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シナリオ逆転?

前回、年初のこのコラムで、「個人的な感覚ですが、大発会の下げが意外だった、と感じたひとは今年の株式相場では苦労するのではないか、と思いますね」と書きました。

年初来、マザーズ指数やジャスダック指数は割と順調な値上がりで来たのですが、日経平均は軟調、昨年末の水準から1,000円を超える下値に沈む展開を見せています。

この「年初来の日経平均の下落」を見て「意外」と感じたひとがいたとしますと、年初のコラムで指摘した「以上に」今年の相場では苦労するのではないか、とそんな感じがしています。逆に、この日経平均の下げを見て「得たり」と思えたひとは有望(の度合いが増した)でしょうね。

株式市場は典型的な「開かれた市場」です。参加に制限があるわけではなく、東証一部市場であれジャスダック市場であれマザーズ市場であれ、誰でも参加できます。しかし現実には、それぞれの市場(の参加者)を見ますと、とりわけ「相場のリーダーとなる参加者」を見ますと、けっこう大きな違いがあるように感じられます。

「日経平均」は大口の投機的資金(極論しますと海外の投機的資金)が相場のリーダーとなってしまっています。一方、マザーズやジャスダックにおける相場のリーダーは「日本の個人(の資金)」です。(言い切っていいかどうか、ちょっと心配ではありますが。)

現在の世界経済情勢・金融情勢・政治情勢、わが国の経済情勢・金融情勢・政策の方向(つまりは「アベノミクス」)+企業業績、からして、「さて、株価がどうなるか?」という問いに対するシナリオに基づいて、それぞれの市場参加者が「戦略・戦術」を遂行するわけですが、例えば「海外の投機資金」と個人では、その「シナリオ」が大きく違っているように見えます。(いつも違っている、というわけではないのでしょうが、今はそのように見えますね。)

端的に言いますと、海外の投機資金は、アベノミクス(黒田・アベノミクスと呼ぶ方が適切でしょうね)→円安・株高、というシナリオを(やや強引に)推進して来た、と言えるように思います。

一方、わが国の個人は、今年からNISAが始まる、ということを踏まえて、アベノミクス→株式市場への資金流入→株高、という「素直なシナリオ」で相場を見ているように思われます。

昨年末にかけての、「日経平均強調・マザーズ、ジャスダック軟調」、今年初めからの「日経平均軟調・マザーズ、ジャスダック強調」を、こうした「シナリオ」で見てみますと、昨年末までは、今年からのキャピタルゲイン税率引き上げを控えての個人の売りでマザーズ、ジャスダックは軟調、今年は年初からNISAの買いでマザーズ、ジャスダック強調。日経平均は、昨年末にかけては、海外の投機資金の「シナリオ買い」で強調、今年初からは、利食いと海外情勢の不透明化→海外勢の売りで軟調、とすっきり解釈できるように思います。

今年の今後の株式相場を展望しますと、新年度以降、消費税引き上げ→景気にマイナスの影響、ということが避けられないということで、どこかでおそらく「黒田異次元追加金融緩和」が行われそうな気配ですので、上記のシナリオで言いますと「海外の投機資金のシナリオ=円安・日経平均高」が有効という局面が又やって来るのではないかという気もしますが、相対的に言えば、上記の「個人のシナリオ」で進んで「個別銘柄の株価上昇の焦点を当てる」という戦術の方が分がいいのではないかと思いますね(つまり、「木を見て森を見ず」ということです)。もっとも、2月に入ってからの下落相場でジャスダック平均・マザーズ指数などは日経平均を大きく上回る下落を見せています。個人主導の堅調相場を続けて来たとはいえ、個人投資家の層もそんなに厚くはないなということは注意点のひとつなのかもしれません。

それから、直近の株価下落の「原因」がアルゼンチン・ペソの急落だった、というのが非常に示唆に富むという気が私はしています。新興国の経済・金融に対する懸念→先進国の株価下落、という因果関係はけっこう複雑なように思いますが、「資金の移動」という観点からすれば単純なようにも思います。そしてしばしば、そうした動きは「国際的な投機資金」によって先導されて進むものです。

今回のアルゼンチン・ペソの急落に投機的資金の売り崩し的動きがあったとしますと、おそらくそうした投機資金の「最終・最大の標的」は「中国」でしょう。今のところ中国(の通貨・株)が売り崩しに遭いそうな気配はありませんが、アルゼンチンは売り崩した、次に○○を売り崩した、となれば、その内に「大物売り崩しのタイミング到来」となるやも知れません。

今年か、来年か、再来年か、分かりませんが、中国ショックは(国際的な投機筋にとって)もっとも大きな市場のテーマになる、と考えるひとが増えても驚くことではないでしょう。わが国の通貨価値・株価にも大きな影響を与えること必定です。大変動が「期待」できるわけでして、大きな懸念であると同時に大きなチャンス到来でもあります。これから常に観察・フォローが必要なこととなるでしょうね。(それにしましても、日本がデフレを放置していたら、国際的投機資金の「(次の)最大の標的」は「日本国債の暴落=日本政府の財政破綻」だったでしょうから、それを「中国経済の混乱」に置き換えることに成功した、とすれば、それはアベノミクスの(実は大きな)成果のひとつになるのかもしれませんね。少なくとも時間稼ぎには成功した、と。)

松下 律(まつした りつ)プロフィール
過去コラム一覧

証券アナリスト、社団法人日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

1976年慶應義塾大学工学部大学院修士課程修了
大学院修了後国内証券会社入社、証券アナリスト。その後国内投信委託会社、外資系信託銀行、外資系投信投資顧問会社で長年にわたりファンドマネジャー。
2000年以降は独立証券アナリストとして活動。インターネットを通じて個人投資家向けの情報発信している。

掲載日:2014年2月7日

 
    

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