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「西」から「東」への金地金の大移動

2014年の金価格を占うひとつの要因に、中国など新興国需要の動向がある。2013年を通して金市場の需給面で特徴的だったのは、欧米投資マネーの流出の反面で、中国などアジアやインド、中東マネーの流入が激増し、明確に色分けがされたことだった。その象徴的な例が金ETF(上場投信)の残高が大きく落ち込む一方で、金地金や金貨の需要が大きく伸びたことだった。

具体的には2013年1-9月の金ETFの売却(ネット)は重量換算で697トンにも上った。2013年は通年で金ETFが登場して以降初めて売り越しになるのは確実だろう。一方、金地金と金貨の購入は、同じ期間に合わせて1,252トンと前年の919トンから36%の伸びとなっている。この主な買い手が中国、インドとその他アジア諸国だった。

2014年の注目は下値を支える新興国需要の拡大とりわけ中国でのそれが続くのか否かという点にある。中国では2013年に話題になったシャドー・バンキング(影の銀行)問題から不良債権が膨らんでいると見られるが、むしろ確かな投資対象として金が好まれている事情があるようだ。

四半期ベースではドル建て価格の値下がり率の大きかった4-6月期の需要が中国もインドも過去最大規模に膨らんだが、中国に関しては香港経由の輸入(ネット)が高水準を続けており(10月まで6カ月連続で毎月100トン超)、総需要が1,000トンを突破した可能性が高い。


○「ラージ」から「スモール」へ

香港から中国本土への金の輸出の急増を裏付けるデータもある。それは英国からスイスへの金輸出、さらにスイスから香港への金輸出が急増していることだ。まず英国⇒スイスだが2013年1-8月の輸出量は1,016トンと1,000トンを超えた。昨年同期はわずか85トンだった。スイス⇒香港のほうは1-9月に707トンと前年127トンの約5倍の規模となっている。このデータが物語るのは、まさに欧米からアジアへの金の移動ということ。というのもETFが保有する金地金は金現物取引のメッカでもあるロンドンに保管されているものが大半だが、そこで用いられているのが業者間取引で使われる400オンス(12.5キロ)のラージバーとなっている。売却されたラージバーは、まず有力精錬会社が複数あるスイスに空輸され、そこで100、200、500㌘、1キロの小型のスモールバーに精錬される。そしてドバイやシンガポール、香港へと空輸されていく。このルートが活況を呈していることがすなわち「欧米の売り」と「アジアなど新興国の買い」を表すが、地理的には「西から東」への金地金の移動を示してるわけだ。

話を中国に戻すと、輸入の急増ぶりに米紙ウォール・ストリート・ジャーナルなど欧米メディアの中にも中国人民銀行(中央銀行)の買いを指摘するものも出始めているほどだ。中国当局からの情報は一切なく、いずれも推測の域を出ない。

ただし、2009年3月以降、FRB(連邦準備制度理事会)が正式に量的緩和策採用に舵を切って以降、中国は国内の主要銀行を通じて金販売の奨励に乗り出していること。さらに2009年以降に外貨準備が3兆ドルを超えるまで急増していることを考えると中国人民銀行が水面下で動いていてもなんら不思議はないと言えよう。

2014年もアジアを中心とした旺盛な現物需要が続くのか否か。その動向が金価格の下値を支える鍵を握ることになりそうだ。

亀井 幸一郎(かめい こういちろう)プロフィール
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生活設計塾クルー取締役

マーケット・ストラテジィ・インスティチュート代表取締役
金融・貴金属アナリスト

中央大学法学部卒業。
山一証券に8年間勤務後、日本初のFP会社で投資顧問会社マネー・マネジメント・インスティチュート(MMI)入社。
1992年世界的な金の広報・調査機関ワールド ゴールド カウンシル(WGC/本部ロンドン)入社。
企画調査部長として経済調査、金市場のマーケット分析に従事。1998年独立し分析、評論活動に入る。
2002年マーケット・ストラテジィ・インスティチュート代表取締役。

「史観と俯瞰」をモットーに金融市場から商品市場、国際情勢まで幅広くウォッチしている。
日経CNBCテレビ「デリバティブ・ワールド」、ラジオNIKKEI「マーケット・トレンド」など数々のメディアでの
市場分析のほか、住友金属鉱山サイトでは金市場を軸にした金融経済分析と市況解説を、投資情報誌
ネット・マネーにて「亀井幸一郎の金市場の風」、日本証券新聞コラムなど定期寄稿中。

ブログ 『亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」』

 
掲載日:2013年12月16日

 
    

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