戦略の成功が欠かせません。働く人やお客様が喜びを感じる企業、新たな価値や雇用を創出する企業や産業をどんどん増やしていかなくてはならないのです。

しかし、今の世の中の風潮は、経済政策はあたかも政府が行うものだという他者頼みの意識が強いように思えてなりません。確かに政府の役割は重要です。しかし、何かに依存する精神性から本当の強さが生まれることはありません。それに、経済政策を担うことができる実質的なプレーヤーは企業家と金融であって、政府ではないからです。極論すると政府には(側面支援は出来たとしても)本質的には経済政策は担えないというのが私の持論です。政府の役割は、企業家を本気にさせること、企業家が全力で本業に専念できるようにフェアで活動しやすい経済システムをいかにつくるかに尽きるのです。そして、本気の企業家と共に汗をかき、苦しみを共有し、伴走役としてその発展成長を支えることが金融の使命であり、その媒介となるのが「お金」であると考えます。

今、社会や経済は劇的に変化しています。こうした時代には、既存の概念を超えた発想力、思考の革新性、思考のイノベーション、新領域に挑戦する行動力が求められます。そして、それを促すのが金融の役割です。過去の延長線上に未来はないからです。目に見えない価値を創造するお金のコミュニケーション力、その力を生み出す金融の役割が改めて問われる時代になったと感じます。

鎌田 恭幸(かまた やすゆき)プロフィール
過去コラム一覧


鎌倉投信株式会社 代表取締役 社長

1965年島根県生まれ。日系・外資系信託銀行を通じて25年にわたり資産運用業務に携わる。
2008年11月 鎌倉投信(株) 創業。2011年8月テレビ東京系列「ガイアの夜明け」で紹介される。

著書「日本で一番投資したい会社」(アチーブメント出版)
共著「21世紀をつくる人を幸せにする会社」(ディスカヴァー21)

掲載日:2013年11月29日

 
    

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