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「超高齢社会に備えるインフラ作りを急げ」

1.大多数の想像力の欠如

数カ月前、JR東日本の駅構内で「エスカレーターを歩かないで」と呼びかけを行っていたが、現在、呼びかけの効果は見られない。関東では通常、エスカレーターの左側に立ち、右側を急ぐ人にあけ、関西ではその逆である。そのためラッシュ時には急ぐ人が右側を駆け抜け、転倒も起こり大変危険である。この暗黙のルールがあるが、たとえば脳卒中の後遺症で片麻痺が残り、左半身が不自由な人にとってはエスカレーターの右側に立って姿勢を保持したいし、子どもの手をつないで横並びに乗る親子もいるはずだ。多くの人が利用する駅をはじめとする公共交通機関は、障害者、高齢者、子ども連れなどさまざまな立場の安全・安心を視野に入れなければばらないが、現在のエスカレーターの使われ方は想像力が欠けている。

2.相次ぐ高齢者の事故

駅だけが問題ではなく、高齢者が犠牲になるケースが増えている。「高齢者が踏切を渡りきれず特急列車に跳ねられ死亡」、「電動車いすの男性、踏切で立ち往生」といったニュースを頻繁に聞く。高齢化率はすでに24%を超え、高齢者の数自体も増えているが、高齢者の単独世帯が増えている中で、家族が付き添うことなく買物や通院に高齢者単独で出かけるケースが増えているのだろう。鉄道の踏切事故は踏切の拡幅や立体交差など構造改良等も行われ、過去30年間で1,108件から331件に減少し、負傷者は431人から93人に、死亡者は278人から119人に低下したが、高齢者の被害件数は半数近くを占める。
また、交通事故による死者数は4,411人で12年連続の減少となっているが、死者数のうち65歳以上の高齢者が占める割合は初めて5割を超え、過去最高となった(警察庁交通局の統計)。歩行中や自動車に乗っていて事故にあっているケースが三分の2を占める。
こうした事故を減らすには、高齢化で視認性や運転技術が衰えた場合にも対応できる自動運転システムを搭載した車両や、高速道路で先行車両と無線通信して追従走行するシステムなど、車両と道路の進化が待ち望まれるところである。

3.交通バリアフリー法による一定の効果

高齢者のほとんどは元気であるが、高齢化することで心身の障害を抱える人たちも増え、現在、わが国の障害者数が724万人、つまり人口の5.7%が障害者で、17人に一人の割合である。在宅で生活する身体障害者の62%が65歳以上の高齢者であり、高齢者の自立と社会参加を考えれば、誰もが利用しやすい都市環境を作る必要がある。2000年11月に施行された「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」以降、バリアフリー化が民間事業者にも義務づけられ、鉄道、バス、航空会社が駅やターミナルを新設、改修する際にはエレベーター、エスカレーターの設置が義務づけられ、バスは乗降が楽な低床式車両も徐々に増えつつある。だが、今後、5人に2人が高齢者となる時代を見据え、高齢者の歩行速度、認知状況、運動能力などを勘案した安全な都市づくりのために、整備後の点検・評価は重要である。前述のエスカレーターの運用などに加え、エスカレーターの速度が速いため怖くて乗れず、階段を使う高齢者もいる。
高齢者の中には運転免許を返上する人も増えてきており、自動車所有の経済的負担を考えれば、とりわけ都市部で公共交通機関が移動手段として果たす役割は大きい。

4.新しい移動手段への対応とソフトや運用面が課題

最近ではシニアカーと呼ばれる高齢者向けの三輪または四輪の一人乗り電動車両(バッテリーカー)も登場してきた。自治体が補助金を出すところもあり、買い物などに気軽に利用できる。道路交通法では車両ではなく歩行者扱いとなる為、車道ではなく歩道を通行する。歩行者との接触事故も起きている。このように高齢者が加害者となるケースもあるが、道路交通法上は「歩行者」に分類されるため、シニアカーと歩行者との衝突事故があっても、交通事故ではないとされ、加害例が把握しにくい。また、歩道上に看板や放置自転車などがあって、歩道を避けて車道を通行した場合、自動車に追突される事故も発生している。尾灯の無い機種もある為、特に夜間の使用には注意を要する。
こうした高齢者の新しい移動手段についての安全のための道路や、駐車スペースの整備、交通ルール作りも検討をするべきであろう。都市づくりにコストがかかっても高齢者が社会参加することで健康になり、医療・介護費用を圧縮することが可能にできるという「クロスセクターベネフィット」の考えに立てば、たびたび批判の的になる「無駄な公共事業」にはならない。

白石 真澄(しらいし ますみ)プロフィール
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関西大学教授

1987年 関西大学大学院修士課程 工学研究科 建築計画学専攻 修了
(株)西武百貨店、(株)ニッセイ基礎研究所 主任研究員を経て、2002年4月より東洋大学経済学部 社会経済システム学科教授
専門テーマは「バリアフリー」、「少子・高齢化と地域システム」


掲載日:2013年12月5日

 
    

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