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アベノミクス相場の1年

アベノミクス上昇相場が始まって約1年が経過しました。この原稿を執筆している11月25日午後の時点で、日経平均は1万5,600円ほど、1年前に比べて6割を超える大幅上昇となっています。

日経平均以外の株価指数も軒並み大幅上昇を示しており、このまま行けば今年の世界株式市場においてわが国の株価上昇は際立って大きかった、アベノミクスの成果で、となりそうです。

株式を市場に上場して多くの株主に資本を支えてもらっている有力企業にとって、その経営トップの究極の経営目標は「株価の上昇を達成すること」である、と、市場原理主義的な言い方をするとすれば、この1年、日本の多くの企業経営者は「良い仕事をした」ことになりますし、経営者たちに「そうさせた」安倍政権は素晴らしい、と評価されて良いように思います。
実際、手持ちの株式の株価下落、評価損に悩まされて来た投資家(特に個人投資家)にとってアベノミクス上昇相場は本当にありがたかったでしょうね。

株価の上昇が素晴らしいなどと単純には言えない、といった主張をする「アンチ市場経済主義者」は置くとして、まずはアベノミクスは成功裏に推移している、と評価するとしましょう。その観点からしますと、アベノミクス成功の本質は、1980年代に作ってしまった「資産バブル」の後遺症として日本経済を20年以上不活発にして来た慢性の病をひょっとするとアベノミクスはうまく治すかもしれない、という「市場の期待」を呼び起こしたことにあると私は思っています。そして、現に株価が上がっているのだから、それはうまく行っているらしい、ということです。(少なくとも、バブルがもたらした歪みを「デフレ」で解決しようとしていた頃よりはうまく行っている、と。)

ここまでアベノミクスはうまく行ったとして、さてここから向こう1年くらいを見通してどうか?と考えてみます。株価の上昇が持続することが「うまく行ったかどうか?」の判断基準であるとしますと、ここから株価が順調に上昇するか?という問いと同じことになります。で、株価はどうなりそうなのか?

現時点の株価を投資尺度から見てみますと、概ね、
予想PERは16.5倍ほど
実績PBRは1.4倍ほど、
という数値です。(東証一部平均の数値)

この予想PERと実績PBRから計算しますと、ROE(自己資本利益率)は、8.5%ほどとなります。(ROE=PBR÷PER=1.4÷16.5=0.0848)

振り返りますと、このROEの数値はリーマンショック以降下がりに下がっていました。株価は下がたのも当然だな、ということとともに、やはりROEが回復(向上)すれば株価はちゃんと上がるのだな、と改めて思いますね。
ということは、今後株価がさらに順調に上昇して行くためには、「おそらく」ROEのいっそうの向上が必要に違いない、との発想が思い浮かびます。

ソフトバンク株を見てみますと、今年株価は順調に上昇し、株価は今ではPBR5倍にも達しています。(ほとんどバブル状態ですね、おそらく。)そこまでの株価上昇の原動力は?と見てみますと、同社のROEは今年度約30%にも達する予想であることが分かります。「これだったか株価の上昇を支えたのは」ということで納得のいく話です。
PBR5倍もの株価を実現しているソフトバンク(の経営トップである孫氏の経営)は素晴らしい、と言えるのですが、一方で、日本株市場には今もPBRが0.5倍くらいにしか評価してもらえていない株がゴマンとあります。そうした株の発行会社のROEを見ますと、利益を上げているとしても、ROE2%とか3%といった低水準です。

仮に、ROE2%に対応するPBRを0.5倍とし、ROE30%に対応するPBRを5倍としますと、(計算上)ROE1%の上昇でもたらされるPBRの増加は0.16倍であると計算されます。((5-0.5)÷(30%-2%)=0.16)

例えば、来年の初夏辺りに、日経平均が2万円に達すると予想しているとしますと、上記のような見方をすれば、一株当たり純資産を一定と仮定して、その時点で市場平均PBRが2倍弱くらいに上昇する、と予想していることになるわけですが、そのことは、ROE(の予想)が4%くらい上昇して、今の8.5%から12%以上になる、と市場が考えて株価に織り込むようになるだろう、と予想していることになる、と言えなくもありませんよね。

株価の上昇は企業のファンダメンタルズとは無関係に起きることもありますし、株価の変動幅はそうとうに大きなものですから、単純に平均的なPBR、やPERで論じることには無理もあるのですが、市場というものは案外「論理的に」動くものでもあります。

日本企業のROEが「回復」の段階から「向上」のフェーズに入っていけるかどうか?今は平均8%強、これがこれから10%になり、やがては(欧米、他のアジア諸国なみの)15%レベルになって「行ける」と信じられるのかどうか?(私は個人的には、会社によっては部分的に信じることが出来るに違いない、という感覚でいます。)

これから半年、1年の大きな注目ポイントになると思います。景気回復⇒売上増加⇒収益改善⇒ROE向上、などと単純には行くわけでもない性質のものですから、なかなか難しいところではありますね。

株主から見れば、ROEを上げる、というのはまさに経営者の経営能力の発揮、であるわけですが、多くの企業経営者がそれをやり遂げることができるかどうか?安倍政権がそれをやり遂げさせるための政策をきちんと実行できるかどうか?(具体的には例えば法人税率の引き下げ、など。)マスコミ的に言えば、アベノミクスの第3、第4の矢が有効に放たれて成果を出せるかどうか?ということになろうかと思いますが、大いに注目ですね。

松下 律(まつした りつ)プロフィール
過去コラム一覧

証券アナリスト、社団法人日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

1976年慶應義塾大学工学部大学院修士課程修了
大学院修了後国内証券会社入社、証券アナリスト。その後国内投信委託会社、外資系信託銀行、外資系投信投資顧問会社で長年にわたりファンドマネジャー。
2000年以降は独立証券アナリストとして活動。インターネットを通じて個人投資家向けの情報発信している。

掲載日:2013年12月3日

 
    

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