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現役経営者が何を思い、何に気を付けているか(その5)

円安(というか超円高の解消)もあって強い製造業が戻ってきました。

一方で、日本のソフトウェア産業はまだまだ国際競争力がなく、その一員として責任を感じています。昔、マレーシアのマハティール首相が「Look East」と唱えて日本の優れた点に学ぶことを提言しました。それにならって我々も「Look 製造業」と唱え、製造業の優れた点を取り入れていきたいです。製造業の強さの源泉の一つは品質で、これが日本のコアコンピタンスです。世界に通じるためには、製造業の品質意識に学ばなければなりません。

【ポイント15】後工程に不良を流さない

トヨタ自動車の張名誉会長が若い頃、「品質の悪いものを出荷して被る損害の方が、開発競争に遅れをとる被害に比べて比較にならないほど大きい」ということを徹底的に教えられたそうです。前回、このコラムに書いた「スピードが最優先」と対極にあるポリシーですが、諸先輩方もいろいろな苦い経験をしてそういうコンセプトを固めていったのでしょう。実際、我々ソフトウェア会社も「品質の悪いものを出荷して手痛い目」にあうことも少なくありません。

製造業の「品質の悪い物を出荷しない」というのは、完成品の品質だけでなくすべての工程を対象にしています。「後工程不良0(ゼロ)」という事で意思統一をはかっています。自分より後の工程に不良(品質の悪い物)を流さないという考え方は、ソフトウェアに置き換えると、システム設計,プログラミング,単体テストなどの各工程での品質を高く維持するということ。とかく「品質は最後のテストでバグ取りを」と考えがちなソフトウェア業界ですが、そんなやり方はもう時代遅れになっています。


【ポイント16】おかしいと感じたことをそのままにしない

私も実は製造業(東芝)出身です。その時代(もう30年も前ですが...)は、変な設計をしようものなら現場のこわもてに「こんなもの作れるか!」って怒鳴られる雰囲気がありました。翻って現状のIT業界を見てみると、それほどにはプログラマーが強く主張しないケースが多いです。変な設計に対しては、「こんな設計、作れるか!」って突き返すくらいの方が、お互いのためにもお客様のためにもいいはずですが、そういう緊張感が薄らいでいます。

おかしいことをおかしいと感じることは大事です。そして、おかしいと感じたことをそのままにしないのはもっと大事です。最近、おかしいと感じたのにそのまま見なかったことにする人が多いような気がします。その方が自分は楽でしょうが、全体(社会、会社、部門)がよくなりません。これはソフトの品質も同じです。製造(プログラミング)、テスト、運用などの過程でおかしいと感じることは誰にもありますが、それをきちんと指摘したり報告したりする雰囲気が作れていないのです。

なぜ、そのままスルーしてしまうのでしょうか。食品の世界を思い浮かべてみましょう。"生産者に思いを馳せる"を心掛けてみると、食べ物や物事を大切にしようという気持ちが自然に湧いてきます。逆に生産者の立場ならば、"食べる人の幸せな笑顔を思い浮かべる"と、きちんと育てようという気持ちになります。自分たちの作ったソフトウェアを使ってくれているユーザー(これをペルソナと言います)に思いを馳せてみる。このイメージをきちんと共有していないと、まあいいやとなってしまうのです。


【ポイント17】品質をあきらめない

品質よりスピードだ、日本は過剰品質だ、などと分かったようなことを言う人がいます。そういう発言をする人の多くは、自らは何も作ったことのない立場の人です。高品質こそが日本の武器で"良いものが勝つ"がビジネスの基本ルールです。品質ダウンでなくコストダウンこそが目指す道であり、こういう発言を受けてライバル並みの品質に下げるのは愚策だと思っています。

品質には"あたりまえ品質"と"前向き"品質があります。前者は不具合なく動作することを保証する品質なら、後者は利用者が喜ぶようなきめ細かなサービス品質です。バグをなくそうというのは、"あたりまえ品質"を高める行為なのですが、今、我々が世界に立ち向かうのに必要なのは"前向き品質"です。"あたりまえ品質"に関しては、長い改善取り組みを経て手法もツールもかなり出そろってきました。一方、"前向き品質"に関しては指標もなく、高める手法も確立されていません。今、我々が急いでやるべきことは、この"前向き品質"にきちんと向き合うことだと感じています。

梅田 弘之(うめだ ひろゆき)プロフィール
過去コラム一覧


株式会社システムインテグレータ(証券コード:3626) 代表取締役 社長

1957年新潟県生まれ。新潟高校、静岡大学出身。株式会社東京芝浦電気(現東芝)、株式会社住商コンピュータサービス(現SCSK)を経て1995年株式会社システムインテグレータを創立。現在に至る。 

「日本のITを世界に!」と「IT業界の合理化」の2つをライフテーマにし、「時間を奪うのではなく、時間を与えるソフトウェアを創り続ける」というコーポレートスローガンを掲げて、時代ニーズに合ったパッケージソフトウェアを次々にリリースしている。主なプロダクトに、ECサイト構築パッケージ「SI Web Shopping」、開発支援ツール「SI Object Browser」、Web-ERP「GRANDIT」、プロジェクト管理システム「OBPM」、O2Oマーケティングサービス「モバポタ」、設計書ジェネレータ「OBDZ」などがある。

 「グラス片手にデータベース設計」シリーズ(翔泳社)や「実践!プロジェクト管理」(翔泳社)、「パッケージから学ぶ4大分野の業務知識」(翔泳社)など著書も多数。

システムインテグレータ社

掲載日:2013年11月25日

 
    

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