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米国の春を待ちわびるマーケット

楽観的な見通しが主流だった2014年の経済・市場見通しだったが、年明けからグローバルマーケットは不安定な展開が続いている。表面的には、米国の金融政策の方向転換(QE3縮小:量的緩和政策第三弾による国債等買取規模の縮小)による経済への影響や新興国市場への資金の流れの変調が取りざたされている。

確かに、QE3縮小が無ければ市場の動きはここまで不安定にならなかったかもしれない。しかし、アルゼンチンショックはあくまでもアルゼンチンの経済運営に問題がある"個別要因"の側面が大きい。中国を含めた新興国経済に対する不安も、本来輸出主導型の経済であるため、主要輸出相手先である先進国経済、なかでも米国経済の自律回復を待ちわびている状況であり、冷静に考えればQE3の縮小に米国経済が耐えられるようであれば、問題はないはずだ。とどのつまり、年初来の市場の不安定さは、米国経済がQE3縮小に耐えられないのではないかという不安を映したものである。

米国の経済指標を見ると、昨年11月までと、それ以降とでは流れが明らかに変わっている。11月までの経済指標の多くは、米国経済がいよいよ自律回復軌道に乗ることを示唆していた。住宅バブル崩壊以降課題となっていた家計のバランスシート(家計保有の資産に対する負債の割合)は、バブル発生前の水準まで改善し、財布の紐の緩み具合を示す消費者マインドも消費加速を促す水準にまで高まった。企業サイドでは、生産活動に半年先行するISM新規受注判断DIが継続的に上昇し、生産加速が迫っていることを示唆していた。ところが、12月以降にはこれら指標が一気に鈍化し始めている。

ただし、その変化を昨年12月18日に決定したQE3縮小に求めるのは誤りだろう。金融政策の転換が実体経済に影響を及ぼすには早くても半年かかる。では何が変わったのかといえば、北米の天候だ。北米地域では、昨年12月から今年2月にかけて記録的な寒波・大雪に見舞われ、これが消費者や企業の経済活動に甚大な影響を及ぼしている。消費者は外出を控え、自動車などの大型消費や娯楽消費を抑制した。暖房などに余計な支出が回った分、実質的に購買力も落ちた。消費の抑制は企業業績に直接的に影響を及ぼすが、そのほかにも建設業では建設工事が遅れ、製造業でも工場の稼働が困難となり、生産活動の足を引っ張った。これらがレイオフなどという形で雇用にも影響を及ぼしている。

一般に、天候による経済への影響は一時的なものにとどまる。超大型の台風やハリケーンなどは地域経済に甚大な影響を及ぼすが、局地的でもある。しかし、今回の北米地域での寒波の影響は3カ月も続いて"一時的"という単語は適切ではないほどの期間にわたっているうえ、範囲も広い。

これにより懸念されるのが、企業や消費者の景況感の悪化だ。企業が受注をキャンセルすれば、期待されていた生産活動の加速は幻となり、長期にわたる悪天候は人々の財布の紐を引き締めさせ消費が抑制される。あるいは、市場環境の悪化や住宅需給の悪化が住宅価格の下落に繋がり、改善していた家計のバランスシートを悪化させる。そして、米国経済が予想外の再減速となれば、新興国の景気回復も遅れ、資金流出圧力を抑制するために利上げで応じた国では景気悪化が懸念されるほか、シャドーバンキング問題が懸念される中国でも、理財商品を購入して最終リスクテイカーとなった投資家への支払い環境が更に悪化する恐れが高まる。

2月中に発表された経済指標からは、米国経済が急激に冷え込んでしまう兆候までは確認されていない。しかし、厳しい冬を迎えてから3カ月目となる2月分の経済指標の多くはこれから発表される。3月は気温も上昇すると見込まれ、2月中に米経済が失速を回避できていれば、今後は劇的な回復も期待される。この3月は、春の暖かさで米国経済の自律回復の芽が出るかどうかを確認する、極めて重要な1カ月となろう。

嶌峰 義清(しまみね よしきよ)プロフィール
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株式会社第一生命経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト

1990年青山学院大学経済学部卒。同年岡三証券入社。岡三経済研究所、日本総合研究所を経て、1998年第一生命経済研究所入社。2011年より現職。日本経済、米国経済など各国経済担当を経て、現在は金融市場全般を担当。


掲載日:2014年2月28日

 
    

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