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児童虐待の予防策に力を注げ

児童養護施設を舞台にした民法番組「明日、ママがいない」が、放送中止を求められ議論を呼んでいる。
「赤ちゃんポスト」に預けられた女の子が職員から「ポスト」というあだ名で呼ばれ、体罰シーンが登場することで、「養護施設の子どもや職員への誤解偏見を与え、人権侵害だ」という理由である。私自身は一度も番組を見たことはないので、ここでの論評は避けたい。だが児童養護施設で暮らす児童は年々増加し、ドラマの制作側は、メディアが入所児童にもたらす影響を考慮すべきと考える。私の知る限り、児童養護施設の職員は生活支援のみならず、授業の補習や、「たった5分でも小学校の授業参観に行く」と、入所児童の親代わりとなって骨身を砕いて働いている。

このドラマの舞台となっている児童養護施設は「保護者のいない児童や、虐待されている児童など、養護を必要とする入所させ、自立のための援助を行うことを目的とする施設」である。現在589カ所に29,399人の児童が入所している。

全国の児童相談所に持ち込まれる児童虐待の相談件数は66,807件(平成24年度)と、児童虐待防止法施行前の平成11年度に比べ、6倍に増加し、過去最高となった。児童養護施設に入所している子どもの半数以上が、親からの虐待を受けている。虐待も殴る、蹴るといった身体的虐待のみならず、性的虐待やネグレクトと呼ばれる育児放棄など4つの定義があり、それらが絡み合っている場合もある。

子どもたちを虐待から守る「児童虐待防止法」は平成12年11月20日に施行された。法律ができ、児童虐待の認知度が高まったことや、虐待と思しき場合の通報義務が課せられたことで通報件数が増えた。そのため、児童相談所の職員は多くのケースを抱え、深刻なケースを見逃すなど対応が後手にまわることもある。

特に大阪府、東京都などで虐待が多いのは、人口移動の多い都市部では親子が孤立し、経済的困窮で親が余裕を失い、育児ストレスを抱えている可能性もある。

また、幼い子どもが虐待を受けて命を落とすケースが各地で後を絶たず、虐待で死亡した子供は99人(24年度)もいる。生まれた直後に死亡しているケースもあり、望まない妊娠や10代の妊娠による出産がこの背景にあるとされる。いわば、虐待の背景には、親の未成熟や複雑な家族関係、ストレスや孤立などさまざまな要因が絡み、社会のゆがみが子どもに影を落としている状況である。

国も「乳児家庭全戸訪問事業(こんにちは赤ちゃん事業)」や地域で子どもを見守るネットワークづくりのための「要保護児童対策地域協議会」などの事業を実施し、9割以上の自治体で行われているが、虐待の相談件数は増加の一途である。件数が増加の一途をたどる限り、虐待が起こってから児童を保護し、早期に対応していくかといった問題だけでは限界があり、虐待を防ぐ仕組みを「予防策」として応じ、深刻なケースに移行させないことが肝心である。

情報過多の時代、出産や育児に関する情報は溢れているものの、出産直後の女性は、外出の機会も減り、急激な環境変化や孤立感から情緒不安定になりやすいが、病気と違って福祉的な支援も受けにくい。助産師や看護師を活用したデイサービスを運営し、女性が母親として自信を持って子育てに取り組めるような活動をしているNPOも存在する。親子の送迎、ランチの提供、子どもの着替えの用意といった出産前後の母親のニーズに添った細やかな対応と同じ境遇である母親同士の交流をはかることでで、母親が前向きな気持ちで子育てに取り組めるような効果が上がっている。

米国では児童虐待予防のためのヘルシースタート(健康な出発)が州ごとに展開されている。オレゴン州では保育士や社会福祉士など児童虐待の研修を受けた専門家が組織され、出産直後に産院を訪問する「ようこそ赤ちゃん訪問」の実施とスクリーニング、また、「すべての家庭が家族支援を受ける権利がある」という情報周知、その後の家庭訪問でのアセスメント(虐待の可能性のふるい分け)が行われている。9割以上の家庭がこのプロセスを通過し、必要に応じてカウンセリングや子育て支援が継続される。

誰もが最初から完璧な親ではなく学習や周囲からの支援を通して親としての成長を遂げる。妊娠・出産の早期段階から継続的な支援を行うこと、全家庭への働きかけ、アセスメントと専門家の判断といった科学的なアプローチ方法を我が国も学ぶべきではないだろうか。

白石 真澄(しらいし ますみ)プロフィール
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関西大学教授

1987年 関西大学大学院修士課程 工学研究科 建築計画学専攻 修了
(株)西武百貨店、(株)ニッセイ基礎研究所 主任研究員を経て、2002年4月より東洋大学経済学部 社会経済システム学科教授
専門テーマは「バリアフリー」、「少子・高齢化と地域システム」


掲載日:2014年2月3日

 
    

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