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40年来の夢、「貯蓄から投資へ」

「これからは『貯蓄から投資へ』の時代だ」、私が今を去ること40余年前に就職した証券会社の入社式での社長のあいさつでした。そして、いまも、同じフレーズが鳴り響いています。

来年からNISAがいよいよ始まり、そして、日本版(嫌だなあ、この言葉・・・)IRA案などが浮上している今日、その声は益々、高まっています。制度的な後押しはもちろん、少しは助けになるだろうとは思います。しかし、何か根本的な問題があるから、40年来の掛け声の割にちっとも現状が変わらないのではないかと思うのです。

結局、個人の資金が株式などのリスク資産に向かわないのは総体として見た日本企業に投資をするだけの魅力がないからと言えるのではないでしょうか。その根本は企業が株主に十分に報いていないこと、そして、特に近年は企業がリスクを取ることに非常に消極的になっていることに原因があるのではないかと思います。

株式を買うということは投資先企業のオーナーとなることです。上場企業1,700社の9月末の手元流動性は70兆円あると言われています。ということはこれらの企業に投資をしている株主は70兆円すべてではないにしろ、かなりの額のキャッシュ化できる現預金などを保有しているということです。投資家の立場から見れば、リスクを取るために投資をしても、投資先企業の大きな部分が現預金になっており、リスクを取っていないということになるのです。

例えば、ある株式投資信託が、リスクを取ることを躊躇し、資金の大部分を現預金にしていたらどうでしょうか。おそらくその投信を買う投資家はいないでしょう。その投信を買うよりも、その資金を自分の銀行口座に入れておいた方が良いからです。株式会社への投資でも同じようなことが言えます。

「貯蓄から投資へ」というこの聞き飽きたフレーズを聞くたびに違和感を覚えるのは、投資家がリスクを取らないから投資へ資金が回らないのだという声です。私はそうではなくて、投資対象に魅力が十分にないから投資に資金が回らないのだと思っています。その点にもっと、もっと鋭いメスを入れるべきではないでしょうか。特に米国の優良企業の株主政策などを見ていると彼我の差に驚きを禁じ得ません。

個人がリスク資産への投資に積極的でない理由としてファイナンシャル・リテラシーの欠如をいう人もいます。それはある程度、正しいともいえるのですが、それではファイナンシャル・リテラシーが高まればみんなが日本株を買い始めるかと言えばそれも疑問です。投資の基礎を理解するほど、日本株の投資収益性の低さが目につくようになるからです。

個人投資家は総体として見れば、そして、長期的には、比較的、合理的な投資行動をとっています。ですから、「上から目線」で制度的なエサをやれば個人は飛びつくと考えるのは間違いで、個人が投資したくなるような企業が増えることがこの問題の解決の前提なのだと思います。少しずつ景気も回復し、フォローの風が吹き始めている今日、企業は、リスクを取って収益率をあげること、そして、その収益をきちんと株主に配分する。そのことこそが、この40年来の夢を正夢にする一番の薬ではないかと思います。


岡本 和久(おかもと かずひさ)氏プロフィール
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ファイナンシャル・ヒーラー ®

CFA 協会認定証券アナリスト (Chartered Financial Analyst)
I-O ウェルス・アドバイザーズ株式会社 代表取締役社長

慶應義塾大学経済学部卒。大手証券会社のニューヨーク現地法人、情報部などで証券アナリスト・ストラテジスト業務に従事、1990年に、バークレイズ・グローバル・インベスターズを設立、2005年まで 15年間代表取締役社長として年金運用業務に携わる。
2005年5月、個人投資家向け投資セミナーを行うI-Oウェルス・アドバイザーズ株式会社を設立、代表取締役社長に就任。現在、同社でマンスリー・セミナー、ハッピー・マネー教室などを開催する傍ら、長期投資家仲間によるクラブ・インベストライフを主宰。

著書に『瞑想でつかむ投資の成功法』(総合法令)、『金遣いの王道』(林望氏との共著、日経プレミアシリーズ)、『資産アップトレーニング』(日本経済新聞出版社)、『100歳までの長期投資*コア・サテライト戦略のすすめ』(日本経済新聞出版社)、『長期投資道』(パンローリング)、『老荘に学ぶリラックス投資術』(パンローリング)、『親子で学ぶマネーレッスン』(創成社)など多数。

日本証券投資顧問業協会理事、同協会副会長兼自主規制委員会委員長、投資信託協会理事、日本CFA(Chartered Financial Analyst)協会会長。経済同友会会員。

掲載日:2013年12月6日

 
    

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