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地域金融の真価が問われる時代

先日、地域を地盤とした金融機関の役員の方を対象にした勉強会でお話をする機会がありました。私は、「今の日本は金融大国だが金融立国ではない。金融立国への道のりは、大手金融資本よりもむしろ信用金庫や地方銀行のような草の根の地域金融に関わる人の本気さによって拓かれる」と日頃感じていますので、大変僭越ながら、金融を通じてより善い社会を創るという志をもった同志だという気持ちで話をさせて頂きました。テーマは、「意志あるお金が未来を拓く」でした。

くしくも、私が代表を務める鎌倉投信が拠点を置く鎌倉の地は、鎌倉時代に生まれ、相互扶助の精神に基づく金融の形として今も残る、「無尽(むじん)」や「頼母子講(たのもしこう)」の原型が出来た土地柄です。幕末(天保の時代)になると、それは大原幽学の「先祖株組合(せんぞかぶくみあい)」や二宮尊徳の「報徳社」へと繋り、会員金融を土台にした信用金庫へと連綿と今の時代に受け継がれているのです。鎌倉投信が設定・運用、販売する投資信託「結い 2101」という名前に込めた「結い」の思想とも通ずる金融が、鎌倉時代、この場所から生まれていることに何かの縁を感じています。

銀行等の貸し出しが伸びないのは企業の資金需要がないからだという話を良く聞きます。確かに、企業活動を一部の限られた側面からのみ捉えるとするならば、そうした状況分析もできるかもしれません。しかし、鎌倉投信の周りには、優れた技術や豊かな発想で新たな事業を創造しようと懸命に努力しながらも、資金の借り入れができずに苦しんでいる企業家が実に多いことを鑑みれば、資金需要がないのではなく、新たなる企業、事業の創造の一端を担うべき金融機関が、20年以上にわたって未来の資金需要を掘り起こす努力を怠ってきた結果だ、と思えてならないのです。

その一方で、独自の戦略で地元企業と共に、新たなる価値創造に懸命に取り組んでいる地域金融機関も少なくありません。その一所懸命な姿を見ると、地元企業、地元経済の発展なくしてその地域に根付く地域金融機関の未来はない、という危機感を他人事としない主体性を感じます。

先日、ある地方金融機関にお伺いした時、応接室に飾られていた経営理念に心が釘付けになりました。

「愛本位主義」
まごころをもって人と接するところに愛は生まれ
愛あるところに人の営みが息吹く。
その愛の広がるところにこそ人はつどい
うるおいのある地域社会がかたちづくられる。
私たちは、このような「愛のはたらき」に着目し
普遍的な価値を人間愛のなかに求めます。

非常に深みのある経営理念だと感じました。金融の本来の役割は、信用の創造に他なりませんが、その源は、人と人との「信頼」です。「経済や社会において、人との信頼創造の連鎖的発展を築くことが金融の役割であり、「信」こそ真の貨幣なのだ。その根本には人を想う「愛」がなくてはならない」そう解釈しました。

また、江戸時代後期の農政家・思想家で600以上の困窮する藩の財政や地域経済を見事に再建した二宮尊徳の思想が今なお色濃く残る、日本で最も歴史のある信用金庫では、「道徳を根とし」「仁義を幹とし」「公利を花とし」「私利を実とす」を庫是とし、その考え方を日頃から口伝しているというお話を伺い、感銘を受けました。

こうした思想は、鎌倉投信の投資哲学、「投資はまごころであり 金融とはまごころの循環である」に通ずるものですが、この理念を見て金融に関わる者の精神の拠り所を改めて考えさせられました。

「荒地にも徳はある その徳を掘り起こせ」
これは、先の二宮尊徳の言葉です。「資金需要がない」というような言い訳を捨て去ることから、金融を通じて国を建つる「金融立国」への道は拓けるのだと思います。その役割の担い手は、地域に根差し、人や企業に寄り添う地域金融であり、今、地域金融の真価が問われています。

鎌田 恭幸(かまた やすゆき)プロフィール
過去コラム一覧


鎌倉投信株式会社 代表取締役 社長

1965年島根県生まれ。日系・外資系信託銀行を通じて25年にわたり資産運用業務に携わる。
2008年11月 鎌倉投信(株) 創業。2011年8月テレビ東京系列「ガイアの夜明け」で紹介される。

著書「日本で一番投資したい会社」(アチーブメント出版)
共著「21世紀をつくる人を幸せにする会社」(ディスカヴァー21)

掲載日:2013年12月27日

 
    

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