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「放置されるイージーマネー、FRBイエレン新体制と金価格」

11月14日に次期FRB議長に指名されているジャネット・イエレン副議長に対する上院銀行委員会での公聴会が実施された。

発言内容はここまでの緩和路線の継続以上にdovishな(ハト派)ものとなった。イエレン次期FRB議長の下での政策の方向性は果たして金に対して優しい政策なのか否か。もちろん「ハト派」という振り分けからすると比較上金には好ましい環境が予想される。ただし一方で過去5年にわたり破格の資産の買取り(新規のドル供給)を続けてきたことから、拡大一途というわけにもいくまい、というのが市場内の見方でもある。したがって当座は見送られたとしても、早晩実行されるというのが金市場における根強い捉え方で、上値の重い展開につながっている。


○巨大化しているFRBのポジション

FRBの総資産は、2013年11月13日の時点で3兆8,639億ドル(約386兆円)に膨らみ、米国債だけで2兆1,370億ドル(約213兆円)にもなっている。よくリーマンショック前からどれだけ膨らんだかで表現されるが4倍を超えている。さらに月額850億ドル(約8兆5,000億円)膨らみ続けているわけだ。ちなみに米国債保有で国別トップの中国の保有量は1兆2,773億ドル(約127兆円)でとなっているが、その規模を優に超え来年春には2倍の規模に達することになる。意味するのは、米国債市場ではFRBが圧倒的なプレイヤーになっているわけで、その方針転換が相場に与える影響は従来の感覚では計れないほどに高まっている。

余談だが、ここまでのFRBによる資産の買い取りは、金利低下の恩恵を金融機関に与える以外に彼らが保有する証券の値が上がることで莫大なキャピタルゲイン(値上がり益)をもたらし、また買い付け取引を仲介することで多額の手数料収入をもたらした。2009年以降ゴールドマンはじめ投資銀行がディーリング益その他で好決算を連続で叩きだしていた大きな背景でもあったわけだ。


○大き過ぎて動けない

11月14日の上院の公聴会ではイエレン次期議長候補は、量的緩和策の縮小について「特定の時期は決めていない」として、2013年5月22日のバーナンキ議長による年内着手で2014年央に中止という大まかなスケジュールを白紙に戻す意向を示した。バーナンキ発言がその後の株式など世界的な金融波乱の原因になったことは言うまでもないが、これはひとえにFRBの持ち分が巨大化したことで「大き過ぎて動けない」状態にあることを示していると言えよう。もちろんイエレン議長候補は、そうした点には言及せずに例えば雇用市場は「非常に脆弱」で「性急に金融緩和をやめれば高くつく」という表現で、継続方針を示した。同候補は足元でFRBが目標として掲げている失業率やインフレ率と政策実行の関係については、達成を確認してから変更に動くという「最適コントロール」と呼ばれる方針を唱えていることで知られている学者でもある。公聴会での発言内容は報道に詳しいので重複を避けるが、ここまでのところの米国景気の回復度合いやスピード、さらに雇用環境や物価の上がりにくい状況などから判断するに、現行ペースの量的緩和策は必要であって継続するということだろう。この継続に関して、金市場には未だ疑いがある。それが払しょくされないと金価格の1,400ドル方向への反発は見られないと思われる。むしろ、そこに至る間に発表される経済指標には、好調なものもあり金が再び売られる可能性がある。

この点で金価格にも関連するということで注目されるのは、株式市場の動きだろう。公聴会にて「株価は力強く上昇したが、採用している株価収益率(PER)に似た伝統的な価値評価指標でみると、まだバブルの状況ではない」と断言した。NYダウなど主要株価指標は過去最高値を連続して更新したが、いずれも年初からは2~3割方値上がりしている水準にある。いわゆるイージーマネーが株式市場に流入しているのは、間違いない。利用できるものは何でも、ということで資産効果に目を向け多少の行き過ぎには目をつむるということか。当面は、株式市場の活況が続き、金は脇に置かれることになろうが、その傾向が続けば続くほどに、そうした環境の中でこそ金に注目すべきと思っている。「大き過ぎて動けない」FRBゆえに放置されるイージーマネーは、バブルを作ると思われるからだ。その先に再び金市場に関心が向けられる環境が控えるとみている。

亀井 幸一郎(かめい こういちろう)プロフィール
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生活設計塾クルー取締役

マーケット・ストラテジィ・インスティチュート代表取締役
金融・貴金属アナリスト

中央大学法学部卒業。
山一証券に8年間勤務後、日本初のFP会社で投資顧問会社マネー・マネジメント・インスティチュー
ト(MMI)入社。
1992年世界的な金の広報・調査機関ワールド ゴールド カウンシル(WGC/本部ロンドン)入社。
企画調査部長として経済調査、金市場のマーケット分析に従事。1998年独立し分析、評論活動に入る。
2002年マーケット・ストラテジィ・インスティチュート代表取締役。

「史観と俯瞰」をモットーに金融市場から商品市場、国際情勢まで幅広くウォッチしている。日経C
NBCテレビ「デリバティブ・ワールド」、ラジオNIKKEI「マーケット・トレンド」など数々のメディ
アでの市場分析のほか、住友金属鉱山サイトでは金市場を軸にした金融経済分析と市況解説を、投資
情報誌ネット・マネーにて「亀井幸一郎の金市場の風」、日本証券新聞コラムなど定期寄稿中。

ブログ 『亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」』

 
掲載日:2013年11月30日

 
    

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