株式・投資信託・ETF・退職・年金 投資に役立つ「ケイゾンマネー」

「新興国のジレンマと世界経済」

アルゼンチンのペソ暴落から始まって、新興国通貨の下落基調が高まって来ました。現在市場から自国通貨が売り込まれている国に共通なのは、経済成長が停滞している中、経常収支が赤字でそもそも通貨流出に向かう経済構造にあること、それ故にインフレ体質に苦しんでいる状況にあるということです。

その代表的な国としてブラジル・インド・南ア・トルコ・インドネシア5カ国が「フラジャイル5」(脆い5カ国)というありがたくない呼称で市場から呼ばれ始めています。これらの国が今回とった行動が、政策金利引き上げによる通貨防衛です。実体景気が苦境な中で金融引き締めを行うのですから、景気は間違いなく下押しされます。結局通貨はますます売られやすくなって、通貨安が更なるインフレ物価高を助長し、国民生活は苦しくなって経済活動はいっそう滞る、という完全な悪循環のジレンマに陥っています。

多くの市場参加者の頭に今よぎっているのは、1997年のアジア通貨危機の記憶ではないでしょうか。

当時の投資マネーはほとんどリスク不感症状態で、グローバル経済への転換を囃し立て、アジアの国々へと短期資金が怒涛の如く流入していました。当時のアジア主要国は軒並み自国通貨を米ドルレートと連動させるドルペッグという管理相場制度を敷いていて、通貨は極めて安定していたのです。そのため機関投資家はこぞってドルをアジア通貨にスワップして、ほとんど為替リスクを意識することなく、アジア各国の高金利に群がって利ざやを謳歌していたのです。かく言う小生も当時、ドルを調達してタイバーツやインドネシアルピア建ての短期社債を転がしながら、大きな金利差を心地良く享受する運用をやってました。

結局アジア諸国はどこも気が付けば官民挙げて先進国マネーからの借金漬け。積み上がった債務に対して不自然に安定していた各国通貨への過大評価が市場からつけ込まれたのです。各国政府は通貨管理を続けられず、市場でレンジを超えた通貨下落が始まりました。

各国は借金まみれに酔いどれて外貨準備の備えもなく、ひとたびそうしたうねりが起こり始めると、投機マネーは暴力的です。凄まじい勢いでアジア通貨は暴落して、慢心していた投資家は強烈な損失を被って、アジア各国の経済は急激にシュリンクして行ったのでした。

その後の塗炭の末に、今のアジア経済の繁栄がもたらされたわけですが、今回の通貨問題とこの当時とはセーフティネットの備えが格段に違います。アルゼンチンこそ外貨準備が底を尽きかけていますが、フラジャイル5はまだまだ外貨準備に余裕があるし、今や各国通貨は完全な変動相場制ですから、無理繰り通貨を買い支える必然性もなく、商品資源への輸出競争力があるブラジル・ロシアやインドネシアなどにとっては通貨安が経済再生への良薬になってもきます。他方内需依存の高いインドやトルコには通貨安が生活物価高騰による国民生活窮乏化に傾いてしまいます。結局この試練のリカバリー度合は、構造改革への取り組みの本気度によっても二極化しそうです。

もうひとつ、グローバリゼーション下におけるセーフティネットがG20体制で、否応なく先進国の金融緩和の継続が新興国に時間を与えて痛みを和らげ、米国の量的緩和縮小のペースにもこうした外的要因が加わって影響を与えて行くことになるでしょう。

2014年は米日独先進3カ国経済が、本格的景気回復軌道への道筋を強めて行く中で、世界経済の成長エンジンは先進国のそれへと転換する年になります。

そして未だ世界経済の半分を占める先進国経済の回復軌道は、新興国経済の高成長という不安定なエンジンに頼り切ってきたリーマンショック後からの地球経済全体の成長トレンドを、遥かに安定させる底力を持っているのです。

国際分散投資を旨とする長期投資家にとって、今回の新興国の混乱は絶好の仕込み機会。先進国経済が再び世界を牽引する、グローバリゼーション第二幕の始まりを悠然と進んで行ける環境です。

中野 晴啓(なかの はるひろ)プロフィール
過去コラム一覧

セゾン投信株式会社 代表取締役社長   http://www.saison-am.co.jp/

1963年東京生まれ。1987年明治大学商学部卒。同年、株式会社クレディセゾン入社。セゾングループの金融子会社にて債券ポートフォリオを中心に資金運用業務に従事した後、投資顧問事業を立ち上げ運用責任者としてグループ資金の運用のほか外国籍投資信託をはじめとした海外契約資産等の運用アドバイスを手がける。その後、(株)クレディセゾン インベストメント事業部長を経て2006年セゾン投信(株)を設立、2007年4月より現職。米バンガード・グループとの提携を実現させ、現在2本の長期投資型ファンドを設定、販売会社を介さず資産形成世代を中心に直接販売を行っている。また、全国各地で講演やセミナーを行い、社会を元気にするための活動を続けている。

 公益財団法人 セゾン文化財団理事
NPO法人 元気な日本をつくる会理事

著書
『運用のプロが教える草食系投資』(共著)日本経済新聞出版社
『積立王子の毎月5000円からはじめる投資入門』中経出版
『投資信託は、この8本から選びなさい。』ダイヤモンド社
『定年までにいくらあれば生きていけるか』アスキー新書
『20代のうちにこそ始めたいお金のこと』すばる舎
『30歳からはじめるお金の育て方入門』(共著)同文館出版
『年収500万円からはじめる投資信託入門』ビジネス社
『投資信託は、この9本から選びなさい。』ダイヤモンド社  等

ブログ「積立王子のブログ」 http://ameblo.jp/saisonam/
HP「社長対談"今"を変えるチカラ」 http://www.saison-am.co.jp/taidan/index.html
Facebookアカウント https://www.facebook.com/haruhiro.nakano.3
twitterアカウント@halu04

掲載日:2014年2月14日

 
    

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