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テクノロジーの功罪

新年の世界経済はどうなるのか。

年初に決まってメディアが取り上げるテーマである。その答えを知るためには、企業経営に最も影響を与える外部要因を知ることが必須だ。大手外資系企業が長年行ってきたグローバル調査によれば、2010年まで1位はずっと社会経済要因・市場の変化だった。調査なんかやらなくても分かるしごく当たり前の答えである。ところが2012年にその順位が初めて変わった。1位にテクノロジーが登場したのである。これは驚くべきことだ。なぜならついに第3次産業革命の時代に突入したという証だからである。

18世紀後半の第1次産業革命では蒸気機関の発明がその起爆剤となった。19世紀半ばから20世紀にかけての第2次産業革命も科学・電気・石油・鉄鋼分野での技術革新によるものだった。つまりテクノロジーが世界の経済を大きく変貌させてきたのだ。現在の第3次産業革命の中心にあるのは紛れもなくコンピュータとインターネット技術である。

1950年代初めに商用コンピュータが登場してから現在までの間に情報処理スピードはざっと100億倍以上速くなり、価格は1,000万分の1以下に下落した。これを他のモノに例えれば、ジャンボジェット機を5万円で買えて20分で世界一周できるのと同じだというから凄い。そんな急激な進化・変化の渦巻きの中では未来予測は不可能に近い。なぜなら未来が過去や現在の延長線上になくなってしまっているからだ。

また、新しいテクノロジーは新しい問題を生み出す。大規模な情報漏洩やサイバー攻撃という新たな脅威は今や現実のものである。情報過多による判断ミスや業務の遅滞なども起きている。人間の脳記憶容量は3テラバイトと膨大だが、1日に世界で発信される情報量はその100万倍もあるからだ。月尾嘉男東大名誉教授によれば、世界でネット上を行き来する電子メールの総数は1日およそ2,000億通だがその9割は不要な迷惑メールだそうである。それを削除するために我々はなんと年間500億時間以上を浪費しているのだそうだ。じつにもったいない話だ。

理論物理学者アルバート・アインシュタインは「テクノロジーが人間を凌駕する日が来ることを私は恐れる。なぜなら世界は馬鹿な人間たちで溢れるようになるからだ」と喝破した。高速自動取引で株価が乱高下したり、スマホに夢中のあまり若者が駅のホームから転落したという話を聞くと、すでにその日が到来してしまったのではと心配になってしまう。

テクノロジーは世界経済を変える原動力だが万能ではない。そのことを胸に新しい時代に歩を進めていきたい。

蟹瀬 誠一(かにせ せいいち)プロフィール
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ジャーナリスト・キャスター、明治大学国際日本学教授

(株)アバージェンス取締役、(株)ケイ・アソシエイツ取締役副社長

掲載日:2014年1月9日

 
    

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