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企業の「自己革新」が求められる時代

第2次安倍内閣が発足して以降、所謂アベノミクスと呼ばれる経済政策に対する期待感から景気の先行きにいくぶん明るさが見え始めています。

しかし、経済対策を政府に過度に依存する社会的風潮の中からは、新しい企業や産業が次々と芽生えたり、今までにない価値の創造によって雇用が力強く創出されたりするような、活力を生み出すことは困難でしょう。経済政策を担う主役は企業家、つまり企業の自己革新力の総和が経済の活力そのものだからです。今の困難な時代を切り開く力は、企業の自己革新力、更にはその所属員一人一人の自己革新力に他ならないと感じるのです。

20年以上にわたって日本企業が直面してきた苦難の時代は、「面」と「時間軸」による変化、その変化の中で求められる「経営の質」の変化という3つの側面で捉えなくてはなりません。これらが同時並行的に複雑に絡み合って急激に変化する今の時代は、これまで経験したことのない領域ともいえるでしょう。

一つ目の「面」の変化は、よくいわれる「グローバル化」です。
東西冷戦の終焉とともに世界における競争のルールが一変し、かつて一部の先進国が競い合っていた市場に、新興国が参入し、多くのプレーヤーが入り乱れて競争を繰り広げるようになりました。とりわけ、様々な情報や技術が瞬時にして時間と空間を超えて飛び交う今日では、技術と知識のコモディティ化(標準化・一般化)が進みやすく、日本が得意とする技術的イノベーションを土台にした絶対的優位性が機能しにくくなりました。

二つ目の「時間軸」による変化は、日本における「モノ不足からモノ充足の時代」への変化です。
かつての日本企業は、戦後、海外を含めた旺盛な消費を背景に、高品質な商品やサービスを効率的かつ大量に生産する技術を極め、物質的、経済的な豊かさを追求することによって目覚ましい成長を遂げてきました。しかし、今や先進諸国では、モノやサービスが溢れ、量から質へ、均質性から多様性へ、物質的・経済的価値から感性価値・心の豊かさ、へと、社会のニーズは変化しています。とりわけ、日本は、少子化や高齢化、地域経済、食、第一次産業、環境、心の問題など、様々な社会的課題を抱える課題先進国です。経済的利益を優先した結果、様々な歪みが社会の中に生じているのです。
こうした時代において求められるのは、モノやサービスを増やす企業ではありません。本業を通じて社会的課題を解決し、社会的価値を創造する中に独自の事業性と利益性を有する企業だといえるでしょう。

そして、三つ目は、こうした二つの変化の中で求められる「経営の質」の変化です。
モノ不足からモノ充足の時代における企業経営は、利益を効率的に追及するために、商品やサービスをいかに低コストで短期間に生産し、顧客に提供するかという点に重点が置かれました。そうした中では、一部の優秀な人財が、事業の仕組みをつくり、その他大勢の社員はそれに忠実に従うといった管理型の組織が有効に機能しました。しかし、その副作用として、多くの社員(一部では経営者ですら)の主体性、当事者意識は希薄化し、価値創造に対する求心力を失いました。

極端にいうと、私たちは、2050年には日本の産業の半分が(進化して)なくなるほどの、大変革期の真っ只中にいます。企業経営を取り巻く環境の大きな変革期にある今日、企業は、いかに売り上げや利益を伸ばすかといった目標管理型の組織、そのための部分的改善や技術的イノベーションの追求だけでは新たな価値を創造することは期待できません。
「自らは誰のために何のために存在するか」という自社の存在目的に立ち返って、「理念」や「価値観」を企業経営の根底に据え、目の前で起きる組織課題や社会や顧客のニーズに対して社員の一人一人が自分自身の問題として真剣に取り組む主体性を創発し、個(組織の所属員一人ひとり)と全体(組織)とが動的に革新し続ける企業でなくては生き残ることが難しい時代といえるでしょう。
「誰のために、何のために存在するか」という理念や価値観を土台に据えた、企業の「自己革新力」の中に日本の未来は委ねられているのです。

鎌田 恭幸(かまた やすゆき)プロフィール
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鎌倉投信株式会社 代表取締役 社長

1965年島根県生まれ。日系・外資系信託銀行を通じて25年にわたり資産運用業務に携わる。
2008年11月 鎌倉投信(株) 創業。2011年8月テレビ東京系列「ガイアの夜明け」で紹介される。

著書「日本で一番投資したい会社」(アチーブメント出版)
共著「21世紀をつくる人を幸せにする会社」(ディスカヴァー21)

 

掲載日:2014年1月24日

 
    

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