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2014年の中国株式市況

習近平政権が誕生してから1年経とうとしているが、李克強首相の経済政策、俗にリコノミクスといわれるものは期待されているほど成果をあげていない。2013年の実質GDP伸び率は7.7%と14年来の低水準を記録し、上海株価総合指数は2014年1月23日現在2041ポイントと低迷のままである。

官製メディアの新華社のホームページの掲示板に次のような書き込みがあった。

「北京大学の同窓会で、『さすが証券マンのA君とB君は金持ちだね』とC君はD君に呟いた。すると、D君は『あれは証監会(証券業監督管理委員会)が証券マンによる株式投資を禁止しているからだよ』と答えた。」これは株式投資を行うものはみんな損しているといわんばかりである。

無論、これは単なるジョークだが、現実は、ジョークより厳しいかもしれない。

そもそも就任当初から李克強首相は無理に高成長を目指さず、7%台の成長を肯定的に受け入れると明言していた。政府が掲げる成長目標は7.5%であり、13年の経済成長はかろうじて目標を上回った。

李克強首相の理屈としては、かつて高成長を実現しなければならなかったのは毎年1,000万人の雇用を創出する必要があったからである。1ポイントの経済成長は80万人程度の雇用しか創れなかった。それに対して、近年、1ポイントの経済成長は130万人~150万人の雇用を創っている。したがって、7%の成長でも1,000万人の雇用を創ることができるというのである。

実際に、中国の人口はこれから減少すると予想され、中国政府は一人っ子政策の緩和を決めている。したがって、雇用の圧力で無理に高成長を目指さないといけないということはなくなった。雇用について問題があるとすれば、大学生の就職難が深刻化していることである。

一方、7%台の成長でまったく問題がないわけではない。2010年、中国国家審計署の調べによれば、地方債務は10兆7,000億元だったが、13年12月に発表した同年6月末現在の地方政府債務規模は10年時点に比べ67%増えた。この間、中国政府は地方債務の管理を強化すると繰り返して強調しているにもかかわらず、なぜ地方債務はさらに大きく増えたのだろうか。

まず、地方政府の債務調達金利は最低6.5%だった。債務を返済するために、最低、8-9%の収益性を実現する必要がある。しかし、実質GDPが7%台の成長では、公共事業で8-9%の収益性を実現することは実質的に不可能である。結果的に多くの地方政府は新規債務を借り入れて既存債務の返済に充てている。そして、地方政府があてにしていた土地使用権の払い下げの売り上げは政府による不動産ブームのコントロールで減少している。要するに、地方政府の財源が枯渇しているから、債務はいっそう膨らむようになったのである。

一般的に、マクロの経済成長率が高ければ、そのときの投資プロジェクトの収益性も上がると思われる。今の中国では、経済成長率は下降局面にあるため、公共事業を含めて投資プロジェクトの収益性も下がっている。

本来ならば、7%の経済成長率は決して低くないはずである。日米などの先進国のみならば、インドやブラジルなどの新興国経済も伸び悩んでいる。中国にとっての問題は経済成長率が下がっているのではなく、経済構造の歪みにあると思われる。政府主導のインフラ投資と輸出に依存する経済成長は持続不可能であり不安定なものになる。民間主導かつ内需依存の経済成長を実現するには、大胆な規制緩和を推進する必要がある。経済成長にとり株式市況はバロメーターであるが、年初から上海株価総合指数が軟調に推移していることから2014年の中国の景気は大きく回復しないと予想される。ここでは、思い切った構造転換が求められている。

柯 隆(か りゅう)プロフィール
過去コラム一覧

富士通総研経済研究所 主席研究員 

中国南京市生まれ
1988年1月来日
同年 愛知大学法経学部入学
1992年3月愛知大学法経学部卒業
1992年4月名古屋大学大学院経済学研究科入学
1994年3月名古屋大学大学院経済学研究科修士取得
同年 長銀総合研究所国際調査部研究員
1998年10月 富士通総研経済研究所主任研究員
2006年7月より現職

著書
中国が普通の大国になる日」(日本実業出版社、2012年) 
チャイナクライシスへの警鐘」(日本実業出版社、2010年)
中国の不良債権問題」(日本経済新聞出版社、2007年)
「日中『歴史の変わり目』を展望する」(勁草書房、2013年、共著)
"Global Linkages and Economic Rebalancing in East Asia", World Scientific Publishing Company, 2012 (共著)
「中国の統治能力」(慶応義塾大学出版会、2006年、共著 ) など

掲載日:2014年1月31日

 
    

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