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安倍内閣の賞味期限を考える

アベノミクス相場がいつまで続くのかを考える上で、安倍内閣そのものの継続期間をどう想定するのか、という問題がある。

安倍内閣は、近年の内閣としては異例の高支持率を継続している。メディアは、頻繁に支持率調査を行うが、調査主体やタイミングによって差はあるものの、50%台後半から60%前後が「支持」と答え、「不支持」はその半分に満たない結果が多い。次の国政選挙は、衆参同日と考えると、2年先でもあり、安倍政権は当面安泰であるように見える。
しかし、幾つか心配な要素が出てきた。

一つは、4月に予定されている消費税増税による景気後退の可能性だ。増税の影響については、「やってみなければ、分からない」というのが実際のところだ。増税がどのくらい需要を冷やすのか、特に、駆け込み需要の反動減がどのくらいの規模と期間で表れるのか。加えて、経済の落ち込みに対して、どのような政策が打ち出されるかにもよる。

別の心配は、安倍首相及び首相周辺の政治的「右傾化」の影響だ。昨年末に行われた、安倍首相の靖国神社参拝は、中国・韓国からのみならず、米国からも批判された。また、国家機密法の制定、さらには、解釈変更によって現行憲法で集団的自衛権の行使を認める方向を打ち出すなど、事の当否は脇に置くとしても(注:本稿では靖国神社参拝その他を「いい」とも「悪い」とも論じない)、政治的に「ずいぶんペースを上げてきた」感じがある。世論の反発に加えて、連立与党の一角をなす公明党がどこまでついてくるか、という問題もあり、政権に波乱を起こしかねないリスク要因の一つだ。
尚、米国の経済的利益を考えると、米国は自身が中国と対立する立場に立つことを望んでいないように見える。安倍氏の中国・韓国に対する強硬姿勢は米国の支持を得ているようには見えない。

「右傾化」にも関連するのだが、衛藤晟一首相補佐官が米政府を批判した動画を投稿した問題や、籾井勝人NHK会長や森喜朗東京五輪組織委員会委員長の一連の失言問題など、安倍首相に近い人々、さらには安倍首相本人を含めた「失言」の可能性も、気になる。
加えて、この夏にも行おうとしている原発の再稼働で、支持率を大きく落とす可能性がある。先般の都知事選では、原発再稼働に反対する勢力が一本化することが出来ず、自民党が支持する舛添要一氏が勝ったが、今後、再稼働を具体化させる場面で反原発勢力が勢いを増す可能性はある。都知事候補としての細川氏は大きな支持を得られなかったが、細川氏・小泉氏の脱原発演説は、聴衆に歓迎されていた。
もちろん政治の世界は「一寸先は闇」なのだが、投資を考える上では、先ずは、標準となるメインシナリオを想定しなければならない。

筆者は以下のように考える。先ず、実質的に政権を支え、且つ日本社会を動かしている最も強力な主体は、官僚集団の集合的な意思だ。彼らが安倍政権を支えようとするなら、安倍政権が、各種のリスクをクリアできる可能性が大きいように思う。
官僚全般にとっての目下最大の優先事項は「消費税率10%への引き上げの達成」だろう。これを今年の年末くらいまでに内閣に決めさせたいと思っているはずで、政権が変わったり、国政選挙が近づいたりすると、この点の不確実性が増大しかねない。
消費税率8%への引き上げ後、経済が失速しそうになった場合、金融緩和の追加、税制出動、さらには公的年金を使った株価対策など、内容に問題のあるものも含めて、あらゆる経済対策を投入するだろう。

右傾化や失言などの問題まで官僚がマネジメント出来るかという問題はあるが、ミスの出にくい形を作ったり、メディアを牽制したりすることは可能だ。

安倍政権とアベノミクス、ひいては日本の景気や株価について、筆者は、「消費税率8%の後は意外に頑張るのではないか。しかし、10%が決まった後は、安倍内閣の賞味期限が切れ、経済と相場もリスクが拡大するのではないか」と考えている。

もちろん、これは一つの仮説的参考意見に過ぎない。

山崎 元(やまさき はじめ)プロフィール
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楽天証券経済研究所客員研究員

獨協大学 経済学部特任教授
株式会社マイベンチマーク代表取締役

1981年東京大学卒業後、三菱商事、野村投信を筆頭に、住友生命、住友信託、メリルリンチ証券、パリバ証券、山一証券、明治生命、UFJ総研など、計12回の転職を経て現職に至る。

ファンドマネジャー、コンサルタント等の経験を踏まえ、資産運用分野が専門。
雑誌やウェブサイトで多数連載を執筆し、テレビのコメンテーターとしても活躍。

掲載日:2014年3月3日

 
    

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